【第4話】カルブリヌス×アイギス
数百年振りに再会したカルブリヌスとアイギス。
夜更けに語られる二人の関係。そして、人類にもたらされた未知の力。
なぜ魔法が急速に普及されたのでしょうか?そして、その影に潜む男とは?
『ウルクの七賢人』の集結を示唆する第4話、どうぞお楽しみください!
「二人とも、よく眠っているみたいね」
「ええ、カル姉さん。それより、今回の件、どうやら今までのとは規模が違うみたいね。カル姉さんにも母様からのアクセスがあったんでしょ?」
「あったわ。だからこそ、私はここにいる。私はもう二度と、人間と運命を共にするつもりはなかったのだけど…ね。でも、ついに母様が危惧していたことが現実になろうとしているようね。全てが、明るみに出る時が近づいているんだわ。そして人間達は、抗おうとしている…」
「そうなの。私の保有者キャスの父親は、人工魔法金属と呼ばれている『ミスリル』の開発に成功したわ。その開発の影にいる人物は、カル姉さん、あなたもよく知っている男よ。そもそも魔法をこの世界に普及させたのも、彼よ。思い当たる人物がいるでしょ」
「まさか!彼が生きていたのは数百年も前の話なのよ。そんなはずは…。いえ…、そうね。よく考えたら、むしろその方が合点がいくわ。あの男からは、人間の匂いがしなかったもの」
「ええ。恐らく人間じゃないでしょうね。でも、今の段階では人間の味方のようだし、しばらくは様子を見てみましょう。実際、彼の予言のおかげで、『ミスリル』と魔法はすでに実用レベルに達しているわ。人間達だけでも、ある程度は戦えるはずよ」
「そうみたいね。道中で見たあの『ヘルメス』っていう座標ジャンプシステム…。あれ、『ルミナス』でしょ?驚いたわ」
「ええ。しかも、専用の端末機器で、魔法を使えない人間も簡単にジャンプできちゃうんだから、便利なものよね。どう頑張ったって、普通の人間に『ルミナス』は無理だもの。それでも、ある程度意志の強い人間なら『イグニス』や『アクア』にはすぐアクセスできるみたい。魔法がこれだけ短期間で普及するなんて、思ってもみなかったわ。カル姉さん、よく聞いて。あの男は、『レメゲトン』を世界に公表したの」
「『レメゲトン』ですって?あんなものを明るみに出したら…。下手をすると、それで人類が滅びかねないじゃない!」
「確かにそう。でも今回は、完全にシステム化されているみたい。それで世界中に普及したのよ。」
「なるほどね…。私がちょっと眠っている間に、そんなことになっていたのね。真面目に情報収集していたなんて、さすがアイギスだわ。」
「私はいろいろあって、ずっと起きていたから…。でも、油断は禁物よ、カル姉さん。あの男が『レメゲトン』まで持ち出して、人間達に肩入れする理由もよくわからないし…」
「全くだわ。どうも釈然をしないことが多すぎる。タイミングも良すぎるわ。でも、ラバンに言った手前、私がそのことを深く詮索するわけにはいかないわね」
「そんなこと言ったの?相変わらずね、カル姉さん。でも確かに、私達には私達の使命がある。それに、人間の未来は、やっぱり人間が切り開かなくちゃ、ね」
「そうね…。ところでアイギス。そのカル姉さんっての、そろそろやめてくれない?ラバンから同じように呼ばれた時、どきっとしたわ」
「私は良いじゃない、カル姉さん。姉妹なんだし」
「姉妹って言っても私達は…」
「良いの。人間達は同じ母様から生まれたら、兄弟とか姉妹とか呼ぶのよ。だったら私達も一緒。そうでしょ、姉さん。私は人間達の家族っていう集まりが好き。キャスの家族を見ていて、本当に良いなって思ったの。だから私にもそう呼ばせて」
「わかったわ、アイギス。あなたのそういうところ、母様によく似てるわ。家族…か。残りのやつらも、そうなのよね、一応…」
「もちろん、そうよ。でも兄さん達、おかしなことしてなきゃいいけど」
「それよ、それが不安なのよ。母様からのアクセスがなかったら、永遠に再会することなんてなかったわ。『ウルクの七賢人』集結…か。でもこれが、運命というやつかしらね」
「私にはわからないわ、姉さん。だけど私は、これが運命であろうとなかろうと、受け入れるわ。キャスを守り、導くことが私の役目。カル姉さんがラバンを導いていくのを決めたようにね」
「アイギス、あなた本当に母様に似てきたわ。でもその通りよ。それこそが、私達の存在証明なのだから…」
「ええ、カル姉さん。久しぶりにゆっくり話ができて本当に良かった。いつの間にか…夜も明けてきたみたい。私達の故郷は、やっぱりこの時間が一番美しいわね。明日からよろしくね!キャスがいるからにぎやかになるわよ」
「そのようね。まあ、雑用なら全部任せなさい!ラバンに」
こうして、数百年振りに再会したカルブリヌスとアイギスの夜は明けていったのだった。
(シンクロニシティは歌う…彼らの出逢いと彼女らの再会を)
Beautiful power in My space
雨上がりのにおいを感じて
表に出よう
晴れた空を見上げ、思い切り
深呼吸しよう
今ならどんなことさえも
受け入れられそうな
大きな心を手に入れた気がして
そう、雨が上がったときの気分さ
晴れ上がった 空のよう
あなたには僕のことを 強くさせる
チカラがあるから、決して離さないで
今ここには、とても大きな あなたという
チカラがあるから、決して離さないよ
数多のにおいと感覚を
沁みこませていた
荒れた夜も、見合っていた夜明けも
真剣そのもので
今になってそのことを深く
想うようになって
その存在の影も
今は光になっている気がして
そう、夜が明けたときの気分さ
太陽が昇る 空のよう