ハーレム委員長1
コンビニを過ぎると、お社が見えてきた。
「あそこでお祭りするんだよ。」
イケメンが指差す方には、神社らしき建物。入り口の鳥居からは、離れている。ちょうど、学校の校舎とグラウンドみたい。入り口から見て、奥に神社があり手前は広場になっている。小さな池と、緩やかなアーチ型の赤い橋。雪でも降れば絵になりそうだ。
「あたし達はどこに行くの?」
「この先の公民館。昼食まだだろ?食って働けって。」
公民館…。大丈夫かなぁ…。すっごくボロだったら…怖いなぁ。
「ほら。あそこ。」
和風の平屋が見えた。広い敷地に、小さな建物。木造の立派な日本家屋。入り口に大きな木の看板。達筆で『公民館』と書いてある。
「うわっ。これ新しくない??」
「田舎は公民館に、カネかけるんだろ?年寄りしかいないんだし。年寄りの憩いの場?みたいな。」
そういわれると、納得?家の近くの公民館なんて、もっともっと小さくってボロだ。小さい頃に集められた時は、子供が部屋にあふれていたっけ。
「ゆいー!おそいよー!」
マナとイッキが、入り口で待っていた。あたしは急に恥ずかしくなり、イケメンから体を離した。
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あたしが公民館に着いて、すぐに柴田達もやってきた。
どうやら、イケメンはコンビニに寄るために遠回りしたらしい。よっぽど喉が渇いていたのかなぁ?
昼食はカレーだった。しかも…。
「これくらい食べなさいよ!まったく、都会の子供は遠慮しちゃって…。」
イケメンいわく元ヤンだったらしい、おばさんの大盛りカレー。
ヤンキー全盛期に青春を送ったらしく、リーゼントに当時の武勇伝を語っていた。
見た目は、ふっくらした人の良さそうなおばさんなのに…人ってやっぱわかんないもんだ。
「残しちゃダメよ。」
おばさんはそう言い残して出て行った。
ということは…。
カレーの大食い大会?
「私。絶対、食べれない…。でも、残せない…。」
イッキは大盛りカレーを見ただけで、戦意消滅。
みんな黙々と食べ進める。
どうしよう…。
「にんじんキライ。」
ポツリとつぶやいた。
とたんにみんなの視線が集中。
「お前、どんだけ子供なんだよ…。」
イケメンがあきれている。
「玉ねぎも微妙なんだよね…。実は野菜が嫌い…なんちゃって…。」
「しょうがねーなー。」
イケメンが、あたしのお皿からにんじんを食べる。あっという間に、にんじんが無くなった。
「うわぁ。アリガト!!」
「そのかわり、残すなよ。おばさん、マジ怖えから。」
「ホントに?」
「俺が非行に走らなかったのは、あのおばさんのせい?ってかおかげかな?ちょっと悪さしたら、すっげー怒るんだから…。」
それは…怖いかも。
「そんなぁ…。」
イッキが恨めしそうに、カレーを見つめている。
しょうがないなぁ。
あたしは、カレーを一気に食べ進めた。
「手伝ってあげるよ。」
「えっ。」
「ちょっと!ゆい本気?体のどこにカレーが消えてるのよ!」
胃、だと思うけど…。
「にんじん以外なら、もうちょいいけそうな気がする…。」
あたしは、空になったお皿とイッキのお皿を交換した。
カレーはおいしかったし…イッキだけ食べれないのもかわいそう。
「コラ。ゆい。無茶すんな。」
柴田が、横から皿を取り上げる。
「こんなに大盛りに注ぐ方が悪い。本城さん、無理しなくていいよ。代わりにリョウが残した事にすればいい。リョウだったらおばさんに怒られ慣れてるだろ?」
腹黒いぞ!柴田。イケメンが席外してるからって。
「や~だ。やっぱり、2人はそういう事なのね?マナの思った通り。」
「だから、違うって。」
「ゆいって呼んでたじゃない。さっさとくっついちゃえばいいのに。」
柴田のやつー!!
スプーンを持った手に力が入る。これがフォークだったら絶対に柴田に刺してたんだから!
「おーい。おばさんが食べたら、神社の掃除に行けって。あ、あと女子は無理して食べなくてもいいって。」
席をはずしていた、イケメンが帰ってきた。良かった。柴田の話聞こえてなくて。
ほっと胸をなでおろした。
「大丈夫ですよ。まだ、ハーレムゴールのチャンスがあります!」
なぜか、山崎君があたしに耳打ちした。
ハーレムゴール??
首をかしげたままのあたしに、山崎君は親指を立てたこぶしを見せながら
「グッジョブ!」
って言って出て行った。
ハーレムゴール?
全く意味がわからない。これも、漫画やアニメの類かしら??
「木村さん。カレーもういいみたいです。片付けて掃除にいきましょ?」
「ねぇ、イッキ。ハーレムゴールって知ってる?」
このメンバーでわかりそうなのって、イッキだけじゃない?
「えぇっと…。なんで木村さん、そんな事きくんですか?」
「えっ?」
そんな事なの?山崎君に言われたって…言いにくいなぁ。
「いやぁちょっと、聞こえたんだけど…。」
「よくは知らないけど、ゲームの事じゃないですか?」
「ゲーム?」
「恋愛ものの…。多分、みんなに好かれる…みたいな。」
そんなのやったことないけど…。
「そうなの?恋愛ものって、そんな事まであるの?」
てっきり、カップルになって終わりかと…。
…ん??
山崎君、あたしの事そういうゲーム感覚で見てる??
ていうか、ハーレムって!!
冗談じゃない。
「行こう!掃除!」
あたしは立ち上がり、神社に向かう。
山崎君。見つけたら、ほうきで殴ってやる!!




