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嘘の世界1

線は動いている

作者: ハル
掲載日:2026/02/15

谷には、線が一本あった。


地面に引かれた白い線で、誰が引いたのか分からなかった。

消えもしないし、濃くもならない。

ただ、そこにあった。


谷の人は、ある日その線に気づいた。

線の手前と向こうで、何が違うのかは分からなかった。


土も同じ色で、空も同じだった。



誰かが線をまたいだ。何も起きなかった。

別の誰かもまたいだ。やはり何も起きなかった。


それでも、人は線の前で立ち止まるようになった。

考える人もいたし、数を数える人もいた。

線を踏まないように歩く人もいれば、わざと踏む人もいた。


線の向こうに行った人は、戻ってきた。

戻らなかった人もいた。


違いは、外からは分からなかった。



ある日、老人が線の上に座った。

長い間、動かなかった。夕方になっても、夜になっても、そこにいた。


次の朝、老人はいなかった。線だけが残っていた。


人は言った。

「越えたんだろう」


別の人は言った。

「越えていない」


どちらも確かめなかった。



それから、線は少しずつ場所を変えた。

動いているのか、谷が動いているのかは分からなかった。


昨日の線の位置を覚えている人はいなかった。


子どもが線を指さして聞いた。

「これを越えたら、大きくなるの」


大人は答えなかった。


線は今日もある。

越えた人も、越えていない人も、同じように歩いている。

ただ、ときどき、足の裏に、何かを踏んだ感じが残る人がいる。


それが線だったのかどうかは、誰にも分からない。


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