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【第19話】カルブリヌス×ブリューナク

雪山へ向かう準備を終えたラバンはひとまず一泊することにしたようです。そんな深夜の宿に訪れたのは『ウルクの七賢人』の一人、ブリューナクでした。

どうやらカルブリヌスと話をするために単身訪れたようですが…。

久しぶりの『ウルクの七賢人』同士の対話がされる第19話、どうぞお楽しみください!


「あら、どうしたのブリューナク、こんな夜中に」

 雪山用の装備を整えたラバンは、町で一泊して翌朝早くに出発することにしていた。そんな真夜中の宿にオレンジ色の魔法陣から突然現れたのは、サオシュヤントの保有する『ウルクの七賢人』の一人、閃光の槍ブリューナクだった。

「どうしたの……って、わざわざ出向いてきた同胞に向かってそれはないんじゃない、カルブリヌス?昼間ゆっくり情報交換できなかったから『ルミナス』で座標ジャンプしてまで二人きりで話をしてあげようと来てあげたのよ。感謝ぐらいしてほしいわよね」

「ふふ、ごめんねブリューナク。わざわざありがとう」

「……どうしたのよカルブリヌス?珍しく素直じゃない?」

「そうかしら。私は本当に感謝しているのよ。あなた達、忙しそうだからゆっくり話できるのはもう少し先だろうと思っていたから。それにしてもブリューナク、昼間の戦い、相変わらず手際が良かったわ。あれが本来の『二重詠唱』なのね」

「そうよ。今回の戦いでは同属性の魔法を召喚したけど、やろうと思えば別属性の組み合わせも可能なのよ。わたしはずっとこの『二重詠唱』の構想を練っていたの。最近になってやっと人間達が魔法を当たり前に使えるようになったじゃない?待っていた甲斐があったわ。わたしの保有者のサオシュヤントとも相性は申し分ないわ」

「その事で少し聞きたかったの、ブリューナク。彼女……あなたの保有者のサオシュヤントとはどこで出逢ったの?見たところ、この雪国の生まれではなさそうだけど」

「海岸に打ち上げられていたのよ。まだ赤ちゃんだった彼女が、ね。わたしはかつての保有者の『エーテル』を探し続けていたの。そして見つけたのが赤ちゃんだったサオシュヤント。この名前は彼女を拾ってくれた夫婦がつけたのよ。もっとも、わたしが輝いていたから気づいてくれたんだけど。それでもあなたはこう言うのでしょうね、カルブリヌス。それは全て、起こるべくして起こった、偶然じゃない、ってね」

「ブリューナク、あなたのその一途な性格、私は嫌いじゃないわ。そうね。あなたは運命に従うのではなく、自らの行動でその未来の道筋を照らしているものね。あなたもまた、人間から素晴らしい影響を受けたのね。私は相変わらず、自分の運命を必然という小舟に乗って流れているわ。この時代、このタイミングであなたと結びついたサオシュヤントの名を持つ彼女。そして、母様からのアクセス。いよいよ運命の大海が迫ってきているような、そんな気がしてならないの」

「わたしはあなたのその飄々としたところが嫌いなのよ。わたし達が地球に送られて数千年。何の為だかまさか忘れたわけじゃないでしょうね?この『五度目の世界』を守る為でしょう?それをあなたは運命だのどうのって、何をのん気に構えているのよ。すでに『七つの天門』も開いてしまったし、今こそわたし達が本当の仕事をする時なんじゃない?」

「確かに、あなたの言うとおりだわ、ブリューナク。『七つの天門』に加えて『72柱』も復活した今、悠長なことは言っていられないのかもね。私は、今まで人間同士の争いに疑問を持ってきたわ。原則的には保有者に力を貸す……それも私達の役目。例えその目的が人間同士の争いだったとしてもね。人類の保護が私達の本当の役目なのに、人間同士の争いに力を貸すこともまた同じ役目。この矛盾に私は納得がいかなかったのよ。だから……」

「しばらく眠っていたんでしょう?母様からのアクセスがあるまで。その考え、やっぱりあなたが一番人間臭いわ、カルブリヌス。一番最初に造られたあなたには、一番強く母様の想いがこめられているんでしょうね。わたしだって、今まで何度も人間同士の争いに加担してきたわ。でもそれを疑問に思ったことはなかった。そう、かつての保有者ジャンヌに出逢うまではね。わたしは、彼女から学んだことを忘れないわ。サオシュヤントも今年で19歳だから、わたしの直感が間違えていなければもうすぐ彼女の『エーテル』も思い出してくれるはず……。『72柱』が復活したみたいに……って!『72柱』、復活したの?!」

「あら、さすがのあなたもまだ知らなかったようね。どうやら、『レメゲトン』と一緒に復活したみたいなの。すでに一体、排除済みよ。『悪魔達』が今何体復活していて、何が目的かも定かではないけれどね。それでも、人間達にとっては脅威でしかないことは確かだから、排除するのみよ」

「なるほどね。まあ確かに、『レメゲトン』を復活させてただで済むわけはないわよね。魔法という武器の代償は『悪魔達』との戦い、というわけね。それにしても、わたし達『ウルクの七賢人』のデータバンクでもわからないあの男、マーリン……。何者なのかしら?カルブリヌス、あなた確か数百年前に一度会っているわよね」

「ええ。会っているどころか、数年彼と行動を共にしていたわ。当時まだ魔法がなかった時代に、すでに魔法を使いこなしていて普通の人間ではないとは思っていたけれど、数百年経った今また現れたのを知って、人間ではないことを確信したわ。ただ、彼の目的は全く掴めないけれどね」

「敵か味方か、それすらもあやふやなのね」

「そういうことね。でも、目的が何であろうと、私の保有者ラバンの行く手を阻むことがあれば、ただ斬るのみよ」

「カルブリヌス、あなた相変わらず年下の男が好きなのね。その献身的な啓発力で、あなたの保有者はみんな王者と呼ばれる人物になっているんだからたいしたものだわ」

「からかわないで、ブリューナク。私達からしてみれば、人間は皆年下じゃないの。私はただ……、自分の保有者の力になりたいだけなの」

「うふふ、照れない照れない。まあ、そういうことにしておいてあげるわ。そろそろ帰るわね。しばらくサオシュヤントはこの町を離れることはできないだろうから、次に会うのはもう少し先になると思うわ。どっちにしろ、『ウルクの七賢人』は全員集まることになるんだから、またその時にね。そういえばあなた達、雪山に行くのよね?わたしの助けがなくて残念だろうけど、せいぜいくたばらないようにね」

「ありがとう、ブリューナク。ラバンの意気込みも相当なものだし、なんとかなると思うわ。彼にはこれからもっと多くの苦難を乗り越えてもらわないといけないから」

「……大変ね、あなたの保有者も」

 そして、ブリューナクは再びオレンジ色の魔法陣を召喚すると、ラバンの部屋から去っていった。外はうっすらと明るくなり始めていた。また陽は昇る。そのことがいつまでも当たり前のことであるように願いながら、ラバンの寝顔の側で優しく輝くカルブリヌスであった。




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