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私はヒロイン?

 あの後、まだ記憶が混乱されているのでしょう、ゆっくりお休みください、と若い女の子に言われた私は、強制的にベッドに寝かせられた。頭を打っているから、どんな影響が出るかわからないから…と言うのが先生の見立てだから仕方ないんだろうけど…

 私としては情報収集をしたかったのだが、最初に目にした女の子に、絶対安静です!動き回るなんて絶体にダメです!と言われたため、どうしようもなかった。あの女の子、可愛い顔しているが中々押しが強そうだ。とは言え、一旦情報をまとめたいので一人にされたのは幸いだった。


 名前はセラフィーナ、年は十七歳、髪の色はピンクで瞳の色は水色。


 これまでに得た情報から、実は私は一つの可能性を思い出していた。それはもう何年も前に読んだケータイ小説だ。もうタイトルすらも覚えていないのだが、ちょうどいま自分がいる状況に合っているのだ。


 そのケータイ小説は主人公がセラフィーナと言い、ピンクの髪に水色の瞳という今の自分と同じ外見をしていた。年は十七歳で、鏡で見た年齢とほぼあっているように思う。

 その小説ではセラフィーナはヒロインで、侯爵令嬢と婚約している王子と恋に落ち、嫌がらせをしてくる侯爵令嬢を断罪して結ばれるというストーリーだった…と思う。かなり昔の事なのでうろ覚えだが…


 読んだ時は、身分差の恋、それも婚約者ありの相手となんてロマンチック~なんて思っていたけど、いざ自分がその立場になったら…正直言って御免被りたかった。だって、婚約者がいる相手と恋に落ちるって、結局は浮気でしょ?まぁ、結婚していないだけマシなんだろうけど、小説の世界では婚約中の不貞は日本の不倫と同じくらいにご法度だった筈…だとしたらそんな尻軽男、こっちから願い下げだ。


 いや、その前に、ピンクの髪ってどうなのよ?社畜として生きてきた自分としては、こんなお花畑なキャラは相容れないし、これからこの姿で生きるのかと思うと軽く絶望を感じるのだけど…若いうちはいいけど、年とってもピンク頭だよ?…皺だらけになってもピンク頭…それってキラキラネーム以上に痛くない?


 ついでに言えば…私は昔からヒロインよりもライバルの女の子押しだった。大抵ライバルは青色系の髪の美少女で、クールだったり才女だったりで、断然そっちの方が共感できたんだよね。

 きゃっきゃうふふの可愛らしいぶりっ子なんぞ、私には無理!と言うか一番嫌いな人種なのだ。うん、会社にもいたよねぇ…可愛くてちやほやされている、仕事出来ない女…そいつは私の天敵だった…


 はぁ…どうしたものかしら…

 元の世界というか身体に戻りたいんだけど…

 そもそも、どうして私は別人になってるの?

 しかも記憶付きって意外に面倒じゃない?

 ああでも、元の私って死んだんだっけ?

 だったら戻れないんだよね…

 それに、この体の中の人はどうなった?

 う~ん、どうしたものかしら…



 一応私は自分の置かれた状況を少しだけ理解したが、明るい見通しは全くなかった。むしろ不安要素しかない。

 そして問題は今が何時なのか…だった。小説のストーリーが始まる前なのか、後なのか…これによって今後の対応が変わってくるから。そこは仕方ない、侍女にでも聞くしかないか…

 ここがあの小説の世界なら、今いる場所が危険な可能性は低いだろう。セラフィーナと家族の関係は概ね良好だった筈だ。まぁ、今がどの時期なのかにもよるのかもしれないけど…


 でも、王子と恋人同士になっていたならここに王子が来ないのも変よね。二人は相思相愛で、王子の方がのめり込んでいたのだから。小説の中では、階段から落ちるなんてエピソードはなかった。という事は、今はストーリ-が始まる前だろう…後なら私は王宮に移動している筈で、ここにはいないだろうから。


 どうしようかと今後の事を考えていると、ドアが開いてさっきの女の子が入ってきた。食事用のワゴンを押していて、その上には食べ物らしきものが乗っていた。


「お嬢様、お食事はいかがですか?」


 私の記憶がない事を心配してか、その子は恐る恐ると言った風に声をかけてきた。心配してくれているのが手に取るようにわかって、何だか申し訳ない。だってこの子が心配しているのは「私」じゃなく「セラフィーナ」なのだ。


「…ありがとうございます」

「ずっと寝込まれていらしたのですから、まずはスープからがよろしいでしょう」


 そう言うとその子は私にスープを手渡した。美味しそうな香りのお陰か急に空腹を感じた。うん、食欲があるうちは大丈夫だろう。有難く頂いた。


「あの…」

「どうされましたか?」

「私の事を…教えてくれない?まずはあなたのお名前から」

「え…あ…は、はい」

「…どうかした?」

「…いえ…私の事も…お忘れなのですね…」


 とりあえず情報収集を!と思って色々聞きだそうとしたら、凄く悲しい表情をされてしまった。これは…申し訳ない事をしちゃった。確かに自分が仕えている主人が自分を忘れてしまったら…凄く悲しいだろう。


「…ご、ごめんなさい…」

「っ!そ、そんな事はありません。記憶を無くされてお辛いのはお嬢様ですのに…申し訳ございません!」

「そんなに謝らないで。でも、出来れば記憶を取り戻したいから、色々教えて欲しいの」

「も、もちろんです!」


 という訳で、私はエレンと名乗った彼女から「セラフィーナ」の事を教えて貰った。

 案の定と言うか予想通り、私はあの「セラフィーナ」だった。気になっていた時間軸だけど、こっちも予想通りストーリーが始まる一月ほど前だった。

 

 となると、私はストーリー通りに王子と恋愛して、その婚約者を断罪しなきゃいけないわけ?

 う~ん、かったるいわ~どうしようかなぁ~




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