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【第3話】古き仲間と新しき仲間

出現し始めたモンスターを倒しながら、戦闘経験を積むラバン。次のステップに進むために訪れた湖で出逢った少女は何者なのでしょうか?

そして、彼女の身に着けている胸当ての秘密とは…?

出逢いと再会の訪れた第3話、どうぞお楽しみください!


「さてと…」

 カルブリヌスが第一声をあげるとほぼ同時に、ラバンも口を開いた。

「『ウルクの七賢人』…ですね!なんとなく、全員集まった方が良いんじゃないかと思いましたが」

「…そうね。本当は会いたくないやつもいるんだけど、そんなこと言ってる状況でもないし…ね。そもそも七人全員が集まることなんて、今まで例の無いことなのよ。ちゃんと集まるかどうか、怪しいけどね」

 彼女は渋々、といった感じで話を続けた。

「とりあえず、一人一人の説明は再会を果たしてから、紹介を兼ねてするわね。面倒だから」

「わ、わかりました」

 まるで自分の家族を紹介するのを嫌がる思春期の少年のように、カルブリヌスは『ウルクの七賢人』の話題を避けたがる様子であった。

 

 この世界での移動手段は、通称『ヘルメス』と呼ばれる座標ジャンプシステムが今は主流になっている。しかし、ラバン達の…というよりラバンの戦闘経験を積むために、彼らは徒歩で移動していた。道中は相変わらずゴブリンと呼ばれる最弱のモンスターだけが出現していたのだが、すでにラバンはカルブリヌスの指示無しで撃退できるようになっていた。

「そろそろ次のステップかしらね。ちょうど湖が見えてきたわ。『水門』が開いているか、チェックするわよ、ラバン」

「わかりました、指示をよろしくお願いします」

 ラバン達が湖に近づくやいなや、水面がざわめき始め、人間の身長ぐらいの水柱ができたかと思うと、その水柱がラバンに襲いかかってきた。

「気をつけてラバン!捕まると窒息させられるわよ。あれはウンディーネ。素体は水だから、闇雲に斬ってもだめよ。中央のあたりに玉みたいなのが見える?あれを斬って」

 目を凝らして見ると、水柱の中にうっすらと、確かに玉のようなものが見えた。ラバンはその玉を水柱ごと真っ二つにした。すると、玉は水風船が割れるように弾け、辺りが水浸しになった。

「どうやら『水門』も開き始めているようね。今までのゴブリン達もそうだったんだけど、モンスターには『コア』っていう、人間でいう心臓みたいなものがあるの。大体はその『コア』を包み込むように外殻が被っているから、モンスターの中央を叩くのが戦いのセオリーね」

「わかりました…けど、それ先に教えてくださいよ…」

 最初にモンスターに遭遇した時点で、そのことを教えてもらえなかったのが、ラバンは少々不満気のようであった。

「こういう説明は、実際に『コア』の確認できるウンディーネと戦った時の方がわかりやすいのよ。それに、ゴブリンを何体か私の指示で倒してて、大体想像はできてたでしょ?実戦で覚えていくのが一番身につくのよ、ラバン」

「わ、わかりました」

 なんとなく言いくるめられたような気はしたが、ラバンはいつもの返事で返した。と、そんなやりとりをしていた最中だった。

「あなたは何者?!ちょっと!聞いてるの?!」

 突然背後から、両手に刀を手にした、まだ年端も行かない少女が大声で叫んできた。ラバンは突然現れた少女にびっくりした、というよりも、その声の大きさに驚いて後ずさりした。

「さっきからあたしが話しかけてたのに、無視しないでよね!あ!あなたのその剣、ちょっと見せて!」

 そう言うか言わないか、その少女はカルブリヌスをじろじろと観察し始めた。

「あなたのその剣、『ミスリル製』じゃないわね。なのに、なんでウンディーネを倒せたの?あたしは、あなたがウンディーネを倒すところもちゃんと見たんだから!モンスターを倒せるのは『ミスリル製』の武器か魔法だけだって、お父様が言ってたのに…」

「私達『ウルクの七賢人』もモンスターに対抗できる武器なのよ、キャス」

 突然、その少女の身に付けていた美しく輝く胸当てが、少女に向かって優しく語りかけた。

「え?あたしの胸当てが…、しゃべった??」

「アイギス、久しぶりね。数百年振りかしら。それよりも、今まで保有者と会話していなかったの?あなたの保有者、驚いてるじゃない」

 ぽかんとしている少女を尻目に、カルブリヌスは、追い討ちををかけるように少女の胸当て、アイギスに話しかけた。

「え?え?そっちの剣もしゃべった!ちょっと、どうなってるのよ!そこのあなた、ちゃんと説明しなさいよ!」

 そして、少女の困惑の矛先は、人間であるラバンに向けられた。

「僕…ですか?えっと、どこからどう説明していいのやら…。カル姉さん、お願いします」

 どう説明していいのか困ったラバンは、その役をカルブリヌスに丸投げした。

「しょうがないわね」

 あらかじめ、そう来るだろうと予測していた彼女は、簡潔に現状を話し、これからの旅にぜひとも『ウルクの七賢人』の一人、アイギスの協力が必要なことも伝えた。突然しゃべりだした自分の胸当てと、言葉を話す、見たこともない美しい剣。その異常な光景にあまり納得はしていないような様子の少女であったが、気をとり直して、元気よく自己紹介を始めた。

「よくわからないけど、わかったわ。あたしの名前はキャッスル・エルバード。呼ぶ時はキャスでいいわ。さっきあたしの胸当てもそう呼んでたし。あたしはね、お父様に頼まれて今からあるものを探しに出かけるところだったの。一人で行けって言われた時はどうしようかと思ったけど…、ちょうど良かった!一緒に探してね!ついでにラバン達の仕事も手伝ってあげるから。うん!そうしましょ。それと、アイギスっていうのね、あたしの胸当て。お父様に渡された時、この胸当てが絶対あたしを守ってくれるって言ってたけど、こういうことだったのね!しゃべれるならしゃべれるって言いなさいよ、まったく…」

「ごめんね、キャス。言おうと思ってた時にカルブリヌスの歌声が聞こえてきたものだから…つい忘れていたわ。あなたを守ることが私の役目。これからよろしくね、キャス」

 まくし立てるキャッスルに対し、アイギスは申し訳なさそうに、しかし、しっとりと強く、自らの責務を宣言した。

「なんとか話はまとまったみたいね。ラバン、レディが増えたのだから、これまで以上にしっかりしなさい。わかってるわね?」

 カルブリヌスにそう言われ、ラバンははっとした。恐らく、自分の立場は最下位決定なのだと。そして、女性同士の会話にとり残され、口数がさらに減っていくラバンであった。




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