部室 1
入部届けの紙を貰った僕達は、部室へと向かった。
校舎を出て、グラウンドの側を通る。
まだ授業が終わってそれほどの時間がたっていないというのに、グラウンドではいくつかの部活が準備を始めていた。
五月にはどこの部活も大きな大会があるらしい。
それは三年生にとって最後の大会だったり、その一つ前の大事なものだったりする。
だから、きっといつも以上にやる気が出ているんだろう。
「僕達がいつも使ってる部室は、ここの三階にあるんだ」
僕は目の前の建物を指差し、言った。
僕達の部室は、校舎とは離れた場所にある。
他の部活や同好会の部室もそこにあって、合計で四十の部活および同好会が使用していた。
それはプレハブで大した作りではないのだけれど、何故か四階建てで、妙に巨大だ。
横幅もなかなかに長くて、校舎の半分くらいの大きさはある。
これを建てるように命じたのは校長らしい。
やはりこれも、「部活くらいは自由に」という配慮なのだろう。
校長はこの学校を進学校にしたいのか、部活が盛んな学校にしたいのか、あまりよくわからない。
「一階には男子の運動部がいて、二階は女子の運動部が使っている。三階は文化部が使っているんだ。僕達の同好会がある四階は、よくわからない不思議な部活がたくさんあるよ」
黒魔術同好会とか、人工知能製作同好会とか、キャッチボール同好会とか。
正直、僕からしてみれば何がしたいのかよくわからない。
「他の人から見たら、ヒーロー同好会もよくわからない不思議な部活なんじゃなないんですか?」
「そこは、気にしない方向でいこうよ」
痛いところをついてくる。
中学生の彼は自分の思った事をつい口にしてしまう。
多分、まだ自分を抑える事に慣れていないんだと思う。
内藤君は納得しきっていないような表情で、僕を見てきた。
「軽蔑するような目で見なくてもいいじゃない」
そんな、露骨な表情をしなくたって。
僕の言葉を聞き、内藤君は言った。
「……してませんよ」
いや、しているだろ。口調は。
僕達はプレハブの建物のドアを開けた。
そして、入って直ぐのところにある階段を上る。
僕達の他にも、すでに何人もの生徒が部活の準備、もしくは活動をしていた。
この学校は進学校だってのに、何でこんなに部活が盛んなのだろう。