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目覚めたらピンク頭の屑ヒロインだった件~罰は醜怪騎士団長との婚約だそうです  作者: 灰銀猫


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奪われた魔道具

 殿下と身体が入れ替わってから、私は殿下がいかに孤独の中で生きていたかを知った。

 王太子のスペアにもならない、政略結婚の駒にもならない第三王子。それがフレデリク殿下だった。

 それでも、座学や武芸で秀でたところがあれば、宰相や騎士団長などの要職について重宝されただろう。実際、先々代の国王陛下の第三王子は騎士団長を務められたし、遡れば宰相に就かれた方もいた。

 しかし、身体も気も弱い殿下には、どちらも期待出来そうになくて。最終的に国王陛下が殿下に命じたのは、我がマクニール侯爵家への入り婿だった。


 我がマクニール侯爵家はこれまでに何度も王妃を輩出した名家だが、ここ数代は王家との間に微妙な緊張感があった。それは三代前の当家と王家の間にちょっとしたトラブルが起きたためだった。

 この緊張感を埋めるべく持ち上がったのが、殿下の婿入りだったのだ。幸い殿下の生母でもある王妃様がマクニール侯爵家と繋がりのある女性だったのも影響しただろう。どちらにしても殿下には選択権はなく、彼は自身で公爵家も興せない残念王子と揶揄されていた。





「フレデリク殿下、お話がございます」


 日課でもある領地経営についての授業の後。侍従の一人であるヘンドリックが部屋に入ってきた。彼は国王陛下の幼馴染で側近を務め、一方でフレデリク殿下の教育係だったが、殿下に対して好意的とは言い難い事を私は知っていた。彼は我がマクニール侯爵家に連なる者で、私や父にはいい顔をしていたが、王子に対してはあからさまに見下していたのだ。


「ヘンドリック殿、何用でしょうか?」


 殿下と怪しまれないよう、私はあえて小さめの声で緊張感を漂わせて答えた。今はまだ殿下と知られるわけにはいかない。何れは元の身体に戻る可能性もあるのだ。殿下のためにも、下手に強気に出るわけにはいかないのは明白だった。最も、私としてはどうしてこうも怯えたような態度をとるのか、理解し難ったのだけれど。


「お付きの者から、殿下が魔道具の事をお調べしていると伺いました」

「ああ、その事か」


 どうやら私が魔道具について調べている事をこの者に知らせた者がいるらしい。侍女や侍従といえども、彼らは監視役でもある。殿下は人付き合いが苦手で、腹心の部下という存在がいなかった。そのため、私が信用できると思った者に調査を頼んだのだけど…どうやら甘かったらしい。舌打ちしたくなるのを辛うじて止めた。


「あれは古の失われた呪具でもございます。何が起きるかわからない不確かなもの。どうか必要以上に関わられませぬよう」

「心配には及びません。王宮の書庫でそのような記述を見つけたら気になって調べたまでの事。実際に使うなどとは考えておりませんから」


 実際はそうではないが、今は下手に刺激しないに限る。セイナが元の世界に戻らないで済む方法を探していたが、面倒な奴に見つかったな、と苦々しい思いが広がった。そうは言っても、今はそれを悟られるわけにもいかない。


「左様でございますか。であれば…これは私めが処分致しましょう」


 何を?と言い返す間もなく、ヘンドリックが懐から取り出したのは…紫色の宝石が埋め込まれたブローチのような物で…あれは殿下が所持していた魔道具だった。


「いつの間に…それを…」

「侍従から殿下が何かを隠していらっしゃると聞きまして。念のため確認させて頂きました」

「勝手な事を!人の机の中を漁ったのか?」

「漁ったなどと人聞きの悪い。全ては殿下の御ためを思えばこそです」

「余計な事を。それは私が王宮の書庫で見つけたもの。返せ」

「なりません。これは何が起こるかわからない危険なものであれば。私共で処分致します」


 処分という言葉に、嫌な予感がした。それを壊されてしまえば…私達は…


「処分だと…どうやって…」

「簡単な事です。粉々に砕いてしまえばその力は失われます」

「粉々にだと…その様な…」


 最悪だ、と思ったと同時に、失敗したとも思った。そうだ、殿下は常に見張られて自由など一切なかったのだ。特にヘンドリック殿は要注意人物だったのに…

 彼は国王陛下の前では、殿下を大切に扱っているように見せていたが、実際はそうではない。しかも何かと父や私に取り入ろうとする姿勢が見え見えで、我が家の威光を笠に着て殿下を傷つけて楽しんでいるような男だ。そんな彼にあの魔道具が渡ってしまえば…


「それはクローディアが興味を持っているものだ。壊せば彼女が…」

「クローディア様が…?それでしたら尚更、この様な危険なものは残しておけませんぞ」

「な、何を…?」


 魔道具を手にしていたヘンドリックが、私の目の前でその魔道具を床に落とした。私はその魔道具が床に落ちるのを見て…はいなかった。


「ま、待って…!」


即座にその魔道具の着地点に向かって手を伸ばした。あれが割れてしまえば、私達は…セイナは…


「ぐぅううっ!」

「な…殿下…?」


 手を伸ばした先にあった魔道具は、幸いにも私の手の上に落ちて割れるのは避けられたが…その手をヘンドリックが踏みつけたのだ。私の手の上で…魔道具が粉々に割れた…


(ああ、セイナ…ごめんなさい…どうか…元の世界に戻らないで…!)


 私の願いも虚しく…身体の中から何かが砕けるような、壊れていくようなそんな感覚がしたと思ったら…急に目の前が暗くなっていった。手が…ヘンドリックに踏まれた手に魔道具の破片が突き刺さり…熱い熱となって私の意識を僅かな時間だけ保ったように感じたが…急速に暗い闇へと堕ちていくのを感じていた。



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