1話 話しかけた理由
俺は佐藤一どこにでもいるごくごく普通の高校一年生だ。平均身長平均体重平均的な学力。どれを取っても普通だ。そんな俺だが、一つだけ人とは違う特別なことがある。それは俺の隣の席に陰キャギャルがいることだ。彼女の名前は根暗茜さん。金髪でスタイル抜群のギャルだ。でも、彼女が唯一他のギャルと違うのは、陰キャだということだ。ギャルちゃんとは英語の授業でペアワークをする程度しか関係はないのだが、俺はギャルちゃんと仲良くなりたいからペアワークの際には楽しそうにしているようにしている。と言っても、ギャルちゃんの声は周りのみんなの声に掻き消されほとんど聞こえていないのが悲しいところだ。
ある日の放課後、いつもは誰よりも先に帰るはずのギャルちゃんがまだ帰っていなかった。俺は先生の手伝いをしていて部活に行くのが遅れており、教室には俺とギャルちゃんしかいなかった。俺が部活に行く準備をしていた時、消え入りそうな声が聞こえてきた。
「あ、あの……ちょっと、いい……?」
俺は最初この声がギャルちゃんのものだとは思わなかった。授業中も全然声が聞こえなかったから、隣のクラスから聞こえてきた声なのかなと思ったのだ。でも、ギャルちゃんが体をこちらに向けて俯いていたからギャルちゃんが言ったのかなと思い聞いた。
「俺に言った?」
俺が聞くとギャルちゃんは頷いた。俺は初めてギャルちゃんに話しかけられたことに心拍数が爆増した。でも、そんな様子を表に出すわけにはいかないと自制し、平常心を装いながら答えた。
「いいよ。何でも聞いて」
俺がギャルちゃんに言うと、ギャルちゃんは少しまじまじしながら言った。
「わ、私……と、お、お友達になって……くれませんか?」
俺は心の中で大歓喜した。クラブにいるパリピぐらいテンションが上がった。隣の席の女子に話しかけられて、さらに友達になって欲しいなんて言われたら期待しない方が男子高校生には無理だろう。俺は心の中で一旦喜んでからすぐに返事をした。
「もちろん。よろしくね根暗さん」
俺は下心を隠しつつ言った。
「よ、よろしくお願い、します……えっと、佐藤君」
俺たちが挨拶をした時、外から各部活が始まる時の掛け声が聞こえてきた。その声は野球部で一番早く始まる部活だったから俺は急がないとと思い教室を後にしようとした時、ギャルちゃんが言った。
「あ、あの……ラ、ライン交換して、くれませんか?」
俺は急いでいながらもケータイを取り出しラインを開いた。そして、QRコードを表示しギャルちゃんに読み取ってもらった。
「あ、ありがとうございます」
「いいよいいよ。それじゃあ俺部活行くから。また明日!」
俺が教室を出る時ギャルちゃんがまた明日と言ってくれた気がした。俺は急いでいながらもその言葉を聞けてテンションが上がった。俺はバスケ部に所属しており、その日の練習はいつも以上に調子が良く顧問とキャプテンから褒められるほどだった。部活が終わり家に帰ってシャワーを浴びベッドの上でゴロゴロしていた時、ラインの着信がきた。俺は誰だろうと思いケータイを見ると、そこには根暗茜と書かれていた。俺はまさか友達になって初日に電話が来るとは思っておらず動揺した。動揺していたが、とりあえず電話に出ることにした。
「もしもし」
「あ、佐藤君で……ま、間違いないですか?」
「そうだよ。どうしたの?」
俺は動揺を隠しつつ優しく問いかけた。すると、ギャルちゃんは少し黙ってから答えた。
「あ、あの私……佐藤君以外話せる人がいなくて……そ、それでどうやったらお友達ができるのか教えて欲しくて……」
俺はまさかの質問に考え込んだ。どうやったら友達ができるのかなんて考えたことがなく、回答に悩んだ。しばらく俺が考えているとギャルちゃんが言った。
「きゅ、急にこんなこと聞いちゃってごめんなさい……そ、それじゃ……」
「ちょっと待って!」
俺はギャルちゃんが電話をかけてくれたせっかくのチャンスを逃すほど甘くはなく、全力でギャルちゃんを止めた。ギャルちゃんは俺の声に驚いたのかぴゃっという変な声を上げた。
「ご、ごめん驚かすつもりはなかったんだ」
「い、いえこちらこそ、急に電話して急に切ろうとするなんて、失礼なことをして申し訳ないです……」
俺たちの間に妙な静寂が訪れた。俺はその静寂を切り裂くようにギャルちゃんの質問に話を戻した。
「さっきの話なんだけど、根暗さんは友達ってどんなものだって思ってる?」
「え、えーと……一緒に話したりするって感じ? だと思います……」
「そうだよね。だから、俺と根暗さんは友達。なら、他の人にも俺に話しかけてくれた時みたいに話しかけてみたらどう? 多分根暗さんと話したい人いっぱいいると思うよ」
「ふぇ!?」
俺の言葉にギャルちゃんは聞いたこともない声を上げた。その声に思わず笑みがこぼれた。すると、ギャルちゃんは少し怒ったように言った。
「も、もう笑わないでください!」
怒っているのだろうが、節々に庇護欲を掻き立てられるような儚さがあった。頭をヨシヨシしたり抱きしめてあげたくなるような感じと言えば伝わるだろう。そんな感じがして俺は居ても立っても居られなくなり布団を抱きしめてその欲をおさめた。
「さ、佐藤君? どうしたんですか?」
ケータイからギャルちゃんの心配する声が聞こえてきた。俺は平静を装い答えた。
「何でもないよ。それより誰かと話すのが怖いとかだったら俺の友達と話す? それなら根暗さんも安心でしょ?」
「わ、私なんかが話してもだ、大丈夫ですかね……?」
ギャルちゃんの心配そうな声に心がギュッとなる感覚があった。俺はそんなギャルちゃんを安心させるように言った。
「大丈夫だって、みんな優しいからきっと親しくしてくれるよ」
「そ、そうですよね……佐藤君のお友達だから、優しいですよね……」
「何も心配することはないよ。根暗さんはもっと自信を持っていいぐらいだよ。その方が周りの人に話しかけやすくなって、向こうも話しかけやすくなるから」
「うぅ……わ、私には……」
否定的なギャルちゃんに何か事情があるのかなと思ったが、それより今はギャルちゃんに自信を持ってもらうことの方が重要だと感じ言った。
「それじゃあ俺の友達と話して自信つけようよ。まずは自信をつけるのが第一歩だよ」
「そ、そうですね。私頑張ります」
「それじゃあまた明日」
「は、はいまた明日」
ギャルちゃんとの通話が終わり俺は再び布団を抱きしめた。本当にギャルちゃんが隣の席で良かったと思った。このままギャルちゃんと仲良くなればいずれは付き合えるのではないかと思った俺は胸の高鳴りが抑えられなかった。
次回もお楽しみに




