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第19話 祝福という名の宣言

王太子視点です。


(王太子視点)


 その日は、王城の大広間がやけに華やかだった。


 貴族、王族、来賓。

 形式上は「親睦の宴」。


 だが実態は――

 婚約披露前の空気確認会。


シャルル嬢ですら、ただの親睦の宴としか思っていないようだ。


 俺は、嫌な予感しかしなかった。


「……エドワード」


 弟は、やけに落ち着いている。


 いつもより静かで、

 いつもより整った表情。


 この顔の時は、

 もう決まっている。


 乾杯が終わり、

 談笑が始まった、その時。


 エドワードが、前に出た。


「少し、時間をもらっていいだろうか」


 ざわ、と空気が揺れる。


 司会も確認もない。

 でも、止められる者はいなかった。


「皆に、

 正式に伝えておきたいことがある」


 シャルル嬢は、少し驚いた顔で彼を見る。


 やっぱり、まだ、何も聞いていない。


 ――最悪だ。


「俺は」


 出た。


 一人称「俺」。


「エドワード・グラニータは、

ここにいる准男爵家令嬢、シャルル・メリーズを、

 生涯の伴侶として迎える」


 拍手が起きかけて、止まる。


 エドワードは、続けた。


「彼女は、特別だ」


「弱く、危うく、

 だからこそ守られるべき存在だ」


 シャルル嬢が、きょとんとする。


 彼は、優しく微笑んだ。


「彼女が迷わないように、

 俺が進む道を決める」


「彼女が怯えないように、

 危険は俺が排除する」


 ……言い切り。


 願望じゃない。

 決定事項だ。


「彼女が自由だと感じられるように」


 ここで、王妃陛下が小さく息を吸った。


「俺が、すべてを整える」


「彼女を傷付ける者は、誰であろうと容赦はしない!」



 会場が、静まり返る。


 祝福の言葉は出ない。

 いわゆる独占宣言だ。


 シャルル嬢は、少し照れたように笑った。


「……ありがとうございます」


 否定しない。

 拒絶もしない。


 だから、拍手が起きた。


 遅れて、恐る恐る。

エドワードの友人の宰相子息や将軍子息も小さく拍手をしている。


幼なじみのルーカスは困った顔をしていた。


俺の婚約者である、ローズも俺を見ながらどうしていいか分からないようだ...




 止める理由が、なくなった。


壁際でメリーズ準男爵夫妻が、固まっている...





 宴の後。


 王族だけが集まる小部屋で、

 沈黙が落ちる。


「……で?」


 国王陛下が、重く口を開いた。


「止められると思う者はいるか」


 誰も、手を挙げない。


 王妃陛下が、静かに言う。


「シャルル嬢、幸せそうでした」


 それが、決定打だった。


 側妃殿下が、遠くを見る。


「……あの子、

 悪役の自覚が一切ないのが一番怖いのよ」


 俺は、苦笑した。


「愛だと信じて疑ってない」


「しかも、理屈が通ってる」


「誰も、論理で否定できない」


 国王陛下が、ため息をつく。


「……止められんな」


「止める理由が、ない」


 俺は、天井を仰ぐ。


「これはもう」


 王妃陛下が、結論を出す。


「檻を壊すより、

 檻の中が幸せであることを祈るしかない」


 その頃。


 エドワードは、シャルルの隣で微笑んでいた。


「うまくいったな」


「はい」


 彼女は、屈託なく頷く。


「みなさん、祝福してくれました」


 エドワードは、満足そうに目を細める。


「当然だ」


「俺の愛は、

 誰にも否定できない」


 その言葉を、

 誰も止めなかった。


 止められなかった。


お読み頂きありがとうございます。

遂に婚約宣言しちゃいましたね。

次回もお楽しみに。

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