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ヒーロー  作者: 山都
第一章 始まり
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怪人 3

 ここはきっと、僕の知っている街じゃない。

 全身から力が抜けて、僕はその場に座り込んでしまう。直後、コンクリートが砕ける音とともに、僕の上を何か巨大なものが通過する。

「うわっ!」 

 風圧で僕の身体が吹き飛ばされた。近くでメキメキと木が折れる音が聞こえる。僕の視界には吹き飛ばされた屋根が映っていた。

 何かが背中に当たり、僕の身体が止まる。痛みは後からやってきた。

 自分の目の前で起こったことが信じらず、痛みに意識が向かなかったからだ。

「あ……あぁ……」

 屋根が無くなっていた。そして目の前には赤い豚がいる。その手に持っている巨大な斧で、この家の上半分を吹き飛ばしたのだ。

 赤い豚が僕に向かって手を伸ばしてくる。

 ――に、逃げなきゃ……

 そう思っているのに、僕の足は動いてくれない。

 怯えることしかできない。

 僕の身体を巨大な手がつかんだ。そのまま僕は上へと持ち上げられる。

 身体を締め付ける力は徐々に強くなっていった。豚の低いうなり声が僕の心臓の音と共に耳の奥で鳴り響いた。

 ――ここで死ぬ?こんな訳の解らない状況で?

 僕はついさっきまで自分の家で寝ていた。その前だって、何も無かったわけじゃないけど、極めて普通の生活を送っていたハズだ。死ぬようなことなんて、こんな状況に陥るなんて、絶対にありえなかったハズだ。

 それなのに。

 心臓が大音量で鳴り響く。息が荒くなり、頭が内側から殴られているかのような感覚に見舞われる。見慣れた街と似ている何処かは、僕には何所もが歪んで見えた。赤い豚は僕を見ていた。荒々しい吐息が吐かれている。

 僕は力を振り絞って暴れた。ただこの巨大な化け物から逃れたくて暴れた。言葉にならない声を上げ、身体の束縛を解放とうとして暴れた。

 それでも僕は逃げ出すことができない。僕を押しつぶす力は増す一方だ。

 ――痛い、痛い、痛い!

 肉が圧迫される。

 骨が軋む音がした。

 全身が引きちぎられそうな痛みを感じた。

 そして、僕は死を覚悟して――

 僕の目の前にヒーローが現れた。

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