【第7章:ラノベで復讐開始-物語でラスボスを見返す-】
Xに投稿した「#ブラック企業あるある」の波紋は、想像以上に大きかった。
フナケンの評判は地に落ち、新規の契約は激減した。
ケチ夫は毎日のようにリベンジにメッセージを送ってきたが、内容はもはや脅迫というより、泣き言に近かった。
『佐藤くん! うちの会社、本当にヤバいんだ!
頼むからあの投稿を消してくれ! 家族だろう!?』
「家族だろう、じゃねえよ」
リベンジはカフェの窓際で、新作のラテを飲みながら、冷ややかに呟いた。
「俺はもう、あの混沌とした魔王城の住人じゃない。
俺の戦場は、ここだ」
リベンジが向かっているのは、「カクヨム」の投稿画面だった。
Xでバズったエピソードを土台に、彼は短編小説の執筆を完成させた。
タイトルは、バズの原点にもなったストレートなものにした。
『異世界から転生したら、ブラック企業で働いていた(仮)』
リベンジは、フナケンでのすべての理不尽を、ギャグとファンタジー描写で昇華させた。
給与詐欺は「金銭隠蔽魔法」、流れない大便は「魔王の落とし物」、ケチ夫は「経費の亡者」。
最終的に、短編はプロット通り、3万字に達した。
「勇者の【筆のスキル】、まさかこの世界で使うことになるとはな」
異世界で培った集中力と、強烈な体験に裏打ちされた筆力は、読者の共感を呼んだ。
投稿した瞬間から、PVは爆発的に伸び始めた。
「すごい! 投稿数時間で、すでにブックマークが100を超えているぞ!」
読者のコメントは熱狂的だった。
「トイレ監視カメラは笑えないけど、笑ったwww 浄化スキル最高!」
「うちの会社にもショートカット魔女がいる! わかりみが深い」
「給料ケーキ! 伝説のブラックエピソードきた!」
フナケンの理不尽に耐え、それを面白いコンテンツに変えて見せる。
これが、リベンジの選んだ「物語による復讐」だった。
◆成功へのロードマップ
リベンジは、計画通り、短編の第1章と第2章(給与詐欺とトイレの悲劇)までを無料で公開し、残りの夜間工事や解雇のエピソードをnoteの有料記事として設定した。
「ターゲットは、ブラック企業に苦しむすべての勇者たちだ」
noteの収益は、最初の週で目標の半分を達成した。
その収益を原資に、リベンジはさらに小説を書き進めることを決意した。
そして、その年の暮れ。
リベンジの小説はAmazon KDPで正式な電子書籍として出版された。
表紙には、勇者の剣の代わりにノートパソコンを構えたリベンジが、ケチ夫を背後に見据える姿が描かれていた。
KDPの売上とnoteの収益を合わせた月収は、フナケンで約束されていた「手取り30万円」を遥かに超え、異世界で得た報酬よりも安定していた。
その知らせを、フナケンオフィスで知ったケチ夫の反応は、リベンジの耳に届くことはなかったが、リベンジの鑑定スキルは彼の現在の状態を予測できた。
『カズデ・ケチ夫:【状態:絶望】。
【特性:ブラック企業魂】崩壊寸前。』
リベンジは、キーボードを叩く手を止めた。
「フナケンという魔王城は、結局、俺の冒険の記録にしかならなかったな」
会社を潰すのではなく、自分の物語で成功する。
これが、リベンジの選んだ真の勝利だった。
彼は、新たな物語のプロットを考え始める。
「さあ、次は、ショートカット魔女との和解を描くか、それとも、新しいブラックなダンジョンに挑むか」
勇者・佐藤リベンジの新しい冒険は、始まったばかりだ。
(完)




