民族の誇りとグローバリズムの両立は明日の国際社会の合言葉
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「「Ainova AI」を使用させて頂きました。
日本と李朝と中華王朝。
この三つの君主国が我が中華民国とも協調的な事は僥倖でありますが、周辺国との友好維持は依然として我が国の至上命題。
此度の中華王朝の和碩親王妃殿下との対談は、先の総統選で勝利した私にとって目下の重要事項なのでした。
「もう時間ですか、お待たせする訳にはいきませんからね。」
そう一言呟き、私は静かに立ち上がるのでした。
そんな私とは対照的に、来賓の和碩親王妃殿下は至って泰然自若とした御様子。
「石明姫大総統閣下、此度の御就任を心より御慶び申し上げます。」
豪華な緑色の満洲服に洗練された拱手礼は、何れも清から続く中華王朝の伝統と格式を体現する物でした。
「和碩親王妃殿下、御会い出来て光栄で御座います。今後とも何卒、我が国との親密な友好を…」
「勿論で御座います、大総統閣下。安全保障と国際交流の円滑化には国家間の協調が不可欠。一介の公安職だった私が巴図魯の受勲を機に今の地位を目指したのも、その為なのですから。」
莞爾とした微笑の中でそこだけ隙のない眼差しは、一介の軍人から武勲で栄達した彼女の半生を象徴するかのよう。
「総統選時のスローガンは『フォルモサの国、中華民国』で御座いましたね。ポルトガル語の『美しい島』に因んだ、国際社会から愛される協調的な美しさに満ちた国家が理想なのですか。」
「仰る通りです、親王妃殿下。御理解頂けて喜ばしい限りで御座います。」
そんな私の返答に、殿下の微笑は更に深まったのです。
「国際社会から愛される協調的な美しさに満ちた国作り。この大義、閣下なら必ず成就出来ると存じ上げます。御自身の出自を愛し、且つ民族の垣根を越えた広い支持基盤をお持ちの閣下ならば。」
石勒の血を引く羯族である私は、華人社会の少数派である事は否めません。
長らく用いていた漢姓を敢えて羯族固有の姓に改めたのも、民族の誇りを再確認する為でした。
そんな私の来歴や思いも、殿下は御存知だったのです。
「こう申し上げる私自身も、愛新覚羅永祥和碩親王殿下と結ばれる以前は日本人で御座いましたからね。そんな私達だからこそ、出来る事があるとは思われませんか。民族の誇りとグローバリズムの両立、それが明日の国際社会の合言葉です。」
「仰る通りで御座います、和碩親王妃殿下。」
特殊な来歴と異国の権威を背景とする権力者から、見識と理想を共有出来る近隣国の親しい要人へ。
殿下に対する私の中の認識が、そう変化した瞬間でした。




