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ヒーロー  作者: 山都
第三章 日常と非日常
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下校 3

 僕が追いついたのを確認すると、天月は言った。

「彼、帰ったの?」

 彼とは多分、遠藤の事だろう。やっぱり、天月は僕に気を使ってくれていたんだ。

「うん。本当に内藤君に用事があったみたい」

「そう」

 相変わらず天月の返事は素っ気ない。

 まだ二日しか経っていないが、それが天月のいつもどおりなのだろうな、とわかる。

 よっぽどのことが無ければ感情を表に出さないし、長い言葉を喋ることも無い。  

「そういえばさ、天月さんってヒーロー物とか特撮、好きなの?」 

 多分そうなんだろうけど、他に話題も無いので聞いてみた。

 だが、天月の返答は僕の予想とは違った。

「懐かしかったから」

「懐かしかった?」

「小さい頃、観てたから。ああいうの」

 小さい頃と言うと、幼稚園くらいの頃だろうか。

 七歳の時からは訓練を行っていたと聞いたから、多分その時からは普通の生活を送れていなかったんじゃないかと思う。

 その頃に何があったか、聞いてはいない。聞いてはいけない事のような気がしていた。

 七歳から化け物を倒すための訓練をしているなんて、通常ではありえない。

「田上君は、なんで同好会に来ているの?」

「え、何で?」

 天月から質問が来るとは思っていなかったので、僕はそれに対して疑問で返してしまった。

「彼、私の事を観察しているみたいだったから」

 観察とは天月らしい言い方だ。

 本当はただ見とれていただけだと思うけど。

「気のせいじゃない?」

「そう?あなたも観察されていたけれど」

 それはきっと、僕と天月の関係が親密なものなんじゃないかと疑ってたからだろう。

 けれど天月にそんな事を言うのはちょっと恥ずかしい。

 僕はもう一度、気のせいだよ、と言って誤魔化した。

 僕らは無言のまま道を歩いていく。

 高級住宅街には何台もの外国の車が沢山駐車されていた。油断したら盗難とか起きそうだ。

 僕らは高級住宅街を通り抜け、川原へと着いた。

 黒いキャンピングカーは昨日と同じ場所にあった。

 それは薄暗くなった辺りと同化している。何も言われなければ、それがそこにあるとは気がつかないだろう。

 天月は昨日と同じように黒いカードを通してパスワードを打ち込むパネルを出現させる。パネルを操作すると、小型のカメラを起動した。天月はそれに顔を近づける。昨日は気がつかなかったが、多分網膜認証をしているんだと思う。

 小さい電子音が鳴り、キャンピングカーの後ろの方にある扉が開いた。天月は車内へ入っていき、僕もそれに続く。

「やあ、来てくれたんだね。久坂君」

 その声の主は髭と髪を無造作に伸ばした、一ノ宮博士だ。

 昨日と比べて、目の下の隈がさらに目立っていた。あまり寝ていないのだろうか。

 一ノ宮博士の口調は優しかった。

 昨日の、帰り際のあの吐き捨てるような言葉とは全然印象が違う。

 というか、昨日の帰り際がおかしかったのか。あの時だけは、僕を拒絶するような感じだった。


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