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【第18話】閃光

タブリーズ城の近くまで迫ってきた巨大なモンスター。

応戦していた兵士達を退け、一人立ち向かうサオシュヤント。

果たして『ウルクの七賢人』の一人、ブリューナクの実力とは?!

第18話、どうぞお楽しみください!


 サオシュヤントが屋敷を飛び出て報告に来た兵士の後をついて走ると、町を出たすぐ側に、巨大な氷の蛇のようなモンスターがうごめいているのが見えた。そして、何人かの兵士が遠巻きに魔法で応戦しているようだったが、明らかに苦戦している様子だった。

「サオシュヤント様!初めて見るモンスターです!『氷門』のモンスターだと思われるのでなんとか『イグニス』で応戦していますが、どうにも大きすぎて……」

 そう報告したのは、屋敷の部屋の中に最初サオシュヤントの隣にいた、ジルと呼ばれていた長身の男だった。

「遅くなってすまなかったな、ジル。よく耐えてくれた。後はワタシがやる。兵士達を下げてくれないか」

 サオシュヤントがそう言い、ぐっと前に出ると、その長身の男は申し訳なさそうに一礼をし、魔法で応戦していた兵士に号令をかけ、その巨大なモンスターから離れさせた。

「お、大きい……!カル姉さん、こいつは……」

 やっと追いついたラバンも、見上げて見るようなそのモンスターの大きさに目を疑った。

「ヴリトラだわ。ついにこのクラスの大きさのモンスターも出てきたのね。その巨体から吐き出される氷のブレスで氷山ができるとも言われる、『氷門』のモンスターよ。でも彼女、一人でやるみたいだわ」

 カルブリヌスが説明をし終わるか終わらないか、サオシュヤントは魔法詠唱を始めた。


「「<<コギト=エルゴ=スム>><<エウォカーティオン=イグニス>><<イクスヴァン>>」」


 すると赤い魔法陣が二つ、ヴリトラの頭上に召喚され、そこから大きな火柱が降り注ぎ、さらに二つの魔法陣を回転させるようにサオシュヤントが操ると、火柱が激しく渦を巻いた。その息もつかせぬ激しい炎を食らった巨大なモンスターはたまらずうめき声をあげながら氷のブレスをまき散らし始めた。

「む、まずいな。ブリュ、とどめを頼む」

「任せなさい」

 そして魔法陣をキャンセルしたサオシュヤントはブリューナクを構え、思いきりヴリトラの額めがけて投げつけた。輝きを増しながら飛んでいくブリューナク。額に命中すると、目を開けていられないくらいの輝きを放ち、次の瞬間には巨大なモンスター、ヴリトラはただの崩れゆく氷塊と化していた。

「こ、これが閃光の槍ブリューナクさん……。すごい……!」

 ラバンはカルブリヌスを構えてはいたものの、目の前で繰り広げられた戦闘をただ見ているだけに終わってしまった。崩れゆくモンスターを見ていた兵士達も、ようやく町に迫っていた危機が去ったことを理解すると、皆勝利の歓声を上げ始めた。

「サオシュヤント、見事にブリューナクを使いこなしているわね。二重詠唱もなかなか面白かったわ」

 カルブリヌスも、サオシュヤントの戦いぶりに感心していた。すると、いつの間にか保有者の手に戻っていたブリューナクを携えたサオシュヤントが、銀髪をなびかせながらラバンのもとへと歩み寄ってきた。

「ラバン君、見ての通りだ。町の近くですら、あんな大型のモンスターが出現するようになったのだ。雪山なんてもってのほかだぞ。それでも行こうと言うのか?」

 サオシュヤントにそう言われ、ラバンは一瞬考え、うつむいたが、すぐに前を向きなおして答えた。

「行きます!どうしても僕の夢実現のため……あ、いえ、仲間のために行かないといけないんです。心配ありがとうございます」

 ラバンの頑なな決心に観念したサオシュヤントは、大きくため息をつくと仕方なさそうに、雪山用の装備品をレンタルしているところをラバンに教えた。

「できることならワタシもついて行って手伝ってやりたいがな。ワタシはこの町を護らなければならないのだ。せめて装備だけはしっかり整えて行くがいい。今の時期は真冬に比べたらずいぶんましだが、それでも冷えるぞ」

 サオシュヤントはそう言うと、その美しい銀髪をひるがえし、兵士達と共に町の中へと戻っていった。ラバンはその去り行く彼女の後姿を、しばらくぼうっと見つめていた。

「さあラバン、そろそろ私達も行くわよ。彼女達は彼女達、私達には私達のやるべきことがあるのだから」

 ぼうっとしていたラバンはカルブリヌスにそう言われると、はっと何かを思い出したように口を開いた。

「そういえばカル姉さん、『ウルクの七賢人』は全員集まらなければいけないんですよね?あのブリューナクさんと保有者のサオシュヤントさん、ずいぶん忙しそうですけど大丈夫でしょうか」

 するとカルブリヌスはそんなこと、と言わんばかりに答えた。

「今はまだ大丈夫よ。物事には成すべく時期というものがあるの。必要になれば、必ず合流することになるわ。私達の運命の賽はすでに投げられているのだから。だから、さっきも言ったでしょう?私達は今やるべき事を確実にクリアしていきましょう」

「……そうですね。久しぶりに僕とカル姉さんとの二人きりでの戦闘で心配かけると思いますが、ご指導よろしくお願いします!」

 いつものようにカルブリヌスに優しくさとされたラバンは、様々な不安を吹き飛ばすように、カルブリヌスを強く握り締めた。

「ふふ、その意気よ、ラバン」

 そして万全の雪山対策をすべく、ラバン達も町へと戻っていった。




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