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第1話 観測不能領域(エラー・セクター)

――銀河辺境宙域、第七輸送航路。




宇宙は、静寂ではなかった。


音が無いだけだ。




だが確かに、

そこには“軋み”があった。




視認できない亀裂が、

星々の裏側をゆっくり走っている。


光点が瞬くたび、

観測結果が一瞬だけズレる。


距離が歪む。

時間が遅れる。




それは誤差ではない。


――前兆だ。






その歪みの中心。


一隻の輸送艦が、

静かに航行していた。




銀河警察輸送艦オルフェウス




白銀の外殻。


最低限の武装。




積載されているのは、

医療データ、

補給物資、

生命維持装置。




“守るための船”。


だからこそ――狙われる。






艦橋。




「重力異常検知!」


「歪曲反応、急速接近!」




警報音。


ノイズ。


赤く染まるスクリーン。




「通信途絶!」


「外縁センサー応答なし!」




見えていた星図が、

一つずつ“消えていく”。






艦長が低く息を吐いた。




「……来たか」




その声に、

恐怖はない。


あるのは覚悟だけだ。




「ジャドーめ……」






銀河犯罪帝国ジャドー。




秩序の外側に存在する“侵食”。


法は通じない。


倫理も存在しない。




あるのは、

奪うという“機能”だけ。






メインスクリーンが歪む。




像が崩れる。


色が抜け落ちる。




そして。




黒い“裂け目”が現れた。




それは穴ではない。




“宇宙が、

そこだけ間違っている”。


そんな異常。






「空間断裂――正面出現!!」




――開いた。






音は無い。




だが、

それは確かに“爆発”だった。




光でも闇でもない。


ねじれた虚無が、

現実を押しのけて広がっていく。






その奥から、

ゆっくりと姿を現す。






ジャドー戦闘艇。




骨のように鋭利な装甲。


脈打つ赤黒い光。




機械でも、

生物でもない。




“存在の形だけを模倣した何か”。






その瞬間。




艦橋から、

音が消えた。




絶望が、

音より先に到達する。






「戦闘配置――」




命令は最後まで届かない。






圧。






空間そのものが、

艦を“潰そうとしていた”。






ギィィィィィ――――ッ!!




金属が悲鳴を上げる。


艦体が軋み、

内部構造が捻じ曲がる。






「重力場、再構成!?」


「違う……これは……!」




オペレーターの顔が青ざめる。




「“邪空領域”……!」






世界が、裏返る。






星が遠ざかる。




違う。




“遠ざかったように、

書き換えられた”。






現実が侵食される。




――邪空領域。






そこは空間ではない。




“支配されたルール”。




距離は意味を失う。


時間は固定されない。


因果すら保証されない。




ただ一つ。




敵だけが“正しい”。






その瞬間。


通信回線が侵食される。




『――無駄だ』






声ではない。




命令。




直接、

脳へ刻み込まれる。




『この領域は、

既に我らのものだ』






照明が落ちる。


赤い非常灯だけが、

脈打つように点滅する。






艦体が軋む。




内側から。






「構造限界!」


「持たない――!」






潰れる。


消える。


終わる。






――その直前。






「こちら銀河警察特務航行部――ステラ。応答を」






鋭い声が割り込む。




冷静。




だが、

その奥に焦りがある。




「撤退ルートを提示する!

今すぐ離脱を!」




「無理だ……!」






間に合わない。




誰もが理解していた。






ステラは目を閉じる。




一瞬。




そして、開く。




「……想定以上ね」




感情が切り捨てられる。






その時。


別の声が混ざった。




「……ジャドーか」






低い。




短い。




だが、

空気が変わる。




――来る。










邪空領域・中心。






時間が歪む。




伸びる。


折れる。


巻き戻る。




それでもなお、

“進もうとする力”だけが残る。






その中心で。




光が、“落ちた”。




「――析出」








装甲が、現れる。




頭部。


黒い横長スリット。




その奥――




エメラルドグリーンの双眼が点火する。






胸部発光。


ライン形成。




全身が、

“存在として完成していく”。






アーク。




誕生。






その瞬間。


邪空領域が、

初めて“拒絶反応”を起こした。




支配された空間に、


“書き換えられない存在”が現れた。






『……未知存在』






だが、

もう遅い。






アークは、

既にそこに立っている。






ただ、それだけで。




歪んでいた空間が、

わずかに正常へ戻っていく。




まるで宇宙そのものが、

彼を基準に再構築されるように。










銀河探偵アークが、

エンゲージギアを析出するタイムは――


わずか0.07秒に過ぎない。


では、

析出プロセスをもう一度見てみよう。










「――析出」




『――了解』






次の瞬間。




宇宙の“外側”から、

膨大なエネルギーが流れ込む。






大マゼラン銀河。




星々の死と誕生を繰り返す、

超巨大エネルギー圏。




その“星の記憶”が、

距離という概念を無視して到達する。






アステリオンが、

それを喰らう。




「星間エネルギー、

吸収率限界突破」




「増幅ユニット、

全基起動」






内部でエネルギーが暴れる。




光でも熱でもない。




“存在そのもの”が、

圧縮されている。






――スパーク。






閃光。




白い爆ぜ。




砕けたエネルギーが、

再編される。






「変換開始」






荒れ狂う力が、

“意味”を持ち始める。




「位相固定」


「出力安定化」


「変換率――臨界」






そして。




「――成型ユニット、接続」






空間に輪郭が現れる。




人型。


装甲。


機構。




それは作られているのではない。




“最初から存在していたもの”を、

取り出している。






「エンゲージギア――形成完了」






「――電送します」






光が弾ける。






収束した全てが、

一点へ落下する。






千道司凱。






まだ変身していない、

ただの人間。




だが、

その存在へ。




宇宙規模のエネルギーが直撃する。






邪空領域が反応。




圧殺。


消去。


概念崩壊。




全てが襲いかかる。






だが――




間に合わない。




光の方が、

先に到達している。






「――銀河探偵」






声。




それは凱のもの。




だが同時に、

既に別の存在の響きを帯びている。




「――――アーク」






その瞬間。




世界が、確定する。






蒼白い粒子が爆ぜる。




装甲形成。


双眼点火。


胸部発光。




全身完成。






アーク。




誕生。






0.07秒。




それは、

人類には“存在しない時間”。




だからこそ。




彼は、そこにいる。






ジャドーの圧縮が発動。




概念消去。


断裂。


空間圧殺。




全て。




当たらない。






当たる前に、

位置が存在しない。






一閃。




アステラカリバーが振るわれる。




――結果が先に存在する。






邪空領域の一部が、

“なかったことになる”。




支配が揺らぐ。






初めて。




敵が後退した。




『……危険度、再評価』






遅い。






アークは、

もう次にいる。






光が収束する。




縦。




一直線。




「――アークダイナミック」






振り抜く。






その瞬間。




宇宙が停止する。






一秒未満。




だが確かに、

“全てが止まった”。






そして。




崩壊。






邪空領域が砕け散る。




距離が戻る。


時間が戻る。




世界が、

“宇宙”へ帰還する。






『……撤退』




影が溶ける。






静寂。




今度こそ、

本物の静寂だった。






「……撃退、確認」




『領域安定化、完了』






だが。


誰一人。




“終わった”とは思っていない。






視線は一つ。




あの存在へ。






通信が開く。




「……対象確認」


「コードネーム付与」






一拍。




宇宙が、待つ。






「――銀河探偵アーク」






その名が、

“存在の定義”として刻まれる。






アークが、

初めて口を開く。




「――観測終了だ」






静かに、

断定する。




「お前はもう、

“存在しなかった”」






その言葉が落ちた瞬間。




空間の奥で、

軋みが走る。






それは――視線。






存在ではない。




だが確実に。




“こちらを見ている何か”。






――目が、開く。






ステラの呼吸が乱れる。




「……嘘でしょ」






アークは振り返らない。




ただ一言。




「――次が来る」






――まだ、始まっていない。




これは、

序章ですらない。

ここまで読んでくれてありがとう。


もしこの世界観やアークが少しでも刺さったなら、

ブックマーク・評価で応援してほしい。


この物語は、まだ“入口”に過ぎない。


――本当の敵は、この先にいる。

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