下校 1
あっという間に時間は過ぎていった。
時間は六時。帰るには丁度いい時間だ。
僕らは部室の鍵を閉めて、校門へと向かう。
「じゃあな、アキラ。それに天月……って、なんで英志までそっちにいるんだよ」
帰り際に遠藤が言う。
やっぱり、スルーしてはくれなかったか。
僕の家は遠藤と同じ方向だ。駅を使っている田上君とも一緒。
けど僕はその反対側の、天月や内藤君と同じ方向に行こうとしていた。
「えっと、父さんと待ち合わせしてるんだ。今日は外食だから」
嘘だ。
外食の予定なんてないし、父さんと待ち合わせなんかしてない。
「ふぅん、待ち合わせねぇ」
「何だよ」
「いや、二日連続で天月葵と一緒に帰るのは偶然なのかと思ってただけだよ。気にすんな」
「偶然だから。遠藤こそ気にしないで」
本当は偶然じゃない。
でも理由を説明するわけにはいかない。
さっき、天月に言われた。
一ノ宮博士がもう少し僕の身体を調べたがっているそうだ。なんで身体を調べるのか、その理由は教えてくれなった。
誤解を産みそうな言い方をするなら、今日も天月の家に行く。
あの真っ黒で怪しげな、キャンピングカーに。
「そうか。まあ、責任とらなきゃならなくなるような事はするなよ。じゃあな。帰ろうぜ、田上」
「ああ。久坂、信じてるからな」
田上君が僕を睨んだ。
安心して。君達が思ってるようなことは絶対に起きないから。
じゃあね、と二人に告げてその直後。
「あ、そうだ。今日は俺もそっちから帰らなきゃいけないんだ」
と、遠藤が唐突に口を開いた。
大人しく帰れよ、お前。
「だからさ、僕と天月さんはなんの関係もないって言ってるじゃん」
遠藤が何でそんな事を言い出したか、そんなのすぐにわかる。
遠藤は僕と天月が一緒の方向に帰るという、その本当の理由が知りたいのだ。
僕の言う事が嘘だと見抜いているだと思う。
多分、遠藤は僕が父さんと待ち合わせをしているっていう証拠が手に入るまで僕らと一緒にいるだろう。
そんな事をされたら困る。
下手したらあのキャンピングカーまで着いてこられて、色々と面倒だ。
「いや、別にお前と天月の関係も興味はあるけど、違うんだよ。俺、アキラに用があるんだよ」
「僕、ですか?」
「内藤君に用って、今日会ったばかりなのに、何があるんだよ」
「うるせぇなあ。世の中にはな、お前には全く思いもしない超複雑なことが沢山あるんだよ。だから俺はアキラと一緒に帰らなきゃならないの。お前と天月のデートを邪魔する気はないから、安心しろよ」
「だから、父さんと待ち合わせをしてるだけだから」
天月もいるってのに、そんな事を言わないで欲しい。
遠藤は恥ずかしくないかもしれないけど、僕は恥ずかしい。
天月に反応されたらどう責任をとってくれるんだ。
「デート?私と、久坂君が?」
心配した傍からこれだ。
「はは、悪い冗談だぜ。久坂」
田上君までそんな事を言い出す。
「全部、遠藤の気のせいだから。気にないで」
少なくとも、僕と天月が一緒に帰るのはデートだからじゃない。
遠藤だってわかっているくせに、騒ぎ立てるのは、ちょっと、いや、かなり止めて欲しい。
「ハハハ、満更でもないくせに。英志は照れてるんだな。ピュアな男はモテるぜ」
「黙れよ」
「……いや、悪かった。言い過ぎた。俺が全面的に悪い。謝るから許してくれ」
遠藤の口調はふざけている様だが、こう言うのは本当に反省している時だ。
まあ、反省しているんだったら、いいかな。
ただ、それがいつまでも続くわけではないけれど。