嘘と秘密とドSな…4
「友達の彼氏に送ってもらったなら、最初からそう言えよ。」
因縁の並木道を2人で歩く…。昨日、柴田が女と一緒に歩いていた並木道。何で一緒に歩かなきゃいけないの!2人きりになりたくないのに!!
マナとウララの勘違いのせいで、あたしは柴田と一緒に帰る羽目になってしまった。
マナのやつ柴田には「今日はちょっと用事があるから、帰りは別なの。」って言いながら、あたしには小声で「仲直りするんだよ♪」だって…。絶対あとで訂正しなきゃ!
柴田とあたしは家が近いけど、マナだって駅までは一緒なのに…。せめて駅までマナが一緒だったら、良かったのに。店を出てから、もうずーっと柴田はあたしを尋問してる…。
「おい。聞いてんのか?お前、今日ずーっとおかしいぞ?」
「え?ずっと??」
「みんなで話ししてる時だって、うわの空だったし。ぼーっとしてるのかと思えば、眉間にしわを寄せてなんか考え込んでたみたいだし。」
うっそ…。あたし、全然普段どおりにできてないじゃん。
「合宿なんて初めてだし…。いろいろ考える事があるの!だいたい柴田が余計な…。」
「余計…か?」
最近柴田はよく、こんなふうに真面目な顔を見せる。
あたしは、そんな柴田が苦手だ。子供の頃とは…違うから。
「俺が心配するのは、余計な事か?」
「えっ…。」
柴田と目が合う…。
「気にしてないって言うけど、本当は気にしてるんだろ?中学の時の事。」
「もう、その話はいいって。あたし先に行っちゃうよ~。」
軽くかわして歩きだす。
「ゆい。」
「ん?」
呼ばれて、振り返る。
一瞬なにが起こったか、わからなかった。
「ちょっ。柴田。」
柴田があたしを抱きしめている…。
「前も言ったけど、俺はゆいともっと一緒にいたいんだ。」
「い、いるじゃん。昨日も、今日も会ってるんだし…。」
あたしはわりと冷静だった。柴田もあたしもダウンを着ていて、抱き合っていても相手を感じない。そう、満員電車とあまり変わらない。
「ゆいが昨日見た女は、彼女じゃないから。もう、連絡も取らないし…。」
「いや…そういうの別に…関係ないし…。」
「俺は…。」
「ぶっ…。」
真面目な顔の柴田、抱き合うあたし達。なんか可笑しくなって笑ってしまった。
「ご、ごめんね。ははっ。なんかね、ダウンきてると変な感じしない?」
「なにが?」
さすがにムッと来たのか、柴田は不機嫌だ。
「なんかね、着ぐるみきてるみたいじゃない?で、なんとなく…。抱き合っていたら、おすもうさんの着ぐるみきてるような気がしてきて…。」
「なんだ、それ。」
そう言いながら、あたしに近づいてきて、
「痛い!!」
「お前が悪い。」
デコピンされた…。
「ほら、帰るぞ。」
「はいはい。」
また、2人で歩き出した。
「まぁ。しょうがねーか。ゆいは意外と根に持つからな。もうちょい待ってやるよ。」
「…柴田の方が性格悪いよ、絶対。」
あたしはまだ、おでこをおさえたままだ。
「本気でデコピンしたでしょ?まだ、痛いんだけど?」
「…マジで?」
柴田はあたしの手をどけて、おでこを見ている。
「赤くなってるかも。」
「嘘!ちょっと柴田、謝りなさいよ!!」
痛かったんだからね!
「ごめんね。」
「!!」
柴田はあたしのおでこに近づき…キスした。一瞬だけの接触。
「ちょ、ちょおっとー!」
油断していた。さっき抱きしめられた時だって、いきなりだったのに…。
「これでわかっただろ?俺が心配するのが。」
「な、何がよ?何するのよ!」
「隙があり過ぎなんだよ。次はおでこじゃ済まないかもよ?」
おでこじゃ済まないって…。
「俺。ゆいが好きだよ。だから、ちゃんと考えて。卒業までは恋愛禁止でもいいから。」
「そ、そんな…あるわけないじゃない。だって幼なじみなんだよ…。」
「だから、考えて。それから…。」
柴田が近づく。あたしはしっかり、カバンを胸に抱える。また、何かされたら大変だ。
「…委員長がんばれよ。あのクラス、わけわかんねーけどおもしろいじゃん。ゆいも楽しそうだし。」
「うん…。」
「じゃあな!合宿楽しみにしてるから。何か困った事があったら、俺に言え。」
「…わかった。」
変な気分だ。あたし、柴田に告られたんだよね?ドキドキとか、そういうの…なかった。ただ、不思議。
家に帰ってから、柴田の事を考えた。
「困った事があったらって…。」
困った事。あるけど…。
「言えるわけないじゃん。」
中野君の話。柴田が聞いたら、絶対怒る。いや…怒られる筋合いじゃないんだけどなぁ。
「あぁ。面倒くさい!」
そう言って、ベッドに倒れこんだ。中野君の事、柴田の事、合宿の事…。
机の上で携帯が鳴る。
ゆっくり起き上がり、確認する。
ディスプレイには中野君の名前が…。
「も、もしもし?」
「…今、ひとりですか?」
「うん。今、あたしの部屋。」
「柴田君は?」
「…帰ったけど。」
「けど?」
「何でもない。中野君こそ、どうしたの?」
普段電話なんてかけてこないのに…。
「声が聞きたかったんですよ。嘘つきの。」
「う、嘘つきって!」
誰のせいでこんなことになったと思ってるの??
「冗談です。でも、僕は口止めなんかしてませんよ。秘密にしたのは木村さんの意思でしょう。」
「そんな。だって、言えないじゃない。」
「僕のした事がですか?僕の話した事がですか?」
「えっ。」
あたしの首に手をかけた事、頬にキスした事。死を口にした事、賭けをした事。
「全部言えないわよ!」
「…そうですか。でも、秘密を持つのは大変ですよ。」
もう、すでに大変です。中野君のおかげで…。
「まあ、秘密なんて誰しもいくつか抱えてますからね。」
「…だから、用件は?」
「あぁ。今日の木村さんはとてもかわいかったですよ。」
「はぁ??」
「必死に嘘をついたり、恥ずかしさを我慢していたり…。」
何それ。絶対あたしの事、バカにしてるよね?
「羨ましいです。」
嘘だ。
「木村さん。合宿が楽しみですね。」
「…うん。」
「今度は一晩中一緒ですから。たくさんリハビリが出来そうです。」
「リハビリって??」
「わかりません?今日もしたじゃないですか。テーブルの下で。」
リハビリって、アレのこと?そういえば、前も頬にキスしてリハビリって…。
「やだー!!もう、絶対ヤダ。あんなのリハビリじゃないもん。セクハラだよ。セ・ク・ハ・ラ!」
さんざん人の手を撫で回しておきながら、何がリハビリだ!!
「何を勘違いしてるんですか?僕の心には、なんの下心もありませんよ。木村さんは僕のタイプではありませんから。そう、言いましたよね。木村さんこそ、僕をそういう目で見ないで下さい。セクハラですか?」
もう、なんもいえねー。
「もう、いい…。」
「そうですか。では、また。合宿楽しみにしてますよ。」
電話が切れた後も、あたしは携帯を握ったまましばらく動けなかった。
『合宿楽しみにしてますよ。』
中野君の声がリフレインする。
…あいつは悪魔だ、絶対。
楽しみにしていた合宿なのに、なんだか恐ろしい予感がする…。
あぁ。神様。あたしは生贄ですか?合宿では何もありませんように。
夜空を見上げて、祈った。
あたしの祈りは届くのだろうか…??
感想よろしくお願いします。




