スキル’’注目’’
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いつだっただろうか。
自分にこんなスキルがあると気づいたのは。
そんなことをボーっと考えながら帰路に就く。
小さい頃、何をするにもどこに行くにも一緒の幼馴染がいた。
家族ぐるみの付き合いで家も近所、幼稚園も同じで物心がついた時には横にいるのが当たり前の存在。
甘ったれで、幼稚園に行くときはいつもおばさんにしがみついて泣いているようなやつ。
その当時はそいつの手を取り、集合場所の公園から幼稚園まで手をつないで歩いていくのが自分の役割だと思っていたし、まんざらでもなかった。
同い年ではあったが早生まれということもあったのか何をするにも泣いていて、いつも俺の後ろを追っかけてきていた。
同い年、というよりは弟のように思っていた。
「ツヨちゃん!ツヨちゃん!」
そう言って後ろから追いかけてくる姿はかわいかったし、弟分から頼られている気がして強がったりしていたのを覚えている。
家では食べれないピーマンやニンジンもなぜかそいつの前では頑張って食べたり、自転車や逆上がりだってできると嘘をついた後に必死で練習してできるようになったり。
今考えてもそいつにだけはいい恰好がしたかったんだと思う。
同じ小学校に入学したあともいつも二人で一緒にいた。
小学校1、2年生では隣のクラスだったので顔を合わすことも多かったのだが、3年生に進級すると1組と4組となったことで次第に登校時と下校時以外はあまり顔を合わせなくなっていった。
もちろん、学校から帰った後はよく遊んでいた。そいつの家が共働きだったのに対してうちは母が専業主婦だったので何かと預かることが多かったし、夜ご飯もよく一緒に食べていた。
よく遊んだというかむしろ、毎日一緒にいたと思う。
それが当たり前だったし、ずっとこの日々が続いていくものだと思っていた。
が、次第にうちにくる機会は減っていくことになる。
キッカケは3学期も終わりに近づいてきたころ。
一緒に下校してるときに嬉しそうに話しかけられたことを覚えている。
「ツヨちゃん、今日からはママがいるから家で夕飯を食べるんだ。」
と嬉しそうに話してきたことがあった。
今までも毎月数回は自分の家で夕飯を食べることはあったのでそのことだろうと思っていたのだが、その日を境にめっきりうちで夕飯を取ることはなくなっていった。
少し寂しさはあったもののそいつ嬉しそうな顔を思い出すとこれでよかったという気持ちもあった。
それに登下校や放課後を一緒に過ごすのは変わらなかったので今までより少し別れるのが早くなった程度に考えていた。
今考えると少しずつそいつ様子が変わっていたのかもしれない。
が、その時の俺には気づくことはできなかった。
そしてその日がやってくる。
放課後、いつものようにそいつと公園で遊んでいたのだが夕飯時になり帰宅することにする。
公園から自宅までの間にあるそいつの家の前で別れるとまた一人歩き出す。
「ツ、ツヨちゃんっ!!」
最初の角を曲がろうとしたとき、後ろから大声をあげながら追いかけてくる幼馴染の姿があった。
そいつの家からは20mも離れていない距離。
忘れ物をした程度では絶対に出さないような大声。
異変に気付いた俺はそいつに向かって走り出した。
「ツヨちゃん!助けて!ママがおかしい!!きて!!」
そう言って手を引っ張られると全速力でそいつの家に向かう。
バタン!
勢いよく玄関のドアを開けると突き当りのリビングへと急ぐ。
するとそこには白いダイニングテーブルに座ったまま突っ伏しているおばさんがいた。
「大丈夫ですか!?」
声をかけても突っ伏しているだけ。
想像していた状況とは違いおばさんがダイニングで突っ伏しているだけなことに少し安堵すると遅れて入ってきたそいつへと視線をやる。
息が切れた状態で話しかける。
「ただ寝て・・・」
ただ寝てるだけじゃん。
そう言おうと思っていた言葉はそいつの怒声に遮られる。
「足元ッ!!」
足元?
そう思い視線を下ろすとそこには小さい薬のようなものが大量に散らかっていた。
「睡眠薬だよ!いつもママが寝る前に飲んでるもん!こんなに飲んだらダメなんだよ!!」
涙を両目に浮かべながら叫ぶように伝える。
「パパが言ってたんだ!どうしよう!どうしよう!ママが死んじゃうよ!!」
その言葉を聞くと同時に弾き飛ばされたように家を飛び出す。
誰かに助けを求めに。
玄関を飛び出す。
右、左を見回すもこういう時に限って誰も通っていない。
一番近い交差点、さっきまで遊んでいた公園側へと走る。
住宅街の中なので大通りではないが誰かはいるはず!
さっきはいた!今回も!
そう信じて全力で駆け出す。
頼む!
そう心で願いながら左右を見渡すが誰も通っていない。
なんでなんだよ!
早くしないとおばさんが死んじゃうんだよ!
’’誰か気づいてくれよ!!!’’
そう強く願ったとき。
「どうした、僕、どうかしたか?」
そう話しかけてくれる声が聞こえた。
すぐに振り返るが誰もいない。
困惑して左右を確認しても誰もいない。
「こっちだこっち!」
そういうと近くの家の塀ブロックの隙間からのぞき込むおじいちゃんと目が合った。
俺は両目に涙を溜めながら、おじいちゃんに向かって叫んだ。
「助けてください!おばちゃんが死んじゃう!」
その後の記憶は曖昧だったりする。
面白いくらいに何も覚えていないのだ。
泣きじゃくりながら、声をかけてくれたおじいちゃんをおばさんのもとまで案内しようとしていた気がするがどうだったろうか。
後々、母親から聞いた話によるとそのおじいちゃんが救急車の手配や母親への連絡をしてくれたらしい。
また、おばさんについても早期発見だったようで軽い検査入院で済んだようだった。
ただはっきりと覚えているのは、あの時。
おばさんを助けてくれる人が見つからなくて途方に暮れた時。
誰か気付いてくれよと強く念じた時。
あの瞬間にこの変な地味スキルに目覚めたことだけはしっかりと覚えている。
そんな日々をふと思い出しながら歩いていると横から声をかけられる。
「おかえり、今帰りかな?」
まさに助けを求めたおじいいちゃんである。
「はい!園芸部の帰りです!」
そういって軽く会釈をするとまた歩き出す。
あの事件以来、姿が見えると挨拶をする関係となっていた。
特に長話をしたりはしないが挨拶と一言二言交わすような、そんな関係。
今日も一言挨拶を交わし立ち去る。
こんなやり取りでも山崎以外の貴重な話し相手なのだ。
アイツがいれば話し相手になってくれたのかな。
そんなことが頭をよぎる。
ずっと一緒だった幼馴染は事件後すぐに引っ越していった。
周りの目を考えると仕方がなかったのかもしれないが、いまでもたまに思い出してしまう。
だがすぐに今の自分を見たらガッカリするだろうなとその考えを打ち消す。
幼馴染が住んでいた家を横目に家路へと着いた。
最後まで読んで頂き有難うございました!
今週、あと1話は上げれるよう頑張ります!




