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2屍 世界は手駒で溢れて

「ゾンビは経験値にはなるんですね。……不思議ですがこれならレベル上げも楽そうです」


音取にゾンビのステータスは見れないが、自身のステータスを見ることはできた。そこで確認した限り、自身のレベルが上がっている。ゾンビを倒して上がったようだ。

単純に生き物を殺して、というか動く存在を倒してレベルが上がったのかと思うかもしれないが、この世界での普通の生き物を殺してもレベルは上がらない。

虫でもは虫類でも哺乳類でも。普通の生物の命を奪うだけではレベルが上がることはなかった。

しかし今、ゾンビを倒したことでレベルが上がった。


「面白いですね。私と同じく異世界から転生してきた人間がいたのでしょうか?……いえ。そうなりますとわざわざこの大規模な感染を起こした意味が分かりませんね」


彼はこの事態が起った原因に悩む。

が、


「まあ良いです。レベルが上がるなら上げていきましょう」


何でもないようにそう言って、使役した男子のゾンビへ先程と似たような指示を出した。狙うのは主に男子生徒の使役していないゾンビ。男子生徒は経験値に変え、女子生徒のゾンビは使役した。

男子だけ殺して女子は生かすなんて、そういうハーレムを望んでいるのかと思うかもしれない。……まさしくその通りだ。と言うか彼は、普通の異性ではなくアンデッドにしか好意を示せないという少し特殊な性癖の持ち主なのだ。


「いいですね。学園の天使なんて言われていた人も普通にゾンビになってますし……やはり美しい方がアンデッドになるのは素晴らしいです」


彼は一片の曇りも感じさせない笑みを浮かべる。だが、発言はかなり狂気じみていた。

数時間すると、学校内の全てのゾンビの討伐と使役が終了する。一応安全は確保された。あくまで一応ではあるが。


「……生き残りはなしですか。少しくらいいても良いと思っていたんですけどね」


学校には彼以外の生き残りがいなかった。

彼の読んだことのある漫画や小説ではこういう場合、生徒会長などが指示を出してバリオケードを作って……みたいなシナリオがあった気がしたのだが、


「普通に生徒会長もやられてますね」


彼の目の前には、虚ろな目をした生徒会長が。「あ゛ぁぁぁ」と独特なうなり声を出しながら、口の端からよだれを垂れさせている。

一見心をこわされただけのようにも見えなくもないが、首筋に歯形が、そこから血も出ている。


「折角使役した女子の皆さんも……こんな状態だと襲う気にもなれませんね」


流石に怪我をしていて血だらけな女子に相手をしてもらう気にはなれなかった。変人で性癖をこじらせた彼であっても、というか、だからこそ、面倒なこだわりを持っているのだ。


「回復させたいですねぇ。……前世と同じ方法で良いのでしょうか?」


一応ゾンビの傷を回復させる方法は知っている。そして、前世で使役していたゾンビにもその方法でやらせていた。

なのだが、正直この世界でやらせるのは気が引けるというのが正直なところだ。なぜなら、


「……まあ、試すしかないですよね。皆さん、倒れている死体を好きに食べて良いですよ」


同族の死体を食べさせる必要があるからだ。前世では何も気にすることなくやれたが、今世では倫理観(感染者を容赦なく殺害できる程度の)やら生物学的な知識やらを持ってしまった所為でかなり気が引ける。

哺乳類が同族を食べてしまうと病気のリスクが……みたいなことも知ってしまっているのだ。正直もの凄く気が引ける。

が、すでに彼は命令はしてしまった。倒れた男子生徒達の死体に女子が群がり、回復を行ない始める。……そう。これは回復だ。あくまでも、回復するための好意である。


「だから、私は何も間違えてない……うん」


無理矢理そうやって自身に言い聞かせる。彼の精神もまたキリキリと痛めつけられていた。この世界に自身の精神が染まって行っていることを感じるのであった。

少し胸の痛みを感じながら数分。


「おお。もう傷は治りましたか。いいですね」


ずらっと並んだ女子生徒達。彼女たちの傷は綺麗になくなっていた。……ただ、マナーなど一切気にせず血しぶきの出る者を犬食いした所為で、全身はかなり綺麗とは言えない状態になっているが。

とはいえ、汚れたのは手や顔、それに服。であるならば、


「とりあえず手と顔を洗ってきて下さい。きちんと並んで、割り込みなどはしないようにして下さいね」


「「「「ヴゥゥゥ」」」」


彼の言葉に従い、動き出す女子生徒達。それぞれ水道へ向かい、列になり、顔や手を洗った。ただ、洗い方もかなりひどく、袖口だけでなく全身がびちゃびちゃになっているが。

それでも彼としては構わない。どうせ服など、


「洗い終わったら、制服を脱いで窓際に干しておいて下さい」


脱がせてしまうのだから。

靴下と下着だけになる女子生徒達。彼はその光景を満足そうに眺める。

そして、


「では、まずはそこのあなた。こちらへ来て下さい」


1人の女子生徒を手招きする。そして、体のチェックを行ない始めた。

前世でのゾンビの特徴と、今回のゾンビの特徴を比べるのだ。皮膚を触り、目に光を当ててみて、そして、体の内部に手を入れてみる。


「……あっ。口の中を洗わせるのを忘れてましたね」


そこで気付いた。顔と手は洗わせたが、口の中などは洗うように指示を出していない。


「……はぁ。もう1度洗わないといけませんか」

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