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ヒーロー  作者: 山都
第六章 進化と憎しみ
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進化 2

 一瞬で田上との差を詰めた。僅かに光り輝く右拳を、田上の腹に叩き込む。

 川原に向かって田上の体が吹っ飛んだ。それにバーニアを吹かして追いつく。真上から蹴り下ろした。土煙を上げて、エニティレイターが土手に激突する。土煙が舞って、僕はその中に突っ込む。

 田上の蹴りが飛んできた。僕は腕を交差させ、それをガードする。痛いという感覚はなかった。ただ、力が溢れてきている。

 田上の足を掴んだ。そして、握る。力を籠める。すると僕の手は発光し、光を帯びて、田上のその足を粒子へと変えていった。

「く……っ」

 田上がナイフで自らの右足を切断する。そうしなければ、エニティレイターの身体は全て、消失していただろう。

 疲れはなかった。エニティレイターの時は大量に体力を消費したあの技が、この身体ではあたりまえのようにできる。

 負ける気がしない。

「驚いたよ久坂。まさか、こんなことまで出来るなんてな」

 田上が持つナイフの柄には、血がこびりついていた。刃にはない。振動しているから、つかないんだ。

「だけどな、俺だってこのまま負けてやる気はないんだよ……っ!」

 エニティレイターに羽が生える。黒く、大きな二つの羽。それが背中から突然に現れた。

 そして、エニティレイターの姿が変化していく。鋭さを増し、獣のように。巨大な爪だけではなくそのイメージはより変異種に近くなる。装甲は装甲と言うよりも皮膚に近くなり、真っ黒な皮からは毛が生えていた。

 エニティレイターと鳥の変異種が、混ざり合っている。

 そして、なくなったはずの右足は高速で再生をしていた。瞬く間に足は修復されていく。

「さあ、これでイーブンだ。どうする、ヒーロー」

 答えはもう、決まっている。

 それが例え間違ってたって。それが例え狂ってたって。それでも僕はやる。父さんを殺したこいつを、僕のこの手で殺したい。

 僕は無言で銃を構えた。銃口を田上に向け、そして引き金を引く。

 その瞬間、田上が高速で飛行を始めた。上空に舞い上がって弾丸を避け、僕に接近。ナイフが首元を掠める。この体の表層に傷がついた。

「待てよ」

 通り過ぎていく田上を僕は追いかける。走り出し、そして跳躍。バーニアを吹かして僕も飛ぶ。

 田上との差が詰まっていく。僕はナイフを手に取った。そして、それを振るう。

「遅い」

 田上が一気に加速した。その巨大な羽に加えてバーニアを使用している。風圧が僕の身体を襲う。

 大きく旋回した田上が僕に襲い掛かった。迫りくる巨大な爪を回避し、僕は銃弾を叩き込む。が、それは防がれた。僕が引き金を引こうとしたその瞬間、銃が叩き落とされていた。田上がまたも通り過ぎていく。

 僕はもう一方の銃を取り出した。しかし、早すぎる田上を捉える事が出来ない。

 追いつこうにも、田上の速さは僕を超えていた。全力で飛んでも、全く追いつかない。

 ――もっとだ。

 僕は心の中で叫ぶ。

 ――もっと、もっと、もっともっともっともっと速く!

 身体が作り変えられていく。身体が再構築される。体内がぐちゃぐちゃになって、新しい僕になっていく感覚。そして、バーニアがさらに巨大なものへと変化していく。

 僕は一瞬で田上に追いついた。圧倒的なまでの速度の差。当たり前だ。そのために、僕はそういう風に身体を作り変えたんだから。

「何!?」

「遅いんだよ」

 僕は田上の顔面を殴りつけた。

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