星降る夜に2
あぁ…。
行きたくない。
「うん。うん。わかった。で?はいはい。オッケー。」
よほど格闘技がみたいのか、ペコの足取りは軽くて早い。
あたしは、そんなペコに引きずられて歩いている。
「ちょっと~。委員長。しっかり歩く!」
「…だって行きたくないんだもん…。」
「な~に?」
「…別に…。」
真っ暗な夜。人も車も通らない。
でも、不思議と怖くない。
この辺りには悪い人はいない、きっと。ただ、人がいないだけ。
街灯は等間隔にずっと続いている。
「委員長。」
「なぁに。」
ペコが甘えるでも脅すでもない、普通の声で話しかける。
「どっちと一緒になりたい?」
「えぇ?」
ペコは真面目な顔をしていた。
「どっちと一緒にいたい?」
「どっちって…。」
リョウか柴田。多分、その話。
「ごめんね。聞いちゃったんだ。マナから…。委員長の昔の話。」
「…そっか。」
あたしは空を見上げた。
気持ちが沈みそうな時は、上を向く。あの頃、よくひとりで空を見上げていた。
「…笑っちゃうよね。高校デビュー?って感じ?暗い中学生だったくせに、今じゃこんな…。調子にのっちゃってる?って感じで…。」
下を向くと、引力で…。
簡単に涙が落ちてしまうから。
「クラスにも馴染めなくて、友達もいないような子だったのに。何が、委員長?みたいな…。」
あたしは、いつものように明るく笑うように話した。
「委員長。ペコは笑わないよ。」
「…なんで?」
「おかしくないもん。」
「おかしいよ…。」
ペコは、真っ直ぐにこっちを見ている。
あたしは、視線に耐えられなくて下を向いた。
「こりゃ。」
むぎゅ。
ペコはあたしの頬を、両手で掴んだ。
むぎゅ。
「…いひゃい。」
「すーまーいーるー。」
無理やり、口角をあげさせて笑顔をつくる。
…めちゃくちゃだ。
「残念だよ!!」
あたしが、高校デビューの暗いやつで?
「ペコが、委員長と一緒の中学だったら…。」
むぎゅーう。
「い、いひゃい。」
「そんな思いさせなかったのに!」
そう言って、今度はあたしを抱きしめた。
ペコの茶色いふわふわの髪が、少し冷たくて…くすぐったい。
「そんな学校、殴りこみに行ってやる!」
「…いや。それは無理でしょ。」
「?」
「もう、3年も前の話しだから…。当時の生徒どころか、いなくなった先生もいるんじゃない?」
「…そっか。」
あたし達は、少し笑って歩き出した。
「あたしもペコと同じ中学が良かった。…見たかったなぁ。ヤンキーのペコ。」
「や、ヤンキーじゃないもん。ちょっとやんちゃな?」
首をかしげてかわいく笑う。
ペコはやっぱり愛らしい…元ヤン。
「あんまり言うと、委員長も…。あっ!」
「なに?」
「格闘!!急がなきゃ!!」
手を繋いで走り出す。
女子校だけど、誤解しないで。
意外と女子校に、同性愛はいない。
「でさぁ。委員長。」
「何?」
「好きな人と結ばれてね。」
「何それ?」
冷たくとがったお月様。
たくさんの星の下。
あたし達は駆け抜ける。
きっと今だけ。
大人になると、こんなに走れない。
恋愛も。
大人になる前にした方が、素敵なのかなぁ…?
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