第4話 いつの間にか決まっていました
いきなりの出来事をすんなり受け入れるシャルル
天然、ポジティブなシャルルらしいですがw
最近、周囲の視線が変わった。
正確に言うと、
敬意が増えた。
「シャルル様」
「ご機嫌よう」
……様?
准男爵家の令嬢に「様」をつける人なんて、今までいなかったはずなのに。
私は朝の挨拶を返しながら、内心で首をかしげた。
「ローズ様、何かありました?」
一緒にいた先輩に聞くと、少し困ったように微笑まれる。
「ええと……シャルル嬢は、聞いていないの?」
…...嬢?
先輩のローズ様はいつも私の事をシャルルと呼んでいたのに...
「何をですか?」
そのときだった。
「シャルル」
聞き慣れた低い声。
振り向くと、エドワードがそこにいた。
相変わらず穏やかな表情。
でも、周囲の空気が一気に変わる。
「少し時間をもらえるか」
「はい」
連れて行かれたのは、応接用の小さな部屋だった。
扉が閉まる音が、やけに大きく聞こえる。
「突然で悪いが、確認しておきたい」
彼はそう前置きしてから、淡々と言った。
「君は、俺のそばにいるのは嫌か?」
……え?
質問の意味を考える前に、口が動いていた。
「嫌じゃないです。安心しますし」
事実だった。
最近は特に。
エドワードは、少しだけ表情を緩めた。
「そうか」
それだけで、何かを納得したらしい。
「では問題ない」
「……何がですか?」
私が聞き返すと、彼は少し不思議そうな顔をした。
「婚約の件だ」
……婚約?
思考が止まる。
「君の家には、すでに話を通してある」
「王家としても異論はない」
「学園内の扱いも変わるだろう」
一つ一つ、
まるで報告事項のように並べられる言葉。
「えっと……私、今それを初めて聞いたんですが……」
なんで、準男爵家の私と?
普通は、公爵家や侯爵家のご令嬢がお相手では?
そう言うと、エドワードは一瞬だけ目を瞬かせた。
「そうか?」
本気で不思議そうだった。
「嫌ではないと言っただろう」
……確かに言ったけど。
「それに、君が安全でいるためには、この形が最善だ」
理屈が、正しい。
声も穏やか。
怒ってもいない。
「手続きは済んでいる。
君は、今まで通りでいい」
今まで通り。
守られて、
静かで、
平穏な学園生活。
私は少し考えてから、笑った。
「……すごく手際がいいですね」
すると、彼は少しだけ笑った。
「必要なことをしただけだ」
その言い方が、
どうしてか少しだけ怖くて。
でも――
「よろしくお願いします、エドワード様」
そう言うと、
彼ははっきりと答えた。
「エドワードでいい」
距離が、また一つ縮まった気がした。
お読み頂きありがとうございます。
次回はシャルルの両親が登場します。
お楽しみに。




