地味スキル発動
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山﨑の問いかけに自分はどうせ当てられないだろうと思っていた俺の顔は驚きで目を見開いて跳ね上がった。ただ姿を見ているのは山﨑だけだ。他の部員たちは見る事さえしない。当てられたらダメな人間が当たったからなのかそれまでざわついていた部室が静まり返る。
「どうだ?なんか考えてきたか?」
その一言で俺だけが先に知っていたことが部員にバレた。
何か言わなきゃならない。
ドクッ、ドクッ、ドクッ。
自分の心臓の音が聞こえる。
早く何か言わないと、この静まり返った雰囲気をどうにかしないと。
そう考えると余計言葉が出ない。
ただ、じっと、それも急かすわけではない山崎の視線が自分を向いている。
「なんでもいいぞ?真面目に来ていたのはお前だけだからな。」
その何か言おうとしていた森本が口を押さえる。
出席について言われたら俺の右に出るものはいないだろう。
実質ひとりだけだったんだから。
とはいえ、余計に何か言わなければいけない雰囲気になる。
山﨑とだけは毎日話していた。
他愛のないことばかりだったがこの学校生活で唯一の話し相手。
その山崎の問いかけ。
大丈夫、ちゃんとできる。いつもと同じはずだ。
「え、園芸部だからやぱ、やっぱり花とかの展示がいいとおも、思います。」
どもった。盛大に。ただ、何とか言い切った自分に拍手を送りたい。
「それは確かに園芸部っぽいよな。まぁ、準備期間の問題もあるから種からってわけにはいかんが何とかできるんじゃないか?」
「あ、はい。。」
それだけ返すと視線を机に下げる。
いきなり当てられたのでどぎまぎしたがようやく自分のターンが終わったことに胸をなでおろした。
「ほか、何か意見はあるか?」
静まり返った部室。静寂を打ち破ってまで発言するやつなんていない。
「ほんとにないのか?なら花を飾るブースを作るとかどっかの花壇を借りるとか詳細を決めてくぞ?いいのかぁ?」
そこでようやく森本が口を開く。
「ほかにアイデアないんならそれでいいんじゃない?せんせー、俺練習あるからもう帰らないとだわ。」
「それなら私も練習があります。」
齋藤も続く。
そこからは中村も斯波も手伝いだなんだと理由をつけて帰ろうとする。
俺が出した意見だから気に入らないのだろうか。森本が作ったこの話し合い終了のキッカケに全員が同調したことで山崎でも止められない波となっていく。
「おい、お前ら、ちょっと待てって。まだ決まってないぞ!」
その言葉を遮って森本たちが帰ろうとする。
本来であれば、俺がいなければ、もしかすると有意義な話し合いになってたかもしれない。
俺が発言さえしなければ、違う展開になってたかもしれない。
俺がうまくやれてたら山崎にとって園芸部最後の思い出ができたかもしれない。
俺が、、俺が、、その機会を壊したかもしれない。。。
いや、このままじゃいつも話していた山崎に申し訳なさすぎる。
そう思った俺は頭の中で’’注目’’と強く念じる。
すると全員の視線が自分に向いている。
山﨑に当てられても、何か発言しても見向きもしなかった部員が。
それも全員。特段何か言うわけでもない。
なんならこちらを振り浮いているその表情には驚きが張り付いている。
自分でもなんでこちらを向いているかわからないという様子で。
全員の注目が離れる前にすかさず口を開く。
「今日は無理でも、明日でも明後日でも何か意見があったら待ってるから!」
自分でもよくどもらずに言えたと感心した。
その言葉を言い終えると同時に全員の視線が離れる。
返事はない。
あるとすれば不思議そうにもう一度こちらを見る視線だけだ。
そうして全員が教室から出て行った。
山﨑も一人でも呼び止めようと部室から一緒に出ていく。
ふぅ。終わった。
振り返ってみると話したのは2、3言。
でも、みんなの前、といっても山崎を合わせても5人しかいなかったが、話したのはいつぶりだろうか。最初なんて緊張で手も脇もびっしょりになっていた。
しかもあんなことまでするなんて。
あんなこととは昔からあった超能力?最近では異世界系小説の影響でスキルなんて自分の中で言っている、その能力のことである。
頭の中で’’注目‘’と念じると対象の視線を集めることができるのだ。
初めて気づいたときは好きな子の視線を独り占めだとか、しょうもないことを考えては自分は特別だと思い込んでいた。
が、実際に中学に入って総スカンを食らってからは注目をいかに集めないようにするかの生活だったのでまったくもって意味のない地味スキルだったのである。
せめて自分にだけじゃなく他のものに注目させることのできるスキルだったなら有用だったのに。
まぁ、使わなければいいだけなので構わないといえば構わないが。
ただ、みんなの前で話したのも、この地味スキルを使ったのも1年生以来だということに気づくとよくできたなとまた、自分を褒めたくなるのだった。
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