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【第12話】略奪者の来訪

目的の刀、大典太に、やっと本来の目的を告げようとした瞬間、突如魔法陣から謎の人物が現れました。

その雰囲気から、どうやら穏便に話は進まないようです。

ラバン達の決死の戦いが繰り広げられる第12話、どうぞお楽しみください!


「ほう……、人間に先を越されていたとは」

 魔法陣から姿を現した謎の人物、一見すると普通の人間のようであるが、やはり雰囲気が人間のそれとは違うことは明らかであった。

「さて、今日は来客の多い一日でございますな」

 大典太は戸惑う様子こそなかったが、キャッスル達に対する声色とは違っていた。

「ちょっと!誰なの?!それ以前に、なんで座標登録されてないここに『ヘルメス』で来れるのよ!」

 キャッスルはいつもの調子でまくし立てた。そう、彼女らのいるこの場所へは、座標管理局で登録されていない為に『ヘルメス』での座標ジャンプはできないはずなのだ。

「おやおや、元気の良いお嬢さんだ。『ヘルメス』?知らないな、そんなものは。そんなことより、我はそこの刀に用があるのだ。渡してもらおうか」

 どうやら、その謎の人物もここに現れた目的は一緒らしい。

「なに言ってるのよ、あなた!この大典太はあたしが持ち帰るように言われているのよ!後から出てきて勝手なこと言わないでよね!」

「キャス君の言うとおりだよ。この刀は本来の所有者の下へ戻ろうとしているんだ。邪魔をしないであげてほしいな。それとも、戦ってでも奪っていくつもりかな?」

 キャッスルとディタールルはそう言うと、すでに臨戦態勢に入っていた。

「奪う?その通りだ。我は奪いに来たのだ。我が名は『略奪りゃくだつ』、シャックスである」

 シャックスと名乗ったその男はそう言うと、見る見る姿を変化させていき、ついには巨大な鳥のようなモンスターへと変貌した。

「ついに現れたわね。みんな、気をつけなさい!これは今までのモンスターとは訳が違うわ!アイギス、ゲイボルグ、しっかりと頼むわよ」

「ええ、任せて、カル姉さん」

「どうやらオレの出番のようだな。おい、ディタよ。やばくなったらオレがやるからな」

 カルブリヌスの合図と共に、アイギスも、元の人格に覚醒したゲイボルグも臨戦態勢に入った。

「カル姉さん、こいつは……」

「今回の説明はあれを倒したあとにするわ。とにかく今は戦いに集中なさい、ラバン。来るわよ!」

 ラバンはこの状況に戸惑いながらも、とりあえずカルブリヌスの言葉に従うことにした。

「なんなのよ、この化物はいきなり! <コギト=エルゴ=スム><エウォカーティオン=イグニス><フラマ> いっけぇ!火の玉!」

 キャッスルは手のひらサイズの魔法陣を召喚すると、そこから空中に浮かんでいるシャックスめがけて火の玉を発射した。勢いよく飛んでいった火の玉だったが、シャックスが軽くその翼を羽ばたかせただけで、簡単に消え去ってしまった。すると今度は、お返しとばかりにシャックスが大きく羽ばたくと、無数の風の刃がキャッスルに向かってきた。

「やば……!」

 ものすごい速さで迫り来る風の刃に、思わず目をつむってしまったキャッスル。そして辺りに砂煙が舞う。

「キャス!大丈夫か?!」

 ラバンからは、キャッスルがまともに攻撃を受けたように見えた。しかし、砂煙が晴れ、キャッスルが目を開けると、胸当てだったアイギスは盾に変形し、敵の攻撃を全て受けきっていたのだ。

「あ……あれ?アイギス……?」

「大丈夫よ、キャス。これが私の本来の姿よ。さあ、恐れないで。あなたは私が護るわ」

「アイギスがあの姿になったら、キャスは絶対大丈夫ね。『ウルクの七賢人』のうち、防具は二人。その中でも、アイギスは無敵の盾と評されているわ。ラバン、私達もいくわよ!シャックスの属性は『風』だから、『アクア』の魔法を試してみなさい」

 この油断のできない状況下ではあるが、アイギスが盾に変形したのを確認したカルブリヌスは安心したのか、いつものようにラバンに戦闘の指示を出した。

「わ、わかりました! <コギト=エルゴ=スム><エウォカーティオン=アクア> ……えっと、すみません、魔法名忘れました……」

「ラバン……」

 魔法陣を召喚したまでは良かったが、肝心なところでつまづくラバンに、ふう、というカルブリヌスの溜め息が聞こえてくるようだった。

「ラバン君、<ウォタ>だ。その後はオレがやる。ゴーレムの時と同じ戦法でいこう。とどめは任せるよ」

 ディタールルが助け舟を出す。

「ありがとうございます!…… <ウォタ>!」

 ラバンの召喚した青い魔法陣から、直径30センチ程の水球が勢いよく飛び出す。そして、キャッスルに攻撃を続けていたシャックスの背後に、見事に命中し、水球がはじけた。すると、効果があったようで、一瞬シャックスがひるんだその時だった。

「いい感じだね。 <マグナフリズ>」

 すでに召喚されていたディタールルの黒い魔法陣から、強烈な冷気がほとばしる。先のラバンの水球との相乗効果なのか、シャックスは前のゴーレムの時よりも厚い氷に覆われた。そして、飛行能力を奪われたシャックスはそのまま激しく地面に打ちつけられ、その衝撃で粉々になってしまった。

「も、もしかして、倒し……た?」

 ラバンがとどめをさそうと、カルブリヌスを構えたが、思いもかけずすでに決着はついてしまったかのように見えた。

「ラバン、油断は禁物よ。まだ生きているわ」

 カルブリヌスがそう言うと、粉々になった氷の山から、人間の姿に戻ったシャックスが、よろよろと立ち上がった。

「ふ……不覚。まさか『グラキエス』を使える人間が……いたとは。加えて、『金星人』が三体もいたのか……。任務不達成……である」

 シャックスはそう言い残すと、まるでテレビの画面が消えるように、すっと消滅した。

「残念。オレの出番はなかったな、ディタよ」

 せっかく覚醒したゲイボルグだったが、意外とあっけなくシャックスを倒した様子を見て、少し残念そうだった。

「ふふ、あの程度、君の力を発揮してもらうまでもないさ、ゲイボルグ君。それに、やっぱり君達『ウルクの七賢人』が三人いると、魔力の高まり方が違うな。オレの想像以上だ。これなら、あれに近づく日も近いな。ふふふ……。七人全員集まると、どうなるんだろうね。楽しみでしょうがないよ。そうだろう、ラバン君?そうだ、君の『アクア』もなかなか良かったよ。良い相乗効果を得られたな。ただ、とどめをさす場面を奪って悪かったね」

 ディタールルは少し興奮気味に、ぼそぼそとラバンに向けて話しかけた。

「あ、いえ、僕は全然構わないですが……。それよりカル姉さん、最後にあいつが言った言葉、あれはどういう意味ですか?」

 ラバンはシャックスの最後の言葉を聞き逃さなかった。そのラバンの質問を受けたカルブリヌスは、珍しくしばらく考え込むように沈黙した。

「……そうね。そろそろ話すべきなのかもね。私達『ウルクの七賢人』の出自を……」 

 そして、意を決して、静かに語り始めた。





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