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ヒーロー  作者: 山都
第四章 正体
58/97

 学食は校舎とは別の建物の、二階にある。一階には体育館、二階に学食と購買、屋上にプール。よくわからない造りだ。

 学食で料理を頼む時は、まず食券を買う。値段は二百円から五百円くらいで、なんとも言えない値段。

 料理はおいしいと言えばおいしいし、おいしくないと言えばおいしくない。まあ、要するに普通の学食だ。

 普通だから、いつもどおりの昼食を食べる分には何の不満も無い。僕も、弁当が無い時は学食で昼食を食べている。


 学食に行く途中で、内藤君と会う。何人かの中学生と一緒に廊下を歩いていた。

 内藤君は僕らに気がつくと、軽く会釈をする。

 「一緒に学食に行かない?」、と言いかけて止めた。彼は今、友達と一緒にいるんだ。僕らに変に気を使わせるのも悪い。

「よう、アキラ。元気だったか?」

 何も遠藤は迷うことなく内藤君に話しかけた。ある意味すごい。

 というか、お前は昨日も内藤君に会っているだろ。


「悪くないです。特に違和感もないし」

 それに対しての内藤君も回答も変だ。なんだ、特に違和感が無いって。遠藤の影響を受けているのだろうか。あまりよくない傾向だ。

「そうか。良い事だな。健康第一だもんな。じゃあ、一緒に行こうぜ」

「はい」

 そう返事をして、中学生に向かって少し、申し訳なさそうに言う。

「僕これから先輩と学食に行くから」


 内藤君は中学生達に別れを告げると、僕らの方へやってきた。なんで?

「どうしたのさ、内藤君」

 不思議で仕方が無い。君はなんで当たり前のようにこっちに来たんだ。一緒に友達と何処かに行こうとしてたんじゃないのか。


「遠藤先輩と約束してたので。今日、一緒に学食に行くって」

「そうそう。俺達は仲良しこよしだからな。学食で昼飯を食べるくらい、当たり前だろう?」

 常識だろ、と言わんばかりの口調だ。

 ここ数日で二人は仲はかなりよくなっていた。同好会が終わったあとも二人で何処かへ遊び行くことがあるし、日曜日には内藤君が遠藤の家に遊びに行ったみたいだ。

 なんだろう。内藤君が遠藤と一緒にいるのは、怖いもの見たさみたいなものなのだろうか。そうでなくちゃ説明がつかないような気がする。


「まあ、ともかく飯喰いに行こうぜ。腹が減ってしょうがない」

 遠藤は一人で学食へ向かっていった。内藤君がその後を追いかける。


 僕の疑問なんて些細なものだし、どうでもいいか。


 僕も二人を追いかけ、学食へ向かう。





 僕は弁当。遠藤はカツカレーとかけうどん。内藤君は醤油ラーメン。まあ、なんというか、カツカレーとうどんっていうのはボリュームがありすぎると思う。

「本当はさ、カツカレーうどん定食ってのを喰ってみたいんだよ。でも、ここの学食にそれはないんだよな。残念な事に。だから妥協してるんだ。俺は」

 遠藤は不満そうにカツカレーを頬張る。

「あのさ、カツカレーうどん定食ってのは初めて聞いたけど、カツカレーとうどんの定食のことなんだろ?だったら、それでいいじゃないか」

 目の前にあるカツカレーとうどん。それで十分、遠藤の要望には答えられていると思う。


 遠藤は「わかってないなあ」と言うと、水を飲みながら言った。

「カツカレーうどん定食は『カツカレー』と『うどん』の定食じゃないんだよ。『カツカレーうどん』と『ご飯』の定食なんだ」

「は?カツカレーうどん?」

 そんなの、この世の誰が食ったことあるっていうんだ。

 

 僕は想像する。多分、カツカレーうどんとはカレーうどんにカツが乗っているのだろう。

 そして悲しい気分になった。

 本当に遠藤はそんなものが食いたいのか、と。

 カレーうどんの汁を吸って、カツの衣が湿気てしまうのは目に見えている。しかも、その湿ってカレーの味のしみこんでいるカツは、多分ご飯と一緒に食べるんだ。

 だったらカツカレーでいいんじゃないか?カツの衣が湿って美味しいことなんて、まず、ありえない。僕はそう思う。


「先輩、それって美味しいんですか?」

 内藤君も疑問に思っている。というか、そんなメニューがあるのだろうか。

「なあ、アキラ。俺が不味いものを好き好んで食う男だと思うか?」

「でも、見たことも聞いた事ないし」

「あのな、カレーうどんの汁がカツに染み込むだろ。そのカツを山盛りのご飯で食べるとな、なんとも言えない味が口の中に広がるんだ。しかもカレーうどんは素でうまい。こんな最高の組み合わせ、美味くなかったら嘘だろう……まあ、俺も話だけで喰った事無いんだけどね」

「なんだよ、出鱈目か。そもそもさ、湿った衣って不味いじゃないか」

「嘘じゃねえよ。カツカレーうどん定食、絶対美味いから。美味くなかったら俺は腹を切るね。そうそう、クリームシチューうどん定食というのも世の中にはあるらしいぞ」

「そっちはもっと不味そうだ」

「英志、それは偏見ってヤツだよ」

「僕もあんまり美味しくないと思います」

「アキラ……俺は悲しいよ……」

知る人ぞ知る、カツカレーうどん定食。

ちょっといい機会なので使わせてもらいました。

他の小説でもちょくちょく出すかも。


いつかは俺も食ってみたいな。カツカレーうどん定食。

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