3屍 世界は陰謀と不幸で溢れて
口をすすがせている間。音取は考える。
「やはり、前世のゾンビとは若干違いますね。これは所謂ウイルス的なもので作られたゾンビなのでしょうか」
考えるのは前世のゾンビとの違い。調べてみた限りかなり違うところがある。
まず、血の流れ方だ。前世のゾンビは血を必要としなかった。そして、顔色も非常に悪く、ゾンビにしたばかりだと青白くてあまり綺麗にも見えない。が今回のゾンビは褐色が良く、肌にも赤みがあった。まるで血が通っているかのように。
次の気になる点は、体の内側。前世のゾンビはゾンビに変えると死体の鮮度にかかわらず全て内部が腐った。喉の奥は勿論、排泄のための器官なども腐食していた。だが見てみた限り、今回のゾンビは全く腐ってはいなかった。
それだけでなく、
「ヴ!ゥゥゥ///」
「おや。先に出ましたか。じゃあ、私も出してしまいますね」
普通にソッチの方の感覚があった。
音取は押し倒し、そういう行為をしてみたのだが、普通に膜を破れば血は出たし、弱いところをやられるとそれに伴って液体も出てくる。
ゾンビとしての扱いはできているが、なんとも彼の知っているゾンビと比べて人間に近い状態だった。
「興味深いですねぇ。どの程度人間と同じなのかの確認は必要ですが、前世のゾンビよりも楽に楽しめそうです」
彼はそう呟いて笑い、次のゾンビへ手をかける。学校内は、まさしく彼のための天国となっていた。
ただ、流石に学校内だけでは、
「……食糧が尽きそうですね。学校の外に出る必要性がありそうですか」
と言う考えになった。
彼は自信のため、学校の外に出る。だが、果たして学校の外であろうと彼に脅威はあるのだろうか?近づいてきた者に気付けば使役をすれば良い。もし気付かなくても、彼の周りには使役した者が護衛となってくれる。近づかれることなどありえはしない。
「いやぁ~。良いですね。随分と私に優しい世界になりましたよ」
彼はそう言って笑みを浮かべる。
彼のこの先の未来に、闇など1つもなかった。
……と言うのが、とても特殊なネクロマンサー君がゾンビの溢れる世界にいた場合である。しかし、勿論彼以外にネクロマンサーなど存在しない。
少し、他のものたちの様子も見てみよう。
《警察》
「やめて下さい!武器庫に入らないで下さい!逮捕しますよ!!」
《勇気というものをはき違えた青年》
「うるせぇ!俺は英雄になるんだ!皆を守るために武器が必要なんだよ!!」
《楽観的に都合の良い未来を思い浮かべる日本人男性》
「へへへっ!こんな世界にはもう法律なんて意味ないだろ!逮捕したってどこに収容するんだ?入れるところがあるのか?こんなことをしてる暇があったら、武器を持ってゾンビ達を食い止めてくれよ(ギャッハハッ!ここで武器を全部俺が奪って、守って下さいって女に頭を下げさせるんだ!そして、対価としてその体を……ゲヘヘヘッ!)」
《一般避難民(日本)》
「ど、どうしよう。なんとかここまでこれたけど、食料はもう残り少ないって聞いたぞ。本当に大丈夫なのか?」
《銃火器大好きおじさん(海外)》
「ヒャッハァァァ!!!この新型のマシンガンを試せるぜぇぇ!!!いや~。なんて素晴らしい日なんだぁぁ!!!!」
《とある報道局》
『現在日本政府の閣僚、及び官僚は9割がこの未知のウイルスに感染したと考えられています。各地の警察署には銃火器を求める市民が集まっており、市民と警察官の小規模な戦闘が起っています。更に海外ですと、一般市民が銃火器を乱射し、感染者、非感染者を関係なく無差別に射殺しているという話も入ってきています。例え銃火器が手に入ってとしても無闇に……「ヒャハッハァァ!!!こんなクソ番組より俺様を見やがれぇぇ!!!」っ!?キャアアァアァァァァァァ!!!!?????』
《とある国のトップ》
「え?押しちゃう?この全世界対象核ミサイル全発射スイッチ押しちゃう?ねぇ?押しちゃう?押しちゃって良いよね?」
《とある国のトップの補佐》
「やめてください!我が国の市民の9割9分9厘が死亡してしまいます!しかもこの国がそのようなことをすれば他国も報復などと行って核ミサイルを発射する恐れがありまして更に被害が……って、あああぁぁぁぁ!!???押したぁぁぁ!!!?????」
《とある海上逃亡者》
「ふぅ~。良かったぁ。個人所有のクルーズを買っておいて。これに暫く乗ってれば感染者から襲われることはないだろ……って、何だ?なんかが向こうの山に……」ズドオオオオオォォォォォンッ!!!……・「はぇ?」
《とある研究者》
「キヒヒヒッ!世界は混沌に陥った。私の力1つで世界は終わるのだよキヒヒヒヒッ!治療薬を各国に高額で売りつけて、世界一の金持ちに……って、あれ?レーダーに反応?何か飛んできてる?え?こっち来るの?やばいんじゃ……」ズドオオオオオォォォォォンッ!!!
《とある組織の構成員》
「ボス。例の研究者が例の国のミサイルに巻き込まれてしまいやした。……お嬢様の感染を治療する手立ては……」
《とある組織のボス》
「やめろ!それ以上言うな!私は何があっても、確実に娘を助ける!!例え子の命に代えても!!」
こうして世界は、混沌に包まれていった。それこそは誰かのもくろみ通り。だが、その誰かの願いもそれ以上は敵わなかった。
この世界で得をするのは誰なのか。それは最初から分かっている様なものだった。
「ゾンビが溢れる世界になりましたが学園に潜むネクロマンシーには天国です」《完》
この作品は一旦ここで終了です!
この作品の他にも同じような短さの作品を投稿しているので、作者のページから「長編化予備群」のシリーズを覗いて頂ければ!!
人気があった作品は長編化します。勿論この作品も……チラチラッ(ブックマークや☆をつけて頂ければ、続きが書かれるかも……