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ヒーロー  作者: 山都
第三章 日常と非日常
32/97

翌日




「やあ、英志君。昨日は楽しかったかい? 天月さんとのデート」

 授業中だって言うのに、遠藤は騒がしい。

 というか、この話題は今日で五回目だ。

 しつこい事、この上ない。


「だから違うって」

「ほう、だったら二人で何をしてたか教えてくれよ」

「いや、それは……」

 言える訳が無い。

 変異種の事は一般人には秘密らしい。

 そんなものの存在を公表してしまったら、混乱が起きるだけだ。

 僕も他人に昨日の事を言わないように、口止めされていた。


 それに、言ったって多分信じてくれない。

 だって、赤い豚と遭遇した話をした時、「妄想癖」の一言で片付けられてしまったんだから。

「『言わない約束だから』ってか? 二人だけの秘密ってか? 一体何があったんだろうなあ。人には言えない、つまりはそういう事が起こっていたわけだ」

「そういうことって、何だよ」

「ピュアな俺が口にするには過激すぎるぜ」

 遠藤は自分の何をもってしてピュアと言い張っているのだろう。


 今は情報の時間だった。

 黒板には、パソコン用語がいくつも並べられている。

 担当している先生は今日この学校に赴任してきたばかりの先生だった。

 なんでも、情報の担当だった先生が、いきなり学校を辞めることが決まったらしい。

 僕達には家庭の事情、としか説明されなかった。

 まあ、それ以上を知ってもどうしようもないだけど。


「それにしても、つまんねーよなぁ」

 遠藤が大きな欠伸をした。

 一応軽く注意するが、僕も心の中ではそう思っていた。

 どうせすぐ忘れてしまうような単語を大量に覚えさせられ、しかもそれらは日常生活では二度と使わないような単語ばかりだ。

 なんというか、やりがいを感じれなくて、僕も欠伸をしたくなってしまう。


 黒板を見るのに飽きた僕は、視線を天月に移した。

 他の生徒が机に突っ伏したり雑談をしている中、天月は真面目に授業を聞いていた。

 姿勢よくノートを書き写し、先生の話に耳を澄ましている。


「愛しの彼女は」

「だからそんなんじゃないって」

「最後まで言わせろよ」

「違うって言ってるだろ」

 最後まで聞かなくても、遠藤が何を言いたいのかは大体わかる。

 伊達に長い事付き合っているわけじゃない。

 

「ああ、つまんねーなぁ」

 窓の外を見て、遠藤が独り言を呟いた。 

 グラウンドでは中学二年生が体育をしていた。

 今は、サッカーの時間なのだろう。

 リフティングに挑戦している中学生が何人もいた。

「でも、つまんねーってことは平和って事なんだよなぁ。だったら、何か大変な事が起きて忙しくなるよりも、つまんねー方がいいのかもしれないなぁ」


 僕達は平和に暮らしている。

 それは変異種という敵を倒してくれる人がいるからだ。

 毎日普通に生きていけるのも、毎朝ご飯が食べれるのも、授業がつまらなくて欠伸が出るのも、全部、天月のお陰だ。

 

「ま、そんなことはどーでもいいんだけどよ。眠いし。じゃあ、俺寝るわ」

 などど言いながら、遠藤は机に突っ伏した。

 それにつられて、僕も寝る事を決めた。

 天月はと言うと、やはりよい姿勢のまま、授業を聞いていた。

 

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