第1話 平穏な学園生活(だと思っていました)
ラブコメになります。
準男爵令嬢シャルルと、側妃第2王子のエドワード
初めは静かな出会いから始まります。
貴族学園での生活は、私にとってとても平穏だ。
毎朝決まった時間に起きて、少し古い制服に袖を通し、教室へ向かう。それだけで、今日も一日が始まる。
准男爵家の令嬢という立場は、正直あまり強くない。
だから最初は、学園生活も肩身が狭いものになると思っていた。
でも、現実は少し違った。
「シャルル、今日の課題はもう終わった?」
「はい。先輩のおかげで、だいぶ理解できました」
声をかけてくれたのは、公爵家のご令嬢である上級生の先輩だ。
どうして私なんかに、と最初は不思議だったけれど、今ではすっかり慣れてしまった。
──たぶん、運が良かっただけだと思う。
そう考えている間に、背後からひそひそとした声が聞こえてきた。
「……また、上級貴族に取り入ってるわ」
「准男爵のくせに、生意気よね」
ああ、これもいつものことだ。
私は落としかけた教科書を拾いながら、首をかしげた。
もしかして、さっき私、何か失礼なことをしてしまったのかな?
「シャルル」
柔らかい声と同時に、影が私の前に落ちる。
「彼女に何か用事があるのなら、正式な場でお話しなさい」
先輩はにこやかに微笑んでいたけれど、その場の空気は一瞬で凍りついた。
先ほどまで私を睨んでいた令嬢たちは、何も言わずに視線を逸らす。
「ありがとうございます、先輩!」
私は素直に頭を下げた。
本当に、親切な人が多くて助かる。
そのときだった。
少し離れた廊下の向こうで、こちらを見ている人がいることに気づいた。
王族の制服。銀色の髪。穏やかな表情。
──エドワード・グラニータ王子殿下。
なぜか、視線が合った瞬間、胸の奥がひやりとした。
王子は、ほんの少しだけ口元を緩める。
まるで、私の存在を確かめるように。
「……?」
不思議だな、と思いながら、私は小さく首を振った。
きっと、気のせいだ。
今日も平穏な学園生活は続いている。
──王子が、少し怖い気がすることを除けば。
お読み頂きありがとうございます。
次回からエドワードの静かな暴走とシャルルの周りの変化が描かれます。




