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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

リビングデッド

作者: 秋葉 節子

なんというか、本当にグロ注意で短編では救いのない話なので注意です!

 ある青年の話を悲しい話をしよう。

人によっては喜劇だと言うかもしれない。

けれど、私は悲劇だと思う。

彼に幸せは無い、そして幸せも来ない。

有るのは悲しみだけだと私は思う。




 その少年は片田舎のある村で生まれ育った。

青年は農業を営む家の長男として生を受けた。

裕福ではないがそれなりの稼ぎをし、また隣の家の長女と婚約を結び。

傍から見れば十分過ぎる程幸せな少年だった。

これは悲劇なのだから幸せはすぐに壊されてしまうわけだが……




 ある日の夕方、彼が婚約者である彼女を家に送ろうと立ち上がると外から悲鳴が聞こえた。

青年は彼女を座らせ、窓から外の様子を見る。

どうやら盗賊が襲いかかってきたようだった。

一人また一人と人が攫われているのを見る限り人攫いなのだろう。

青年は後ろで不安そうに見ている彼女を見る。

そして、家族と一緒に家の地下室へとかくまった。

しかし、青年はそれでも不安は拭えなかった。

「家の中を探されたらバレてしまう……」

そう考え、なんとしても彼女だけでも守りたいと考えた青年は家に火をつけ始めた。




 盗賊の一人が家に火がついたのを見つけ、面白そうだと火のついてない家に火をつけた木の棒を投げ入れ、火のついた家から逃げ出してくる人達を捕まえていく。

すると、最初に火がついてた家から一人の青年が出てくるのが見えた。

見た限り、農民だとわかった、農作業をしなければあそこまでいい身体つきにはならないからだ。

これはいい奴隷になると考え、その青年を捕まえる事にした。


 鉄製の檻を載せた馬車に数十人の若い男女が運ばれていく。

青年は今後起きる事を想像するだけで震えがとまらなくなった。

それに関しては他の人間達も同じではあったが。

しかし、青年は一つだけ良かったと思った事があった、婚約者である彼女の存在だ。

ここに彼女が居ない事を考えると無事見つからずに済んだという事だろう。

それだけは、良かったと青年は思う事ができた。




 数日が立ち、青年は奴隷市場の商品として売り出されていた。

一人、また一人と若い女性が売られていく。

その一人一人が青年の友人や知り合いだったため、胸が痛むのを堪える。

もしかしたら、彼女達が売られたのは幸せだったのかもしれないが。

そして、青年にも運命の時が来た。

「ここの奴隷を全ていただけません?」

ある女性の声が青年達を攫った奴隷商人へと伝える。

「す、全てですかい!? それはありがたいのですかお金の方は?」

手をごますり、女性へ向けて伝えているのだろう。

途端、ギャィンッと鈍い金属音が響いた。

「あら、これで足りなくて?」

「ヒッ!? こ、これは十分です! お好きなだけお連れいただいて構いません」

あまりの金額に気をよくしたのだろう、奴隷商人は全て連れて行けと馬車事青年達を売ったようであった。

「あら、それでは遠慮なく」

女性は馬を馬車にくくりつけ移動しはじめた。




 それから目的地まで三日程の道程だった。

女性の館は暗い森の奥深くにあり。

不安に駆られた青年達は震え身を寄せ合い励ましあっていた。

「さてっ着いたわね……じゃあ、貴方達降りなさい、部屋は一部屋二人ずつ入る事いい?」

そういい、青年達と歳は変わらないような無表情に立ち尽くす人へ案内してあげてと伝え何処かへ消えてしまった。


 部屋に友人の一人と一緒に入れられる青年。

青年は恐ろしかった、彼女の無事を守れた事は嬉しかったがそれでも恐怖が先行し始めた結果だろう。

「俺達どうなるのかな……」

青年の友人が呟く、どうなるか……それは青年でさえわかるはずがなかった。

「マルコ……」

青年は友人──マルコへ激励の言葉を送ろうと思ったが何も浮かんでこない。

そして、青年とマルコは頭を下げジッと不安な気持ちと戦い続けた。

しかし、その不安も更に酷くなることが起きるのだが。



 それはその日の夜の頃だった。

二人分の足音と何かが転がる音が聞こえ、定期的に扉の開く音と閉める音が鳴り、また足音が響く。そして、青年達がいる部屋の前で止まった。

ギィ……

と、不安な気持ちを掻き立てる様な音が鳴りながら扉が開く。

「ほら、食事よ」

女性の一人がパンとスープが乗ったトレイを一人分地面におく。

これを二人で分けろという事なのだろうか?

青年はそう伝えようかと顔を上げる。

「貴方は私についてきてね?」

女性は青年の顔を見ず、友人のマルコの方へと向けて言った。

「お、俺……?」

「大丈夫よ、痛い事はしないわ」

そう言いながら、女性は不気味さをこれでもかというほど醸し出している。

「ヒッ……嫌だ! 行きたくない!」

マルコは怯え、部屋の奥へと逃げようとする。

「あら、貴方達に拒否権なんてないのよ?」

女性がそう呟いた途端、マルコの身体が浮かび上がり女性の下に着地した。

「え?」

マルコはどうして目の前にあの女性がいるのか、訳がわからなくなっているようだった。

勿論、それは青年もであるが……

「じゃあ、着いてきてね? あ、貴方は御飯を食べたら寝なさいね?」

青年に女性は呟き、扉を閉めどこかへ消えてしまった。

残るのは一人分の足音とトレイが載せてある台車が動く音、扉が開く音が定期的に聞こえてくるだけだった。

マルコは大丈夫なのだろうか……そうは思いながらも空腹に耐えられなかった青年は食事を取り部屋に備え付けられている固い寝台で寝る事にした。



 翌日目を覚ます、しかしマルコの姿は何処にも無かった。


 それから幾日が経っただろうか……

食事は毎日夜に運ばれてきていた。

しかし、マルコが戻ってくる事はなかった。

 ある日の夜、隣の部屋で女性が一人悲鳴をあげた。

そして「行かないで」「一人にしないで」と叫んでいる。

どうやら、隣の一人が連れて行かれるのだろうという事だけは青年にもわかった。

青年は隣の女性が戻ってくるかもと、思いながら寝ずにただ黙って待っていた。

しかし、朝になっても連れて行かれた女性は戻ってこなかった。


それからまた幾日が経過した。

そして、何日かに一人女性の手によって連れていかれる誰か。

青年は不安や恐怖に泣く日もあった。

気付けば青年の周囲の部屋には誰も居なくなっていた。

食事が運ばれるという事は忘れられていないという事なんだろう。

しかし、毎日今日は私の番かもしれないという不安と恐怖心から逃げたかった。

そして、その恐怖の日は訪れなかった。




 この館に来てから一体何日が経ったのだろう?

百日を越えたあたりから青年は数えるのをやめてしまった。

そして、それから数日後、廊下のあたりから数十人程の足音が聞こえた。

何事かと考えたが、新しい人達なのだろうと青年は思い至った。

そして、その日隣の男性が一人連れて行かれた。




 何故私は女性に連れて行かれないのだろう?

私は何時連れて行かれるのだろう?

マルコはどうなったんだろう?

私より先に運ばれた人々はどうなったのだろう?

疑問は不安を呼び、不安は恐怖を生み出す。

青年はそれでも狂う事はなかった。

もしかしたら、この時既に狂っていたのかもしれないが。

彼は今日二人分の足音が聞こえたらドアを叩こうと決心した。


 そして、夜二人分の足音と食事を運ぶ為の台車の音が聞こえてきた。

そして青年の部屋の扉が開けられた。

食事を置かれたという事は今日も青年の番ではないという事だろう。

「何故……」

「ん?」

青年の言葉に女性は反応を示した。

「何故……私は連れて行かれないのですか……」

「何? 連れてってほしいの?」

「楽になりたい……俺を何処でもいいここじゃない何処かへ連れていってくれ!」

少し考えるような仕草をした女性は「いいよ」と伝えついてくるように言ってきた。

青年は不安と恐怖に押しつぶされそうであったが、ここから出られるという嬉しい気持ちもあった。

しかし……青年はここから出ない方がまだマシだったのではないか。私はそう思う。




 連れて行かれた場所は館の地下室だった。

地下室の扉は鉄製でできておりとても重そうであった。

そして、鉄の扉からもれてくる臭いは血や肉が腐った臭い。

悪い予感しか青年は感じなかった。

そして、女性が扉をあけた瞬間青年は悲鳴をあげ、瞬間嘔吐した。

「何よ~貴方が連れて行ってと言ったからじゃない」

心外だとばかりに女性は声をあげ、後ろからついてきたのだろう誰かに声をかけ連れてくるように言うと。部屋の中央にある石製の寝台の横に立つ。

そして、後ろからグチュッと感覚と押される感覚を感じ瞬間、青年の頭は真っ白になった。

後ろに居た人物……それは青年の友人マルコだった。

しかし、友人だったと呼んだ方がいいのかもしれない。

マルコだった者は顔は所々腐り、青年を押す腕からは腐臭と血ではない白い液体がドロドロとこぼれていたからだ。

「マ、マルコなのか?」

青年は恐怖心と戦いながらマルコだったと言うべき者に呟いた。

しかし、その返答は「あぁ~」「あうあぁ~」と人間が話す声とは到底思えない者だった。

そして、後ろで女性が喋る。

「それは失敗作でねぇ……自我なんてないし単純な事しかできないし。あ、貴方もそうなるかもしれないから仲良くしてあげてね?」

と、さも悪い事などしていないような口調で言った。

青年は女性の言葉に理解の一つもできなかった。

しかし、何か言いたいと思い女性の方を向くが……青年の視界に入った者達を見て反抗心など微塵も残らなかった。

それは部屋の隅にある者達を見てしまったが故だった。


部屋の隅においてある棚には数十の生首か、しかしその生首達は意識があるのだろう。

「殺してくれ」「死にたい」等と呟いている。

また、右隅にある檻の中では歳若い全裸の女性がケタケタと笑いながら取れた右腕を右肩につけようとしている。

左隅の檻の中では動かぬ全裸の女性を食べる男性が見えた。

「な、なんだこれは……人間なのか……?」

「元がつくけどねぇ……失敗作以下の廃棄物だけど」

と、気持ち悪い物を見るような視線で答える女性。

早くここに寝なさいと女性が言うが青年は動く事ができなかった。

「手のかかる子だねぇ」

そう呟くと彼女が何か言葉を呟いた瞬間青年の身体が浮き上がり寝台に横の体勢のまま置かれる。

起き上がろうとした瞬間マルコだった者に押さえつけられ不快感から一層抵抗する、が女性にうるさいと一蹴され何か得体の知れない者で身体を押さえつけられた。

何をされるのだろう、青年が不安に思った瞬間、服を全て破り取られた。

「な、何を」

「緊張感のない子だね、まったく……今から貴方には粉薬を入れるわ、そしたら楽になれるから」

と笑顔を女性は答える。

何をするんだと叫ぼうと口をあけた瞬間、白い粉末が口に突っ込まれた。

そしてそのまま、鼻の中、耳の中、肛門等穴という穴に詰め込まれ、全身にも塗られていく。

数分もすると、青年は何もできなくなっていた。

女性の言うとおり意識は朦朧となり、何処か浮遊感のようなものさえ感じる。

そして、遠くから女性の言葉が響く。

「いたし、いたし、すうごのいたし、すうごのいたし、りょくまのそのへ」

意味の分らない呪文のようなものを聞きながら彼の意識は闇の中へと消えていった。

名前や声さえ忘れてしまった、愛していた婚約者の顔を思い浮かべながら。




 どれだけ寝ていたのだろう?

青年が気付くと、あの恐ろしい地下室ではなく白を基調としたベッドの上で寝ていた。

衣服は着ているという事は誰かが着せてくれたのだろうか?

そして、ここは何処だろう? と考えながら立ち上がった瞬間。彼は立ちくらみを起こし地面に倒れこんでしまった、生憎と痛みはまったくと言って良いほどなかったが。

その音が聞こえたのだろう、扉の外でガタゴトと何かの物音が聞こえたと思ったときには扉は開かれていた。

「起きたのね!? ああ……本当に良かった……」

部屋に入ってきた女性は何処か愛した婚約者に面影似ている女性だった。

しかし、婚約者とは違うのだろう彼女とは違いこの女性は何処か気品を感じたからだ。

「自己紹介がまだだったわね……私は、オパール・グリンマーと言います」

と名家の令嬢がするような挨拶をしてきた。

ようなではないのだろう…実質オパールは貴族の令嬢なのだから。

「恐ろしいあの場所から助けていただきありがとうございます……私はマレフィクスと言う、農民です」

青年はそう答え、深々とお辞儀を返した。

「マレフィクスさんですね? もう三日も起きなかったから、心配しましたが無事でよかったです」

そう言うと婚約者が浮かべたような笑顔を青年に返した、それを見た青年は婚約者の顔と被り赤面するのだった。

「それで……マレフィクスさん、貴方は何故あの魔女の館に?」

魔女の館……青年が連れていかれた館の名前なのだろう。

あの女性は魔女だったんだと、青年は瞬時に理解した。

そして、オパールに村が盗賊に襲われ奴隷として魔女に買われ恐ろしい目に合わされた事を言った。

当然、そのときのマルコや廃棄物と呼ばれた彼らの事は伝えずに。

そして、他に生存者は居なかったのかと尋ねた。

「そんな……恐ろしい目に……生存者は貴方だけと聞いております、ご友人が居たのですか?」

オパールは目に涙を浮かべながら青年に問いかけた。

青年は居たけれどどうなったかはわからないと伝えた。

涙を溜め、青年に抱きつき頭を撫でながら「貴方だけでも助かってよかった」と囁いた。

青年は力なく彼女に抱きつき、大声で見っとも無いと思いながらも泣きはじめたのだった。




 そして、青年は落ち着いてきたため、オパールに元の家に帰りたいと伝えたのだが伝えた村は数年前に無くなった事を聞いた。

更なる絶望感に襲われたがオパールは畑を管理しないか?と聞いてきた。

彼女は名家の出身で、私兵を雇う程裕福だ。

そして、管理する畑と家を一つ預かる事にし、そこで働く事にした。

その家に向かう道中、青年は黒い石が道端に落ちているのが見えた。

なんだろう? と青年は思い、拾い上げてみる。

黒い石は貴重ではあるが宝石に劣る物だ。

しかし、何故か青年はそれがとても気になったのだ。

その石はもらう事に決め、青年は新生活を夢見て家へ向かった。


 それから…一週間。

青年の身体にはいくつかの異変がおきていた。

一つは空腹や疲労を感じなかった。

食べないのに身体は何も不満を漏らさなかった。

そして、寝ている時恐ろしい体験をした。

腕に違和感を感じたのだ、飛び起きて見て見ると腕は腐っていた。

彼は悲鳴をあげる、そして頭の中で…「人間ガ食べタい」と叫んでいる自分がいることに恐怖した。

しかし、彼の理性がそんなはずがないと叫ぶ。

身体は人間を求め、理性はそれに抵抗している。

傍から見れば狂人のようにしか見えないのだが……青年は必死だった。

ガタンッ

棚から何か落ちる音がして、地面を見ると黒い石が転がっていた。

青年が暴れてる時に棚とぶつかり、棚においてあった石が落ちたのだろう。

彼は石を持つと腐っていた腕の違和感は消えていき、頭の中で叫んでいた言葉は鳴りを潜めていた。

青年にはその石は不気味に思えたが、今の自分にはとても大事なものなのだろうと考え、その夜から青年は石を抱いて寝ることにしたのだった。




 それから、また数年が経過した。

青年が作る作物はとても人気があった。

彼が作る作物は何故か魔力を回復する事ができたからだ。

一部の魔術師等はこぞって彼の作物を求め、オパールの家は今以上に裕福になっていた。

そして、オパールは青年に惹かれ、青年も彼女の面影と重なる婚約者を忘れ彼女自身を愛し始めていた。

彼女は青年を求め、青年は彼女を求め始めた事を知ったオパールの父はそれに猛反対した。

当然な結果だろう、オパールは名家の令嬢。

一方青年は拾われた人間で、尚且つ一農民でしかない。

オパールが三女や四女等ならば、まだ結ばれる可能性はあったかもしれない。

けれど、オパールはグリンマー家の唯一の子供であった。

そして、今のままでは彼女は青年と結ばれるだろうと、父親は恐怖した。

裏の人間に声を掛けるのにそこまで時間は掛からなかった。




 青年が寝ていると焦げ臭い臭いに気がついた。

目を開けると、部屋の中は赤く明るくなっていて。

所々から煙も見えた。

そう……家に火がつけられたのだった。

青年は混乱したが、急いで石を持ち家を出た。

家を出た瞬間、彼の前に黒装束の誰かが立ちふさがったのだが。

「悪いな、貴方はこの領地にとって大事な人物ではあるが。邪魔になるんだ」

そう黒装束の人物は呟き、気付けば青年の懐に潜り込み、片手で扱うのに適していた短剣を彼の胸元に差し込んでいた。

急所ですぐ死ぬからだろうか?

彼に痛みはなく、刺されたという事を自覚したショックのためか意識は消えていった。




 次に目が覚めたとき、青年は木製の箱の中に居た。

どうやら誰かに運ばれているらしく、ふわふわとゆれていた。

少しすると何処かに投げだされた瞬間に女性の鳴き声が聞こえてきた。

オパールの泣き声だとすぐに気付いた青年は箱から出ようとするがどうやら釘か何かで打ち付けられているのだろう開く事はなかった。

音で知らせようとドンッドンッと木の板を叩くが開けられる気配はない。

そして、彼女の悲鳴染みた声が聞こえてきた。

「棺から音が!? お父様! マレイは生きてます! お父様!」

「オパール…何を言っているのだ、彼は死んでいたのをお前自信確認したのだろう」

「そ、それは……」

「早く土をかぶせろ、これ以上オパールを悲しませるな」

「マレイ…マレイ……いやああああああああ」

そして、土がどんどんかぶせられていく。

次第に彼女の悲鳴は小さくなっていった。

青年自身も諦めたわけではなかった。

土を盛られていく間ずっと木の板を叩き、引っかき続けていた。

痛みはなかったので遠慮なく叩き続けていた。


一体何時間叩き続けたのだろう。

時間がどれぐらい経ったかも青年はわからなくなるまで叩いていた。

そして、木の板が壊れる音がしたと同時に進入してくる土。

青年は慌てて上へ上へと土を掘り返していく。

外へ出ると夜になっていた事に気付いた。

そして、青年が外を確認するとそこは墓場なのだとすぐにわかった。

一体何があったのだ、青年は訳が分らなかった。

そして、昨夜胸を何者かに刺されたのを思い出し、服を捲り胸を見た、そこに傷は無かった。

「あれは、夢……だったのか?」

夢だったのではないか? そう思い、住み慣れた自宅へ戻る事に決め。

誰もが寝静まった町を歩き、自宅の場所へと進んだ。


 自宅は黒く焼け焦げた無残な姿となっていた。

「あれはやはり夢なんかじゃ……」

そして、自宅の前に立ち地面を見ると、そこには夥しい量の血痕と青年が大事にしていた黒い石が落ちていた。

全て夢じゃなかった。

そして、何故私は殺されたのか。

青年はその場で蹲り考えた。

そして出た答え、それは……オパールの父親に消されかけた事。

少し考えればわかる事だった。

彼女は名家の令嬢だ。

そして悪名高い魔女の館で保護された青年。

父親である男は、私にずっと言っていたではないか。

立場はわきまえろと。

オパールの父親が青年を消そうとした。

そういう事なんだろう、青年はその考えにしっくりきたようだった。

ここに居たら、また襲われる。

次は本当に命はないだろう。

彼女は俺の死を信じて涙を流してくれるだろうか?

いや、既に流していたか……青年はクスリと笑い立ち上がった。

青年は旅に出る事に決めた。

生憎と空腹感を感じる事はこの数年間なかった。

疲労さえ感じない、何故かはわからない。

たぶん、魔女の実験の結果なんだろうとは思っていたが。

そして、彼は手に黒い石を持ち、ここではない何処かに一人歩いていくのであった。






 これが、ある青年の悲しい話だ。

そして、彼はこの数年後、ある戦争で名を上げる。

リビングデッドと敵味方から恐れられ、しかし仲間からは最高の男と称された青年のな。

続きを知りたければ調べればいい、彼は数千年を生き、今も行き続けているのだから。

彼は笑顔で居るだろう、今はそういう環境の中に居るのだから。

リビングデッドの青年よ、君に幸あれってね?

ちょっと頭に浮かんだ設定を考えてたらボロボロと浮かんできたので短編で一個上げてみようと考えてたらこうなったんですが。

当初考えてたのはコメディだったはず……あれ?


続きが読みたいって感想とかあったら、連載考えようかなと思っています。

シリアスになるかコメディになるかは感想次第ですが。

一応どちら方面も考えています。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続編書いてみたらどうでしょう
[良い点] 面白く読ませていただきました。 ちゃんと起承転結(オチ)もあり、時間軸的にもきちんとストーリーが進行し、個人的には作品として成立していると思います。 自分から見れば、それほど「グロ」すぎる…
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