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【第15話】刀集めの目的

無事五振りの刀のうちの一本、大典太を持ち帰ったキャッスル達は、キャッスルの父親、マサムネ・エルバードに今までのことを報告します。

そして、マサムネの口から聞かされる、刀集めの真の目的とは?

第15話、どうぞお楽しみください!


―――『ギャラルホルン工業』。現在『ミスリル製品』シェア100%を占める、工業系の企業でトップを独走する大会社である。そして、その製造ラインの全てを担っているのがここ、『ヴァン工場』だ。世界最大の湖、ヴァン湖の豊富な水が、『ミスリル製品』精製には欠かせないからである。配送は『ヘルメス』によって行われる為、一つの工場での生産が可能となっている。

 キャッスルの父親、25代マサムネ・エルバードは『ギャラルホルン工業ミスリル武具』開発室室長であり、普段はヒルカニア国にある本社での勤務なのだが、元々は鍛冶職人ということもあり、どうも製造の方が気になるらしく、住居は『ヴァン工場』の目と鼻の先に構えている。工場から聞こえる鎚の音を聴いていないと、彼はどうにも落ち着かないらしい。


「さぁ、着いたわよ!あれがあたしの家よ。……って、玄関に誰かいるわね」

 キャッスル達が座標ジャンプで『ヴァン工場』に着いた後、少し歩いたすぐ先に、エルバード宅が見えてきた。どうやら玄関先で、浴衣のような格好で眼鏡をかけた男が、白いスーツ姿の二人の男達と話し込んでいるようだった。

「―――という訳ですので、できるだけ早くお願い致します、エルバードさん」

「……わかりました。なるべく急がせましょう。また揃い次第連絡しますので」

 ちょうど話は終わったらしく、スーツ姿の二人の男達は『ヘルメス・ポータブル』で座標ジャンプし、帰っていったようだ。

「ふう、やれやれ……。何をそんなに急いでいるんでしょうかね……。ん?キャスじゃないか!」

「お父様!ただいま!」

 そう言うとキャッスルは、小走りで父親の側へと駆け寄っていく。

「早かったじゃないか。もう全部集めてきたのかい?……おや、そちらの方々は?……む!君達!その武器はもしや……!」

 お約束、と言わんばかりの驚き方で、ラバン達に詰め寄ってくるキャッスルの父親の反応は血を争えない、といったところだ。

「やはり!『オリハルコン』じゃないですか!君達、これをどこで……?」

「はじめまして、キャスのお父様。私はカルブリヌス。そして保有者のラバン。こっちの槍がゲイボルグ。保有者がディタールルよ。どこで、の経緯はまた今度でいいかしら?とりあえず、すぐに話をしたいことがあるの」

 目を爛々と輝かせるキャッスルの父親をよそに、カルブリヌスが淡々と話を進めようときり出した。

「これは失礼、カルブリヌス殿。アイギス以外の『オリハルコン』を初めて見たものでつい……。ここではなんですから、ひとまず皆さん中へどうぞ」

 浴衣姿の男はそう言うと、眼鏡をくいっと押し上げ、家の中へと案内した。


「『72柱』……、ですか」

 持ち帰った大典太を預かり、カルブリヌスから今まで起きたことを聞かされたマサムネは、しばらく考え込むように腕を組み、黙っていた。

「そうなのよ!結構強かったけど、アイギスの防御のおかげで全然大丈夫だったわ。それよりもお父様は知ってたの?『72柱』の復活のこと」

 キャッスルの問いに、少し間を置いて父親は答えた。

「……いや、今初めて聞いたよ。三年前、あの男…マーリンが突然現れ、魔法を教えてくれたのはお前も知っているね、キャス。予言が公布される少し前だったね。そして私は、代々口伝で伝わっていた『魂入れ』の工程に魔法を加えることで『ミスリル』を生み出すことに成功した。それからすぐに『ギャラルホルン工業』にスカウトされ、対モンスター武器開発の仕事をさせてもらうことになったわけだが…。私は、初代の『魂鋼』を『ミスリル』という形で世に出せることに浮かれて深く考えもしなかったが、今にして思えば、確かに不審な点はいくつかある……。どうやってマーリンはエルバード家の存在を知り、私に魔法を教えに来たのか。どうして『ギャラルホルン工業』は、私が『ミスリル』を作り出したことを知ったのか。そして今度は……、宇宙開発局だ」

「宇宙開発局!『ノア』ですか?!もしかしてさっきのスーツ姿の人達が……」

 宇宙開発局の名が出て、真っ先に食いついたのはやはりラバンだった。

「そうなんですよ、ラバン君。実は、そもそも五振りの刀を集めるよう依頼してきたのは、その『宇宙開発局ノア』なのです。なんでも新しい宇宙船の開発に、『ミスリル』ではなく、『魂鋼』がどうしても必要らしくて……」

 そう言ったマサムネは、自分の言った言葉にはっとした。

「そういえばなぜ……」

「なんで宇宙開発局が『魂鋼』のことを知ってるのよ、お父様!だって、『魂鋼』のことは口伝なんでしょ?!絶対おかしいわ!」

 キャッスルもその不自然な点に気づいたようだった。

「確かにおかしいわね。『魂鋼』のことも、『魂入れ』の方法も、私と先代とで継承を続けていたのに。外部に知られるはずはないわ」

 アイギスも、同様に違和感を感じていた。

「でも現に、知られているわけよね。今はそのことを詮索する時間はないわ。問題は、その『宇宙開発局ノア』が本当に信用できるかどうか、ね。それ次第で、私達の今後の動きも変わってくるわ」

 カルブリヌスのその言葉に、ラバンは何か言いたそうだったが、抑えていた。

「カルブリヌス殿、そのことなのですが、少なくとも悪用するような感じではありませんでした。だからこそ私は彼らを信じ、キャスに刀の回収を任せたのです」

「そうよカルブリヌス!お父様は仕事で忙しいし、この刀の回収はエルバード家の人間にしかできないんだからあたしが任されたのよ!」

 父親に重要な任務を託されたことを改めて嬉しく思ったキャッスルは、今までの疑問も忘れ、えっへんと胸を張っていた。

「カル姉さん、どちらにしろ『72柱』に先を越されるわけにはいかないし、ひとまずここは刀の回収を続けましょう。五振り集まり次第、宇宙開発局に赴いて、なぜ宇宙船の開発に『魂鋼』が必要なのか問いただしてみたらどうかしら」

 アイギスの提案には、カルブリヌスを始め全員が納得した。

「そうね、アイギス。『72柱』の目的の方が不透明だし、恐らく人間にとって不利益なものでしょうからね。なんとしても『72柱』より先に回収しなければならないことだけは確かね」

「そのことなんですが、ちょうど先ほど宇宙開発局から催促されたのです。理由は聞かされませんでしたが、もしかすると、宇宙開発局も『72柱』の動きを知っているのいるのかもしれませんね」

 マサムネの言うことは、確かに理にかなったものであるように思われた。

「そうなると、ますます宇宙開発局には赴く必要がありそうね。その前にまず刀の回収だけれど……」

 カルブリヌスがそう言い、思案しようとすると、今まで珍しく黙っていたディタールルがぼそっと言った。

「時間もないことだし、次の回収はばらけて行ったらどうかな?戦力は分散しちゃうけど、その方が早いと思うんだ。それに、運が良ければ残りの『ウルクの七賢人』とも会えるかもしれないしね。まず三本同時に回収に向かって、最後の一本は回収が終わった人から随時集まれば良いと思うんだけど、どうだい?まぁ、エルバード家以外の人間が一人で行って回収できれば、の話だけどね」

「どうしたの、ディタ?珍しく協力的じゃない?!確かに、ちょっと一人は不安だけど…、そうも言ってられないもんね。アイギスも一緒だし、大丈夫よね!でもお父様、エルバード家の人間じゃなくても回収ってできるの?」

 キャッスルはアイギスの無敵モードを知ってから、割と強気だった。

「本当はだめなんだが……、状況が状況だからね。ラバン君、君は大典太を持って行きなさい。ディタ君は……そうだね、初代が使っていたハンマーがあるから、それを持って行けば大丈夫でしょう。一応うちの家宝だから、無くさないようにね」

「えぇぇ!ディタに家宝貸すの?はぁ…、いやだけどしょうがないか……。いい、ディタ!傷つけたりなんかしたらただじゃおかないからね!」

 父親の対応にかなり不満気なキャッスルだったが、渋々承諾せざるを得ない状況ではあった。

「安心したまえ、キャス君。オレは鍛冶道具に興味なんてないから使ったりしないよ。むしろ、重たそうでこっちが嫌なくらいだよ。まぁ、そうも言ってられないから持って行くけどね。だいたい……」

「どうやらこれからの行動が決まったみたいね。マサムネ、今日はもう遅いからこの子達泊めてもらってもいいかしら」

 ディタールルのつぶやきをいつものようにアイギスが食い止める。

「もちろんです、アイギス。皆さん、今夜はゆっくりしていってください。明日、準備が整い次第出発するといいでしょう」

 

 そして、エルバード家に一泊することにしたラバン達。ひょんなことからキャッスルの刀集めを手伝うことになったラバンだが、その目的の先で、まさか『宇宙開発局ノア』に赴くことになろうとは想像すらしていなかった。これからの刀回収の苦労も飛び越えて、『ノア』に思いを馳せながら床に就くラバンだった。




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