【第2話】七つの天門
モンスター出現の原因となっている『七つの天門』。その特性を歌い上げるカルブリヌス。
ラバン達がこれからすべきこととは、何なのでしょうか?
彼らの旅の目的が定まる第2話、どうぞお楽しみください!
彼女から聞かされた話は、にわかには信じがたい話であった。しかし、ラバンはそれを一片も疑うことなく聞き乾し、さらには次の疑問を投げかけた。
「すみません、これから起ころうとしていることはだいたい理解したんですが…、そのことよりも、今まで多くの人が信仰してきたものっていったいなんだったのかな…と、ふと思ったんです。もしこのことをみんなが知ってしまったら、裏切りだと感じるのでしょうか。それとも、それは人間の勝手な思い込みだった…、ということでしょうか」
「十日間何を考えながら歩いているのかと思ったら…。そのことに対する真相は、『ウルクの七賢人』と呼ばれた私にもわからないわ。私達に課せられた使命は人類の保護なの。それ以上のことは興味が無いし、追求する時間もないわ。いいこと、ラバン。何度も言うようだけど、時間が無いの。もうすでに『七つの天門』は開き始めているのよ。あなたもその目で見たでしょ?あのモンスターを」
ここまでの道中、すでにラバン達は数体のモンスターに遭遇していた。突然襲ってきたのだが、カルブリヌスの的確な指示と凄まじい切れ味とで、一蹴したのであったが。
「僕は今まで剣なんて扱ったことがなかったんですが、カル姉さんの言われた通りに振るっただけで、あんな見たことのない生き物を簡単に倒せるとは思いませんでした」
「カル姉さん…?ま、まあいいわ…。あれはゴブリン。『七つの天門』の一つ、『獣門』から出現したモンスターよ。やつらの素体は土。しかもまだ門が開ききっていないうちに出てきた、最弱のモンスターね。ついでだわ、『七つの天門』の歌を聞かせてあげる」
そう言うと、カルブリヌスは静かに、その身体を震わせて歌い始めた。
開く開くよ 七つの天門
七の星より力流れて
命育む水からは 命を流す門開く
形成す地中の石からは 衣を砕く門開く
歩み伝える雷は 報を遮る門開く
土が変わりし獣たち 肉を貪る門開く
つむじ嵐よ風よ吹け 全てを攫う門開く
止まれ止まれと氷から 動を滅する門開く
開く開くよ 七つの天門
七の星より力流れて
「すごい…!カル姉さんの歌には、いかに巨匠といわれる管楽器奏者だって敵いはしないでしょう!」
ラバンは彼女の歌声に肌が粟立ち、身震いした。
「私の歌を褒めてくれるのは嬉しいけど、今はその内容に注目して。つまり、『七つの天門』からは、それぞれ異なった属性のモンスターが出現することを暗示しているの。ただ、いつどのくらいの規模で開門されるのかはわからないけど。だから、さしあたって私達は情報集めをしなくちゃね。それに加えてラバン、あなたにはもっとモンスターとの戦いに慣れてもらうわ」
「わかりました」
カルブリヌスに言われるがままに、ラバンは返事をした。しかし、現状でしなければならないことを頭では理解していたが、心の中では、やはり彼女に出逢ったあの日に聞かされた話の内容に、未だ後ろ髪を引かれていた。そして、自分の帯びた使命をまっとうするには、多くの仲間が必要となるだろうと考え始めていた。それは、カルブリヌスの心中も同じであった。
ラバンは、この未解決の問題に額縁を与えようと思った。1ピースずつ解決の手がかりを拾い集め、いつの日か、ラバン自身の作品として完成させるために。