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【第2章:現代転生-ブラック企業への面接と入社-】

俺――佐藤リベンジは、転生先の日本で「普通のサラリーマン」という夢を追っていた。

ハローワークで紹介されたのが、内装工事をメインとする建設会社、フナケンだった。


なぜフナケンを選んだか? 理由は一つ。


『キャッチフレーズ:「家族のような会社!」、給与:手取り30万円〜、職種:施工管理(店舗改装)。』


これだ。

異世界では命を張って国を救った。

現代では、その代償として高めの給料を貰って平和に暮らす権利があるだろう。


そして今日、採用面接の日。


フナケンから指定されたのは、Zoomを使ったオンライン面接だった。


「指定された時間は午後三時。

五分前行動が基本だ」


これは、魔王討伐の際に定めた、パーティの作戦開始時刻の鉄則だ。

俺は午後二時五十五分にはZoomの待機画面で、スーツ姿で姿勢を正していた。


三時。

時刻ぴったりに、画面には何も変化がない。


三時五分。

依然として誰も現れない。


「……五分遅刻。

魔王軍の雑魚ですら、開戦の時間は守ったぞ」


リベンジは溜息を一つ吐いた。

ここは現代日本。

「時間通り」という規律は、魔物との戦闘より緩いのかもしれない。


そして三時八分。

ついにリベンジは動いた。


「戦場に穴を空けるのは、勇者としてあるまじき行為だ」


俺はスマホを取り出し、面接案内に記載されていた緊急連絡先に電話をかけた。


『プルルルル……』


コールが途切れる前に、やけに甲高い声が電話口に出た。


「はい、フナケンでーす!」


「佐藤リベンジです。本日午後三時からのZoom面接の件で、現在待機しているのですが、御社にお繋ぎができていないようです」


電話口の向こうが一瞬沈黙した後、ガチャガチャと騒がしくなる。


「あ、あ~! 佐藤さん! ごめんなさい! 申し訳ございません!」


その声こそ、採用担当兼、会社のナンバー2とされるカズデ・ケチ夫 副社長だった。


「ちょっとメインバンクの担当者とのトラブルがありまして、対応に追われていたんですよ。

すぐ繋ぎ直しますんで、切らずに待っててください!」


一方的な謝罪と説明が、矢継ぎ早にリベンジに浴びせられる。

電話は切られなかったものの、ケチ夫は電話をどこかに置いたらしく、遠くで「クソッ、融資の件、どうすんだよ!」という焦った声が聞こえてくる。


(メインバンク担当者とのトラブル? 融資?)


俺はそっと【鑑定スキル】を発動させた。


『カズデ・ケチ夫:38歳。役職:副社長。

【特性:給与詐欺師】、【特性:責任転嫁Lv.8】、【特性:すっぽかし魔人】。

抱える負債:多大。』


「……魔王より詐欺師だとよ」


リベンジは呆れを通り越して笑いがこみ上げてきた。

魔王が「お前の国は滅ぼす」と正直に宣言していたのに対し、この男は「家族のような会社!」と言いながら、給与を詐欺っている。


やがてケチ夫は焦った様子でZoomに入室してきた。


「いやぁ、ごめんね、佐藤くん! ちょっとトラブル対応で!

君みたいな時間厳守の真面目な人は、ぜひうちに必要だ!

うちに入ってくれたら、君は間違いなくエースだよ!」


ケチ夫は汗を拭いながら、リベンジの「時間厳守」を褒め称える。

リベンジは冷静だった。


「では、すぐにトラブル対応をされた貴方様は、優秀な人材なのですね」


「ハッハッハ! そうだね! 私の右腕として、君を迎え入れたい!」


そして、ケチ夫は面接の終わりに「キミは手取り30万円スタートで間違いないよ!」と、高らかに宣言した。


リベンジは、面接の最中も、入社してからも知ることになる。


ケチ夫が融資を受けているメインバンクの担当者とのアポイントメントは、十回のうち九回はすっぽかす人間だった、ということを。

そして、この「トラブル」対応とは、そのすっぽかしに対する銀行側からの最後通告であったことを。


しかし、この時点では「まあ、魔王よりはマシな職場だろう」と、転生者の楽観的な一般化が勝っていた。

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