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休日に飯テロ

 日の光がカーテンの隙間から覗かせる。枕元に置いてある目覚まし時計が鳴り響く。私は目を覚ますと目覚まし時計を止めて、横に置いてある眼鏡を掛けた。


「ふぁ〜〜」


 身体を猫のように伸ばす。昨日夜遅くまで漫画を読んでいたからか少し寝不足だった。だって漫画が面白すぎるんだもの。


「あっ蘭音起きてきたんだね」


 リビングにはニットを着た月椿ちゃんがミニトマトの苗木に水を上げていた。


「おはよう、月椿ちゃん……」


「顔洗っておいで朝食作ってあるから」


「ありがとう……」


 目を擦りながら私は洗面台に向う。明かりを付けると眠そうにしている自分の顔が映し出される。

 眼鏡を取り外し、ターバンを付けてぬるま湯で顔を洗う。目を閉じたままタオルを探す。右手に触れたタオルを顔に持ってきて水を拭う。ようやく目を開けられる。眼鏡を掛け直し、再び鏡に写った自分の顔を眺める。さっきより活気のある顔になった。


 洗面台を出て、リビングに行くと月椿ちゃんが朝食の準備を済ませて待っていたくれた。

テーブルの上にはミニトマトとレタスが添えられているベーコンエッグとこんがりと焼かれたトースト。コンソメスープが並べられてた。理想的な朝食が目の前に広がっている。漫画家アニメで見る光景になんだか嬉しくなっている自分がいた。


「お待たせ〜」


「じゃあ食べよっか」


「うん……」


「「いただきます」」


 カリッと音を立てながら私はトーストをかじった。トーストはバターが塗っていつもよりまろやかになっている。私は千切ったトーストをコンソメスープに二、三回付けて口に放り込んだ。コンソメスープが染み込んだトーストはさっぱりした味に様変わりした。そのままコンソメスープを飲むと湯気で眼鏡が白く曇った。


「蘭音、眼鏡曇ってるよ」


 月椿ちゃんが微笑みかけてくる。

 私は恥ずかしくて眼鏡を外した。


「眼鏡好きなんだけどな……」


「いつもはコンタクトだよね」


「うん、熱いものを食べるときに曇っちゃったり、壊したり無くしたりしちゃうからコンタクトにしてるんだ」


「なんで今日はコンタクトじゃないの?」


「……無くした」


「え……」


 困惑した月椿ちゃんを横目に私は朝食を食べ進めた。

 ベーコンエッグを箸を使って真っ二つにする。押しつぶされた黄身は半熟になっていて、とろっとお皿に流れだしていた。片方のベーコンエッグを少しずつ食べていく。お皿に黄身が垂れる。こんがりと焼かれたベーコンとふわふわな白身がよく合っている。

 次にレタスと片方のベーコンエッグをトースターに乗せて勢いよくかぶりつく。

 この食べ方、アニメで見て一度はやってみたかったんだよね。

 シャキシャキのレタスがこれまたベーコンエッグとトースターによく合ってる。


 朝食を食べ終えると二人分の食器をキッチンに持っていく。

 少しでもやれることはやらないと、月椿ちゃんが「いいよ、やっとくから」と涼しい顔で全部やってしまいそうだから。そうなれば私はどんどん駄目人間になってちゃう。


 食器を洗い終え、月椿ちゃんが座ってるソファーの隣に腰掛ける。時間がゆっくりと流れていく。

 私はそっと目を閉じた。


 ソファーで目を覚ますと日差しが顔を照らした。

 時計を眺めると午後四時になっていた。

 あれ……もしかして私、貴重な日曜日を寝て過ごしちゃったの?

 月椿ちゃんは? 


 横を見ても月椿ちゃんの姿はなく、私にはフリースが掛けられていた。

 月椿ちゃんが掛けてくれたのかな……?

 部屋中を探しても月椿ちゃんを見つけられなかった。

 どこかにでかけたのかな……?


 私が月椿ちゃんの部屋に入ろうとした瞬間、玄関から扉が開く音がした。

 玄関を覗くとそこには両手にビニール袋を持った月椿ちゃんの姿があった。


「ただいま~」


「おかえり、買い物に行ってたの?」


「うん、雑誌見て作りたいって思った料理ができて、冷蔵庫を見たらすっからかんだったから色々と食材を買ってきちゃった」


「ありがとう~」


 本当に月椿ちゃんには頭が上がらないな。


 その日は夕食にタコライスを食べて私達は眠りに着いた。


 ◇


 次の日、私は相変わらず会社のデスクでパソコンとにらめっこしていた。

 あと少し、あと少しで仕事が終わるんだ! 久しぶりに定時で帰れるんだ!

 私は全神経を集中させてパソコンを打ち付けた。


「終わった〜!」


 やったぞ! 私はやったんだ! 定時に帰れるぞ!


「お疲れ様です、一ノ瀬さん」


「槻木君」


 横から槻木君がアイスコーヒーを差し入れてくれた。


「いつも凄い量の仕事をこなしてますけど、大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ」


 口ではこう言ってはいるが本当は全然大丈夫じゃないんですけどね。


「槻木君だってかなりの量の仕事やってるでしょ、槻木君こそ大丈夫?」


「自分は大丈夫ですよ、この前一ノ瀬さんに言われた通りにしっかりと睡眠を取ってますから」


「そっかそれは良かったよ」


 少し無理してそうだけど本当に大丈夫かな? 


「じゃ私は帰るね、コーヒーありがとう。槻木君も頑張ってね」


「ありがとうございます」


 缶コーヒーを片手に私は会社を後にした。


 家に帰るといつものように月椿ちゃんが料理を作って待っていてくてた。


「ただいま〜〜」


「おかえり」


 今日も美味しいいご飯を食べる。




 






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