とある廃トンネル
ホラーストーリーです。
ほぼ実話となっております。
私は地方に住むKと言います。
昔から不思議な話や怖い話を聞くことがあったので、それを纏めてみました。
暇つぶし程度にお付き合いいただければ幸いです。
これは高校時代のこと。
自分が通っていた高校の数学の教師をしていたO先生。
大学を卒業したばかりで、他の教師たちとは違い、どちらかというと近所のお兄さんのような感覚で話しかけやすかった。
そしてそのO先生は当時にしては珍しくPCにも明るかった。
当時はプログラミングなんて授業はなく、窓98が席巻していた頃。
通っていた高校は県内でも比較的新しく、形だけだが情報処理室のようなPC部屋もあった。
放課後になると部活をしていなかった自分と仲のいい友達で、その部屋でO先生と話すことが楽しみの1つだったのを覚えている。
これはそのO先生から聞いた話。
前置きが長くなったが、その頃は携帯電話は当たり前ではなく、ポケベルやPHSが主流。
O先生が大学生の頃は、遊ぶといえば今より規制の緩かったネットの海で噂話を見つけ、そこに友達と繰り出していたらしい。
その日は暑い夏の夜。
夜になっても気温が下がらず、金のない大学生にとってクーラーをつけっぱなしというわけにもいかない。
暇な友達数人で、肝試しに行こうという話になった。
幸か不幸か、自分たちの住む県は、市内中心部から車で1時間程度の所に心霊スポットがいくつもある。
金無し暇有りの大学生にとって、心霊スポットは格好の暇つぶしになるらしい。
その日は翌日が休みということもあり、少し遠出をすることにした。
場所は車で片道2時間程度の廃トンネル。
軽自動車に男四人が乗り込み、他愛もない世間話をしていると、あっという間に時間は過ぎる。
もちろんその当時はカーナビなんてものはない。
地図と記憶を頼りになんとか目的地に到着。
ここは噂も複数あって、歩いて通る、車で通る、入口にいる、出口にいるなど、心霊現象が多いことで有名なところだった。
まずは試しに二人が歩き、後ろから二人が車で明かりを照らしながら追いかける。
深夜で別に新道があることもあり、到着の10分ほど前から車や人とすれ違うことはなかったそうだ。
トンネルを超えて四人で笑い合う。
やはり噂は噂だったと。
これなら先月行った戦争跡地のほうが怖かった。
数百メートル先に自動販売機の明かりが見えて、そこで飲物を買おうという事になった。
車に乗り込み先に進む。
離合ポイントなのか、拡幅されておりここで転回することができそうだ。
だけど肝心の自動販売機がない。
トンネルを抜けたところから見たときは、たしかにここに光があったはず。
真上には街灯と呼ぶには頼りないライトが1つ。
全員で首を傾げるが、無いものは仕方ない。
周囲は木々で覆われて、廃屋のような建物が数えるほど。
4人は車に乗り込み、来た道を戻ることにした。
そこでその中のひとりがこんなことを言い出す。
なぁ、俺がネットで見たのは、出口の所に女が立ってるって噂だった。
何回か往復して確かめてみないか?と。
特段やることもなく、ここまで来るのにそれなりの労力を払っているため、このまま帰るのは少し勿体ない気もする。
時間は深夜1時過ぎ。
夜中の妙なテンションもあり、全員が納得。
因みにだが、当時乗っていたのは一般的な軽自動車。
今のように車内は広くなく、天井も低いため男4人が乗れば車内はギュウギュウになっている。
1往復目、特に何もなし。
トンネルの両側には拡幅スペースがあるのでUターンには問題がない。
2往復、3往復目も何もなし。
後部座席の二人はトンネルを抜ける際に出口を直接見るが何も無い。
4、5往復目も何も無い。
何もねーな、と誰かがつぶやいた。
最初は恐怖と期待が入り混じっていた車内も、現在は静まっている。
そろそろ帰ろうか。
運転していたO先生が提案し、残りは黙って頷いた。
このトンネルを反対に抜ければ帰れる。
ちょうど片道分行っていたこともあり、それまで同様来た方向へ戻っていく。
トンネルを抜けて数百メートル進んだところで、前から赤色灯を付けたパトカーが走ってきた。
巡回かな?
こんな夜中まで大変なことで。
そんなふうに考えていると、パトカーは目の前で停止し、車内から警察官が2人降りてきた。
停止の合図をされたので車を止める。
「お前らか、危ない運転してるってのは!」
第一声でこんなことを言われた。
「え?どういうことですか?」
たしかにトンネルを行ったり来たりすれば不審がられるとは思うが、危ない運転かというとそれほどはないと思う。
スピードも出していないし、ライトも付けていた。
「若いからって何でもしていいわけじゃないだろ!通報があったぞ」
「通報?僕たちはただここにちょっと遊びに……」
「ここが心霊スポットになってるのは知っとる。
だからってせいぜい通るくらいにしとかんか。
だいたい聞いたこともないぞ、車の上に乗るなんて」
は?
僕らは顔を見合わせる。
車の……上?
「ちょっと待ってください、どういうことですか?」
「何言っとるんだ?
近くの住人から通報があったぞ。
車の上に人乗せてウロウロしてる奴らがいるからどうにかしてくれって」
「そんなはずないじゃないですか。
この車見てください、上に人が乗れますか?
それに僕たちは全員170センチ越えてますよ?
どうやって乗るんですか?」
「ん?
あれ?
いや、たしかに……。
だが通報では……」
それから警察官2人は車の天井部分を調べる。
洗車していなかったおかげで車の上は汚れ放題。
それが誰も乗っていなかったという決め手となった。
「とにかく今回は何もなかったから良かったものの、ここは旧道だから遊び半分で来るんじゃないぞ。
何かあってからじゃ遅いんだから」
少しのお説教のあと、ふと気になったことを聞いてみる。
「通報があったって言われましたけど、この辺には誰か住んでるんですか?」
「いや、この辺りは誰も住んでないぞ?
家が残ってるだけで、昼間は小屋として使ってる人達がいるくらいだな」
「え……、それじゃおかしくないですか?
僕たちはトンネルの先の広いところで回ってたから見られることなんてないと思うんですが……」
警察官も含めて僕たちは黙り込んでしまった。
「と、とりあえず今日はもう帰りなさい」
恐ろしくなったO先生は、警察官に頼み込んでパトカーに先導されて山を下った。
翌日、明るいところで見ると、フロントガラスの上部左右に薄っすらと手形がついていた。
「そんなことがあってね、それからは肝試しはやらなくなったんだよ。
まぁ女の子と行くこともあったけど、そのトンネルだけは二度と行かないって決めてるんだ。
君たちも遊び半分で行くんじゃないよ?」
普段はくだらない話が多いO先生だったけど、この話わ聞いたときは部屋の温度が下がったような気がした。
「ところで先生、そのトンネルってどこ?」
「あぁ、それはね……………」
余談ではあるが、夏合宿と言うことにしてその先生の家に夏休みに泊まりに行って色んなところに連れて行ってもらったのはまた別の話。
因みにその時乗せてもらった車は軽自動車でした。
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