表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒーロー  作者: 山都
第三章 日常と非日常
49/97

初陣 1


 


「ハハッ!ハハハハハ!」

 薄暗い車内で、白衣を着た男が笑っていた。

 目の前のパソコンの画面の光が男の顔を照らしていた。それ以外の光は無い。


「最高だ!思ったとおりだ!やはり、陣内博士は完全な成功体を持ち出していたんだ!」

 青白い光に照らされる男は笑う。画面に映る黒い装甲でその身を変えた少年を見て、笑う。

 男は感情を撒き散らすように叫ぶ。


「来るべき闘いの為の力!醜い化け物どもを皆殺しにする為の力!陣内博士が創り上げた最強の力!ああ、そうだ。久坂英志、君こそが人類の英雄(ヒーロー)だ!」

 一ノ宮敦の表情は、酷く歪んだ狂気に溢れていた。





 僕の身体は、僕の身体ではなくなっていた。

 この状態を上手く形容する言葉が見つからない。

 判りにくくても簡潔に言うとしたら、僕はエニティレイターに「なった」。

 

 僕の身体は黒の装甲に守られている。でもそれは「装着」されているもじゃない。僕の身体の一部なんだ。

 腕や足、胸や腰周りの装甲の表層で、僕は風を感じる。それはただの防護服や鎧では絶対にありえない感覚だ。

 黒の装甲や背中のスラスターを「装着」しているんじゃない。僕の身体が装甲やスラスターに「なった」んだ。


 変な感じだ。自分の身体が、自分の身体じゃない。今までに無い感覚が全ての感覚を支配している。

 視力一つを取ってみても、かなりクリアだ。僕は元々目が悪いわけではなかったが、それでも違和感を感じるくらい、今の僕は視力が格段に上がっている。


 僕は狼の変異種と対峙する。 

 鼓動が強くなるのを感じた。この身体でも、心臓はあるみたいだ。

 心臓がポンプする理由。それは、恐怖であり、焦りであり、興奮だ。

 

 何て奴なんだろう、僕は。

 天月の命が掛かったこの状況で、ヒーローとなれた事に胸を高鳴らせている。


 狼の変異種が僕に突っ込んできた。

 速い。けれど今の僕はそれにちゃんと反応ができる。さっきは銃を撃つ事すらできなかったのに、狼の変異種の動きが見えていた。

 僕は腰に装備されている銃を両手に取る。そして引き金を何度も引く。


 反動をあまり感じない。今手にしている銃の性能がいいのか。それとも、このエニティレイターの身体の性能がいいからなのか。

 恐らくは後者だ。一ノ宮博士は、僕がさっき使った銃とエニティレイターの使う銃は同じだと言っていた。


 変異種は大量の弾丸を上へと跳ぶことで避けた。

 僕はそれを追って銃口を向けるが、狙いが定まらない。

 乱射を続けるうちに、銃の弾が尽きた。僕は太股あたりから代えのカートリッジを取り出し、両方の銃に装填する。

 

 ――あれ?どうして僕はここにカートリッジが内臓されているってわかったんだ?


 無意識のうちに行動していた。でも、太股にカートリッジがあるだなんて、僕は知らなかった。

 身体が勝手に動いていた。思考を介入せず、反射的に。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ