怪人 1
気が着くと、僕はさっきまでと違う場所にいた。
辺りを見回すと、よく知っている風景だ。いつも、僕が通っている通学路だ。一軒家とブロック塀に囲まれている、そんな道。二分もあれば、僕の家へつく。
「なんでここに……」
思い当たるのは、真っ白になったあれのせいってことくらいだ。
視界が真っ白に染まって、何も見えなくなった。一瞬、意識を失うような感覚があった。
もしかして頭でも打ったのかと思ったけれど、頭痛がするということはなかった。どこかに違和感を感じているわけでもない。
とりあえず、遠藤の家に行こうと思った。僕は遠藤の家へ向けて歩きだす。
その時、視界に巨大な何かが入った。
赤いそれは、斧を振り回している。その斧はブロック塀突き破ってを民家を破壊して、暴れまわっている。
――なんだ、あれ。
僕は呆然として、声が出なかった。それに目を奪われ、僕は立ち尽くした。
そいつは豚だった。
ただ、普通の豚とは違う。赤く、民家よりも巨大で、二足歩行をしていた。
僕はそんな豚を見たことをなかったし、そんな豚がいるだなんて、聞いたことすらない。
そう、それはまるで。
――怪人じゃないか。
そうとしか言いようがなかった。それ以外に当てはめようがなかった。町を破壊していくそいつは、特撮番組に出てくる怪人そのものだ。
赤い豚は低いうなり声を上げ、斧を振り回している。斧はブロック塀を破壊して、住宅を切り裂いていく。
僕は目の前で起こっていることが信じられなかった。
特撮番組ならかなり見ている。テレビにこういう場面はいくつもあった。言い方を変えるなら、僕はこんな場面なら見慣れている。
赤い豚が動きを止めた。斧を振り回すのを止めて、辺りを見回しだした。
――何かを探している?