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ヒーロー  作者: 山都
第三章 日常と非日常
33/97

内藤光 1

久しぶりの更新です。

別の小説が終わったんで、ちょくちょく更新できると思います。

 あっという間に一日が過ぎていく。

 気がつけばもう六時間目が終わり、帰りのホームルーム最中だ。

 昨日や一昨日に密度が濃い時間を過ごしていたから、より一層、学校が終わるのが早く感じる。

 

「起立」

 日直の笹倉さんが号令をする。

 特に何事も無く、ホームルームが終わった。

 これで、今日の授業は全て終わり。

 僕はなんて味気ない毎日の繰り返しを送っていたのだろう。

 昨日や一昨日のことを考えれば、全てが馬鹿馬鹿しく思えてくる。

 

 こんなことをやっている間にも、世界のどこかには変異種が人にまぎれて生活している。

 そいつらはいつ暴走しだすか、わかったもんじゃない。何人もの人が犠牲になるかもしれない。

 それなのに、そんな状況がどこかで起きているのかもしれないのに、僕らはこんなくだらない事で毎日を消費している。

 遠藤じゃないが、退屈で眠くなってしまう。


「よっしゃ。それじゃ、部活だ部活」

 珍しい事を遠藤が言った。

 部活というのはつまりヒーロー同好会のことなのだろう。

 遠藤がそれを楽しみに思う発言をするのは、かなり珍しい事だった。


「だってよ、クラスの謎の美少女転校生を間近で見放題なんだぜ。それやあ、誰だって楽しみに思うだろ」

 こいつの思考回路が中々下らないのだと言う事を僕は忘れていた。

 遠藤が浮かれてる時は、大体そんなものだ。

「ねえ、遠藤君。あなた、掃除当番なんじゃないの?」

 笹倉さんが言った。

 そういえばそうだった。遠藤は今日、掃除当番だった。

 笹倉さんもそうだった気がする。


「えー、でも今日は美少女転校生天月葵さんとのデートが……」

「何がデートよ。馬鹿馬鹿しい。あの子はそんな事これっぽちも思ってないわよ」

「いや。思ってるね。心のどこかで俺と一緒の個室にいれることを期待している。俺にはわかる。これは確信と言ってもいい。女心と春の空、というだろう?そんなのもわからないなんて、お前は女子高生失格だな」

 どこから突っ込んでいいのかわからなかったが、とりあえず「女心と秋の空」と遠藤は言いたかったのだろう。

 なんで間違える。


「そうだ。英志、お前代わってくれよ。明後日の掃除当番お前だろ。俺が明日やるからさ」

「え、嫌だよ。面倒くさい」

「そう言うなよ。美少女転校生と俺の幸せな一時のためだからさ。あ、田上もいたな。美少女転校生と俺と田上のためだ。マジ、頼むよ」

「それ、田上君関係なくない?」

 遠藤が幸せな時間を過ごそうが過ごすまいが、田上君にはどうでもいい事だろう。

 というか、遠藤がいないほうが田上君的には嬉しいんじゃないだろうか。

 

「何、馬鹿なこと言ってるのよ。あなたが掃除当番なんだからね」

「えー、勘弁してよ美由紀」

 遠藤は笹倉さんに引っ張られて掃除用具入れへと向かっていった。


「久坂君」

 突然、僕の後ろから天月の声が聞こえきた。

 僕はびっくりして身体をビクつかせてしまった。


「どうしたの?」

 天月が不思議そうに聞いてくる。

 君があまりにも気配を感じさせないで背後に立っていたからだよ、とは言えなかった。

 というか、もしかしてさっきのやり取りを聞いていたのだろうか。

 そうだとしたらちょっと気まずいような感じがする。

 いや、僕が気まずくなる理由は無いんだけど。

 

「さっきの話、あまり聞いてなかったけど。同好会、行くの?」

「……天月さんさ、もしかして相手の心とか読めたりする?」

 僕はついそんな事を口走ってしまう。

「そんなことないけど。なんで?」

 天月は律儀にもそれに答えてくれた。

「いや、ゴメン。ちょっと思う事があって」

 僕は適当に誤魔化した。

 しかしなんだ、相変わらず天月は何を考えているのかわからない。


「今日、同好会ってあるの?」

 天月が聞いてきた。

「もちろんあるよ。もし面倒だったら、来なくてもいいけど」

 正直、天月がヒーロー同好会に入ってくれた理由がイマイチ理解できなかった。

 本物のヒーローが、造り物のヒーローを観たがると言うのはあまりしっくりこない。

 だが他に理由が思いつかない。けれど、天月がヒーロー番組なんて観たがるのだろうか。

 僕が誘ったから、流れで承諾しただけなんじゃないのだろうか。


 もしそうだったら無理に同好会に連れて行くのは気が引けた。

 天月も楽しくないだろうし、僕はあまりそういうことはしたくない。

 田上君には悪いけど、天月がヒーロー同好会で活動をしたくないのなら、それでもよかった。

 僕らは結局、頭数さえそろっていれば存続できるから。

 遠藤のことは知った事ではない。どうでもいい。


「じゃあ、行くわ。部屋まで案内してもらえる?」

 以外にも天月は乗り気だった。

 本当にヒーロー番組が観たいからだけの理由でヒーロー同好会に入ったのだろうか。


「おーい英志。お前にお客さんだぞ」

 遠藤の声が聞こえてきた。

 教室のドアのところで、モップを片手に僕に手を振っている。


「ゴメン天月さん。ちょっと待ってもらっていい?」

「ええ。構わないわ」

「ありがとう」

 僕は遠藤の方へと向かう。誰だろうお客さんって。


「この中学生がヒーロー同好会に入りたいんだとよ」

 そう言って遠藤が紹介してきたのは、ちょっと痩せ気味な男子生徒だった。

 上履きには「内藤」と書かれていた。

「こいつは英志な。俺達のボスだ。情けなさそうだろう。実際、情けない。少年漫画や熱血アニメなら間違いなく主人公にならないタイプだ」

 遠藤は僕の事を紹介しているんだろうか。

 適当すぎる。

 というか、まともに紹介できてない。


「は、はじめまして。僕、二年D組の内藤光(ないとう あきら)です。えっと、ヒーロー同好会に入りたいんですけど」

 内藤君が言った。

「おい、英志。こいつからはあお前と同じ匂いがするぞ」

 気のせいだろう、と言ってやりたかったが、確かになんとなく僕と似ているところがあった。

 主に喋り方とか。

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