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6話 邪龍

「転生者?」


俺が首を傾げて聞くとエンドワークスは答えた。


「ウィーグ王やハルキ王に並ぶ、聖人の子孫。

その上澄み。

神器の継承者達のことだ」


んーいまいちパッとしない答えだなぁ。

もっと分かりやすく教えて欲しいのだけれども。


「えー、

んー、だから?なに」


「君は王と同等の器であると言っている」


王と同等。

つまり、王様と同じってこと、俺が?

ルイナが?

どっかの王族ってこと?


「えー、ま、まじ?」


「おおまじだ」


あの、しかし、そう言われてもさ。

こちとりゃ、どうすればいいの?

国に帰ればいいの?その…自分の国へ?


「…驚いた。ルイナちゃんって、

もしかしてどっかの王族とかなの?」


「違う」


違うんかい!

びっくりしたなぁ。


「イルフの子孫は他の聖人のように国を持たなかった。

いや、待っていたが、放棄した」


「なんでよ?」


「一族の中に邪悪を産んだからだ」


「邪悪?」


「かつて、12人の聖人の力を奪い一つに集めようとした男がいた。

奴の名はイルフ。

聖人イルフ本人ではない、イルフの血を継いだだけの出来損ないだった男だ。

男は当時のイルフの国の王であったイルフの転生者を殺し、その力を奪った。

その後、次々と他の聖人の子孫を殺しては、力を奪っていった。


やがて男の身体には9を超える聖人の力が取り込まれ、その姿は異形の化け物と成り果てた。

もはやそこには人としての知性もなければ品性もない。

ただ本能に従い闇雲に人を襲い、食う、異形の龍。

邪龍イルフが爆誕したのだ」


…。

異形の龍。


「イルフの龍は人々を虐殺していった。

理由は分からぬがな、ただ闇雲に、人だけを必要に狙った。

龍に唯一対抗できる生き残った聖人の子孫は3名。

そんなものでは9の聖人の力を持つ龍になど敵うはずもない」


「どうしたんだよ、それで?

滅んでないんだろ?人は?」


「勝てない戦いではあったが。

それでも暴れ回るイルフの龍を野放しには出来なかった残った3名は決死の覚悟で龍に挑み、散った」


「あの、散っちゃったらダメじゃない?

人類滅亡コースじゃない?」


「しかし、未来には繋がったのだ。

3名との戦いの中でイルフの龍はその尾と片方の手を失った。

イルフの龍は傷を癒すための時間を必要とし、その間力を奪われた9名の聖人の子孫はその龍の尾と手を喰らうことで、10割とはいかずとも神器を扱えるようになるまでは力を取り戻すことができたのだ」


「…ああ、なるほど」


「そして30年後、イルフの龍はそうして討伐された。12人の聖人の子孫が力を合わせて邪龍を殺し、再び大陸には平和が訪れ、奪われた聖人の力も完全に取り戻し、全ては丸くおさまったかのように思えた。

…が」


「が?」


「残されたイルフの一族は邪龍を産み出してしまった責任を取らされることになってしまった。

民衆は世界を救うため戦ったイルフ人を他の聖人同様讃えたが、同時に恐れてもいた。


それを察したイルフ人は国を放棄し。

罪を償う為と、人との関わりを断ち。

密やかに今世までどこかで暮らしている」


なるほどね…その密やかに暮らしていたイルフ人がルイナだったってことか。


「しかし、そんなものはもう過去の話だ。

イルフの龍が討伐され終わったこと。

イルフ人に罪などあるはずもない。だがしかし、この世にイルフ人を嫌う人間が一定数いるのも事実。

この先、生きていくならルイナには自分が何者なのかを教えた方がいいと思ったのだ」


「たしかに、それは聞けてよかった。

自分が、ルイナが。

何者か知れた気がするよ」


わけもわからず迫害されたら嫌だしね。

いや、わけが分かっても迫害されんのは嫌だけど。


「それならばよかった。

…ルイナ」


「なんだよ?」


「君は他のイルフ人とは少し違う力を持っている」


ああ、それで転生者だっけ?

詳しくは聞いてないけど、神器がなんだかんだっての。


「その力は強大なものだ。

しかし、我儘に利用すればいずれ破滅が待つ。

かのイルフの龍のようにな。

…扱い方には…」


「なんだよ?心配してんのかエンドワークス。

俺の将来に口出したいのか?」


「…」


「そんな心配性ならアンタがこの先もずっと面倒見てくれてもいいんだぜ?

エンドワークスなら信用できるし、楽そうだし。

この先も楽しそうだ」


「それは、難しい」


それが無茶な願いだってのは俺だって分かっていた。


「私にはやるべきことがある」


「じゃあ、それを手伝ってやろうか?」


別に俺に何か目的があったわけではなかった。

だけど、何もしたくないわけでもなく。

それはエンドワークスのためになりたいとかでもなく。

ただ、人間らしく生きられればよかった。

つまりは、俺も暇だった。


「…」


エンドワークスは答えない。

その無言からは悲しいけど否定の意だけが感じ取れた。

要するにフラれたのだ俺は。


「ふん。

まぁ、いいんだけどさ。

じゃあ、また寝るかな、俺。

エンドワークスは、どうすんの?寝んの?」


「私は睡眠を必要としない」


「そんなんだと思った。なら火番のほうも任せてもいい?」


「もちろんだ」


その夜は寝ながら見上げた星が綺麗だった。

だからなかなか寝付けなかった。

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