女子校の憂鬱2
変化が訪れたのは、その翌日。
晴天の霹靂。
たぶん、そんな感じ。
「木村さん、真奈ちゃん。先生が呼んでるよ。」
遅刻の常連、浦沢久美子だ。
真奈は一年の時、一緒のクラスで仲が良かったらしい。
あたしはその頃、真奈とはクラスが違った。だから浦沢さんの事は、良く知らない。
だけど、彼女。
遅刻の常連どころか、欠席、早退の常連でもある。
三年で同じクラスになっても、ほとんど一緒になった事がない。
「視聴覚室に来〜て下さいって。」
浦沢さんは、ニコっと笑顔で首をかしげた。
なんて愛想の良い……。
これが浦沢スマイルなのか?
彼女は遅刻をしても、早退をしても、欠席をしても先生に怒られない。
……謎の女。
「は〜い。了解。ほらっ!ゆい、行くよ」
あたしは人並みに欠席しても、遅刻なんてしない。
悔しい事に、根が真面目。
悪にあこがれる平凡な女子……なんちゃって。
真奈は、あたしとは違う。
吉井真奈。
三年間で数え切れないくらいの人を好きになり、そのうち三人くらいと付き合った。
……交際期間は、どれも短かったけど。
男と別れるたびに「やっぱり、ゆいと遊ぶほうが楽しい!」なんて言うけど、
男と付き合い始めるたびに「ごめんねっ」って付き合いが悪くなる。
きっと、恋愛体質。
そんな真奈の事を悪く言う女子もいるけど、あたしは嫌いじゃない。
真奈はこう見えても、苦労人。
シングルマザーの母親に負担をかけないように、バイトで小遣いを捻出している。
見た目こそ派手だけど、小学生の頃からやってる料理は主婦並みだ。
「は〜い。」
気が乗らなくても、先生の呼び出しは絶対!!
早足で廊下を歩く。
後ろから、真奈と浦沢さんがゆっくり歩いてくる。
あぁ。マイペースな2人がうらやましい……。
視聴覚室につくと、もう何人か集まっていた。
女子はいつでも誘い合うから、教室の中は小さなグループが点在している。
知ってる顔が数人。
軽く手を振って、挨拶する。
でも、グループの垣根は越えない。
そんな事したら、大変だ。
「木村さん、これどうぞ…。」
「あ、どうも」
手渡されたのは、来年度のパンフレット。
黒髪のロングヘア。
学園1の美少女が、笑顔で表紙を飾っている。
「あの、本城さん。今日は何の集まりなのかなぁ?」
パンフレットを配っていた、本城さんに聞いてみた。
本城さんは元美術部で、すごく繊細なラインの絵を描く。
文化祭で、彼女の絵を私が褒めた。それ以来、少しだけ仲が良い。
彼女もあたしと同じように真面目。
肩の上で切り揃えられた黒髪が、それを表している。
「それが……。パンフレットを配る事しか頼まれていなくて……」
「そっか〜。」
「ほら、ゆい!こっちきて座んなよ〜」
真奈は浦沢さんと、さっさと後ろの席に座っている。
3人分のパンフをもらって、席につく。
「秋山さんって、写真より実物のがキレイじゃない??」
「え〜。でも、それってモデルとしてどうなの?」
パンフ一つで話が盛り上がる女子。
雑談は絶える事無く続く……。
この時、あたし達は想像もしていなかった。
もうすぐ、起こるありえない出来事を。




