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7話 無双少女


翌日、予定通り森を抜けるため歩いていた。

エンドワークスが前を木々を縫うように歩き、その後ろを俺がついていく一列の形。


(おはよう)


心の中の突然のルイナの挨拶にちょっとびっくり。


(お、おう、おはよう)


ルイナが目を覚ましたらしい、どうにも遅い目覚めだ。

羨ましいね。


(ねぇ、あなた、夜更かししたでしょ?

すごく身体が怠いんだけど)


(いやさ。

聞いてよルイナ、昨日、星がすげー綺麗だったんだ。

それ見て俺、感動しちゃって)


(はぁ?なにそれ?)


(…ん?興味ない?)


(ない)


(ああ、そう。

まぁ、夜更かしは悪いとは思う。

次から気をつける)


共同の身体だからね。あまり無理はできない。

ルイナのいう通り確かにだいぶ眠いね。心はそうでもないけど身体の眠気ってやつを感じてる。


(…少し、私に歩かせてよ)


予想外。

ルイナが自分で歩きたいと言い出したこと。

あんなに無口で引き篭もりで、生きる気力すらなかったルイナがどういう心境の変化?

え、心配以上に怖い。


(悪いもんでも食った?)


(もし食ったとしたら昨晩のあなたのせいね)


(どうしたの、急にさ活発的になっちゃって)


(…別に…気分転換。

ダメ?)


ダメじゃない。

むしろ積極的に動かして貰いたいくらい。

アンタの身体だぜ元は、てか今だって。


俺は指をパチンと鳴らして身体をルイナに明け渡す。

指を鳴らした理由はカッコつけ意味はない。


自分の意思とは関係なく勝手に動き始めた足。

まったく奇妙な感覚だ。

でも勝手に動いてくれるのはやっぱり楽でいいなぁ。

こういう歩くとかの単純作業はとくに。


はぁわわ。

しかし、ねむいーな。

昨日は精神力?かな?そんなんを使いすぎたような気がする。

暇だし、二度寝でもしようかな。

そんなことを思った矢先だった。



「止まれ、ルイナ!」


そこで突然、エンドワークスが指示を出した。


「は、はい!」


ルイナは言われたとおりに立ち止まる。


「魔物だ、囲まれている」


「え?」


複数の気配に気がついた。

足音や気配からして10を超える何かの群れだろう。

エンドワークスは背中に担いだ大剣を抜刀。

完全戦闘モードとみられる。


(…んー、ルイナちゃん、はい、チェンジ)


(…ま、任せる)


(ほいよ)


ルイナが目を閉じて、俺が開く。


身体に神経が通り、手をグーパーと握ったり広げたりして自分で身体を動かせることを確認する。



木々の隙間から次々と現れたのは人型の生物だった。

彼らの体躯は成人男性にしてはやや小柄で女と見れば大きいそんな体つき、なにより特徴的だったのは緑色の皮膚、人型ではあるが人ではなかった。


「ゴブリンか…」


エンドワークスが語る。

ゴブリンと呼ばれるモンスター。

10体ほどのグループがこちらに向かって我が物顔で歩いてくる。

その中の一頭。

頭に赤爛れた布を巻いた、おそらく彼らのリーダー格と思える個体が俺のことを見つけたのだろう。

舌なめずりをし、指を指す。


「ゲヒッゲヒヒッ…」


エンドワークスは近づき、俺だけに聞こえるくらいの声量で話し始めた。


「ルイナ、あれらはホブゴブリンだ。

ゴブリン種の一番スタンダードな個体。

奴らゴブリン種のことは知ってるか?」


「知らね」


「そうか…。

簡単にいうなら、雌が産まれず、

他種族の雌の胎を苗床として繁殖をするといった特徴。

他胎生殖というのだがな」


「んーつまり、

あいつらルイナという女を狙ってるってこと?」


俺を見て下品な笑みを浮かべるゴブリンの群れ。

彼らの視線の先にある、俺は女。

人の形をした、子供を産める女という生物だった。


「…そういうことだ」


「ふぅん、そういうことね」


(勝ってよ!?ねぇ!絶対勝ってね!)


内心のルイナがひどく動揺する。

分かってるって、俺だって魔物の子供なんか産みたくねぇよ。


「…安心しろ。

ゴブリン程度ならば何の問題もない。

私が早急に片付けよう」


今すぐにでも戦闘を始めようとするエンドワークスを俺は止めた。


「なぁ、エンドワークス。

この戦い、俺にやらせてくれないか?」


「…ルイナ、話を聞いていたか?奴らは…」


「雌を襲うんだろ?

聞いたさ。

けど、みたくない?

この俺、ルイナの力?」


「…ふむ」


せっかくの機会だから、自分がどれくらい戦えるのかを試してみたかった。

あの例のアジトでは戦闘ってよりかは虐殺だったし。

自分の力を試せたとは言い難い。

ここでなら、あのゴブリンどもなら気兼ねなく自分の力をぶつけられる気がした。


「安心しろよ、俺は負けないし。

もし仮に、ヤバくなったらアンタが助ければいいだろ?」


(何言ってんの!?

二人で戦えばいいじゃん!!早いじゃん!?)


ルイナの正論は無視します。


「いいだろう。

だが危険とみなしたらすぐに割って入る」


「じゃ、その剣貸してねー」


エンドワークスは持っていた大剣を地面に突き刺し、背後に下がった。

俺は両手でその大剣を引き抜く。

明らかに身体に見合わない大剣を地面に引き摺るように構え、前方のゴブリンを見据えた。


「ギャアッ!!!」


一番槍、初めの特攻は一番生きの良い個体。

もう辛抱ならん、

というかのように俺へその長い爪を振りかぶる。


ゴブリンの実直な攻撃を躱すのは容易いことだった。俺は1歩後ろに下がり、攻撃が俺の前を振りかぶる。

ゴブリンはまさか避けられるとは思っていなかったのか、空中で体勢を大きく崩し、

そして続け様に俺は腕に力を込め、着地したばかりのゴブリンの首を大剣の重さに任せて切断した。


ゴブリンの首の断面からは赤い血飛沫が舞い、

俺へと噴水のように降りかかりそうになったが、もうその展開は何度も経験済みなので、血がかからない立ち位置に素早く移動する。


「…っ!」

動揺するゴブリン達。

目の前で仲間の首が切り落とされたのは流石にこたえたのだろうか。

ゴブリン達のあの下衆な笑みが一斉にピタリと止まった。


彼らの一体一体の瞳はそれぞれが口以上に感情を映していた。

仲間を殺され怯えた者。逆に憤る者。

未だに感情の整理がつかない者。

とバラバラで、どうやら魔物である彼らにも心というのはあるようだった。


そうか、ならばこちらとしても都合がいいものだ。


俺は顔面に付着した少量の返り血を袖で乱雑に拭い、切り落とした頭をゴブリン達の足元へと蹴り上げる。

これは彼らゴブリンへの言葉を介さない挑発でもあり、逃げれば追わない、だがこれ以上立ち向かうならコイツと同じように切り捨てるぞという俺なりの優しい警告でもあった。


コロコロと何回も転がった死骸の表情がゴブリンの方を向けば、

彼らは逃げ出すことを決めた。


「1匹残らず殺せ、ルイナ!!

奴らは執念深い!!

1匹でも逃せば巣の仲間を大勢引き連れてくるぞっ!!」


あらら、可哀想に。

エンドワークス(大将)の命令なら仕方ない。

怨みつらみはあそこの鉄人間のほうへ、お願いね。



俺は大剣の先を地面に引き摺りながら、突撃。

殲滅を開始した。

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