恋するリーゼント
翌日、大雨。
灰色の空からは、大粒の雨。
ボタボタと、重たい音を響かせていた。
あたし達は千葉ちゃんに連れられ、女子部の別棟にやってきた。
ここは特別教室ばかりで、普段はめったに来ない。
しかも……。
『茶道教室』
あたしの記憶では、一度もお邪魔したことがない。
マナに聞いても、首を振るだけでわからないらしい。
なんで?ここなの?
「じゃあ、入って適当に座って。」
千葉ちゃんにうながされ、中に入る。
初めての茶道教室は、畳の匂いがした。
まるで、学校じゃないみたい。
「ん?」
ここは土禁?というか上靴禁止ですか?
入ってすぐの所に靴箱。
教室の中は畳の和室。
「げげ!!」
靴箱にいかにも洗ってなさそうな、かかとを折って履いていたような上靴が…。
近くによって見ると……デカイ!!
だ、男子。もう、男子来てる。
「ちょっと誰か先に行ってよ!」
「嫌よ!」
「ほら、行きなさいよ。」
なんて、靴を脱いだ後は小競り合い。
みんな、一番にはいるのは嫌らしい。
男子の視線を一気にうけるのは、久しぶり過ぎて怖い。
「しょうがないわねぇ」
ウララは例のスマイル。
ごちゃごちゃしている、あたし達を尻目に堂々としている。
やっぱ、度胸あるわ。
なんて、感心していたのに……。
「きゃっ!」
なぜか、一番に入ったのはペコ。
しかもつまずいたのか、スライディング。
そのまま、一番手前にいた男子の膝にタッチした。
「いひゃ~い。」
ペコ…。
お気の毒に。
ん?また何か食べてる??
「ウララ。こわっ!」
おどろいた、マナの声。
マナが身振り手振りで、説明している。
どうやらウララは部屋に入る直前に脇によけたらしい。
それですぐ後ろにいたペコの背中を押し、一番に入らせたのだ。
なんて……恐ろしいはやわざ。
「あああ、あのぉ……。」
怯えたような声。
ペコは転んだまま、なんてことないって顔してる。
という事は、ペコに膝をタッチされた男子の声?
あたしは、転んだペコから視線を上げた。
「!!」
ありえない。
この平成の世に……。
リーゼント!!
しかも正座で!
もう1つおまけに…。
赤面!
天使のように愛らしいおつまみ少女、ペコ。
その手が触れただけで……。
リーゼント赤面。
「やぁだ。かわいい。」
なんて、余裕のウララ。
ウララの声でリーゼント、また赤面。
きっと、もうこれ以上赤くなれないくらいに真っ赤。
こんなんで大丈夫ですか?
あたし達。
「いいんちょー」
甘いペコの声。まだ、寝転んだままだ。
「何?」
「種出したい」
「えぇ!」
種って……この娘はなにを食べているんだか。
「ああ、あの。自分持ってるんで。これどうぞ。」
カチカチにカクカクと、動くリーゼント。
壊れたロボットみたい。
ポケットからティッシュを取り出した。
って、男子でなんでそんなの持ってるの??
「ありひゃと。」
ペコは転んだまま、リーゼントの差し出したティッシュに種を出した。
あの状態だと、きっと上目遣い…。
「!!」
これ以上赤くなれないと思っていたのに……。
人の顔が、こんなに赤くなれるの?
きっと、今。
誰の目にも明らかだったと思う。
リーゼント君。
恋に落ちたね…。




