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夕暮れビスコ1

教室に戻ると、もうお昼だった。

今日は学校に推薦入試の結果を聞きに来るのがメインで、このあとはお弁当食べて帰ろうかなぁ。

なんて。本当は、帰っても暇なんだけど。


「暇だぁ…。」


だって。

あたし達は、これからの学校生活でやる事がない。

学校も自由登校。

受験生は違う教室に集まって勉強したり、塾や予備校に通っているはずだ。


だけど。

あたし達は、もうやらなきゃいけない事がない。

だけど、高校生活は残っている。

遊んでいいけど、問題は起こせない。


がらんとした教室が、あたし達の居場所。

もう、集団行動じゃない。ひとりひとり、自分で決める……未来。


そんな事を考えながら、いつも通り弁当を取り出しマナと食べる。

ウララは、いつの間にかいなくなっていた。

カバンもないし、早退したのだろう。


カタカタと、風にゆれる窓。暖かい教室の外は、薄く曇った冬の空。

灰色の世界。


でも、ここはカラフル。

律儀なお母さんの、手作り弁当。

赤、緑、黄色。

プチトマトもブロッコリーも食べないのに。

彩りだからって中学の時から、変わらず入ってる。

甘やかされてたのかなぁ、あたし。

そんなお弁当とも、そろそろお別れかなぁ…。


「……でもさぁ」


マナが少し声のトーンを下げた。


「ゆいが立候補してくれてよかった」


「ん?」


マナが声のトーンを下げるのは、真面目に話してる時。


「なんか、このまま終わるのさみしくない?」

「そう……だねぇ。」


何かやり残したような……。まだ、何かやれるような……。


「でも、あの状況でやりたくても手をあげるの恥ずかしかったし…。」


ん?あたし、そんなに恥ずかしい事してたの?


「みんなびっくりだよ!だってゆいって真面目じゃん。まぁ中身はおもしろいんだけど。」

「えぇ?マナがおもしろいんじゃん。」

「そんな事ないって。それに……。あたしが手をあげてたら、絶対また変に言われてたよ。男好きとかさぁ。」

マナはお弁当を食べるでもなく、箸でつついていた。

きっとまだ、気にしているんだ。


「何、言っちゃってんの!男好きって、女子が男子を好きで何が悪い?基本的にみんなそうなんだよ。それを表に出すか、どうかの違いだけだよ。もう…。トマト食べな!」


そう言って、マナの弁当箱にプチトマトをねじ込んだ。


「あ……。そういえば、そうじゃない人がいた。」


思わず、あたしは箸を置いた。


「イッキ!男が嫌いって言ってたじゃん」

「あ、そうだっけ?」


やっぱり……聞いてなかったのか。


「どうしよう?」

「どうしようって……。いいんじゃない?さっきゆいも言ってたじゃん。」


真っ赤なプチトマト。

マナはヘタをつまんで、ぱくっと食べた。


「基本的に、女子は男子が好きなのよ。」


星の形みたい。

マナの手に残された、プチトマトのヘタを見ながらそう思った。


「苦手なのは、食わず嫌いだからよ。知れば好きになるかも……よ?」


不敵な笑顔を浮かべたマナ。

あたしだってイッキの事言えない。


プチトマトだって……男子だって。

食べた事ないんだから。

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