チャリンコ☆クリスマス4
「嘘だぁ…。」
誰か、嘘だと言ってよ…。ちょっとこの電車古いな~とか、窓から見える景色がみどり一色だなぁ~とは思っていたけど…。どんだけ田舎なの!ココは!
「絶対、嘘だよぉ…。」
帰れないなんて…。あたしどうなっちゃうの??イケメンの家に泊まるなんて…無理!!あぁぁ。どうすればいいの??
「おい。お前。」
「…なぁに?」
どうせまた冗談で、あたしをからかうつもりなんでしょ!あぁ。窓から見える景色が憎い…。
「おい!」
「…。」
今は、イケメンの相手をする気分じゃない…。クリスマスなのに、こんな知らない土地で。これから、どうなるのー??あたしはうつむいたまま、試行錯誤。いい考えなんて、少しも浮かばない。
『ポン。』
前頭部に違和感。うつむいたまま、視線を上げる。
「!!」
イケメンの手が、あたしの頭にのせられている。も、もしかして頭を撫でるつもり…!?なんで??いや。もしかしたら、これから嫌がらせでもするんじゃ…。
「…心配するな。俺がどうにかしてやるから。」
なぐさめてくれてる?あの、イケメンが?嘘。ヤダ。なんか…恥ずかしいじゃない!!イケメンの手だって、まだあたしの頭の上にのせられたままなのよ!
「なっ…。」
意識…してないケド。動揺しちゃって。イケメンの顔どころか、顔を上げることもできない。だって、きっと。今。あたし。顔が熱くて…。顔が赤くなってるかもしれない。
「ちゃんと、帰れるようにしてやるから。」
イケメンはそう言うと、やっとあたしの頭を解放してくれた。イケメンの手がのせられていた頭。解放された今でもどの部分だったかが、わかる…気がする。あたしより、少しだけ温度の違う肌。頭を触られるのも、悪くないかもしれない。嫌いじゃないかもしれない…。
「…うん…。」
結局、あたしは顔を上げることができなかった。よくわからない恥ずかしさでいっぱいで、イケメンの顔を見ることも話をすることも出来なかった。返事をする事だけで、せいいっぱいだった。
******
電車は次の駅に到着し、あたしはイケメンの後をついて電車を降りた。
「寒っ。」
駅は静かで、澄んだ空気が寒さをより引き立てていた。ホームにはあたし達2人以外誰もいない。もしかして…。
「ここ無人駅だから。」
前を歩くイケメンがそう言った。こっちを見なくても、あたしがキョロキョロしているのがわかったのかしら??
「こっち。」
イケメンの後をついて行く。駅舎は木造で、改札口はそこだけとってつけてようなステンレスが光っていた。静かで、寂しい…駅。駅前にありがちな、風景がここにはない。タクシーの列も、お店も、帰宅を急ぐ人達もいない。
「本当に田舎なんだね。」
「…うるせえ。」
イケメンはそう言うと、駅の隅に行き自転車に乗って戻ってきた。
「後ろに乗れば?ここから一番近いバス停まで送って行ってやるよ。それが嫌なら、ここで朝まで電車待ってろ。」
バス停??
「ねえ。それで帰れるの??」
「あっちに高速道路が見えるだろ?あそこでバスに乗れば、お前は帰れるらしい。」
「らしい?なんでわかるの?家知らないでしょ?」
イケメンが、ポケットから携帯を取り出した。
「メール。柴田がお前の事、心配してるんだよ。幼馴染なんだろ?」
「…家が近いだけだもん。別にそんな…。」
「まぁいいから。乗れ。」
自転車に、2人乗り。
「ねぇ。この自転車…。後ろに座る所ないんだけど。」
「当たり前だろ。2人乗りはダメなんだぞ。」
「じゃあ、あたしどうすれば?」
「そこ。そこに立つ所があるだろ?そこに立って、手は俺の肩にでも置いとけ。」
立つ所って…。これ後輪の…。えぇ!これって、ずっと立ったまま?しかもイケメンに嫌でもくっついていないと、バランス取れない…。
「早く乗れ!バスに乗り遅れたら、今度こそ野宿だぞ。」
「えぇ!泊めてくれるんじゃ…。」
「そんな事したら、俺が親父に殺される。」
イケメンの肩に手を置き、後輪の金具の上に足を乗せる。なるべく、イケメンにくっつかないように…。
「行くぞ!」
「キャー!!」
自転車は思ったよりも、早かった。視界がいつもより高くて、怖かった。
「お前、しっかりつかまっていろよ!」
「ひ、ひぃー!」
風が顔に向かってきて、冷たくてたまらない。
「もっとしっかりつかまってないと、もたないぞ!」
イケメンがあたしの左手をひっぱる、あたしはバランスを崩して彼の首にしがみつく。
「そのくらい、しっかりつまかってろよ!」
右の耳に、風の音が聞こえる。左の耳は…。熱くてたまらない。左の耳が、彼の肌に触れている。柔らかくて、熱い、感触。
ここが、田舎でよかった。
今のあたしを、誰にも見られたくない。もう、恥ずかしくて死にそうだ。2人乗りの自転車、不安定なバランス。誰もいない、田舎の道。そっと目を閉じてみると、体が揺れているのがわかる。ユラユラ、揺れる自転車。こんなに不安定なのに、あたしは大丈夫。あいつが…あいつがバランスを取ってくれているから。誰かに身を任せるなんて、初めて。誰かにこんなに頼りっきりになるなんて…。なんて楽なんだろう。
「リョウ。」
聞こえないくらいの声で呼んでみた。なんだか…わからないけど…切ない気分。すごく寒いはずなのに、なんだかあったかい。彼の背中に触れていると、不思議な気分だ。リョウがすごく、大人の男の人みたいだ。
「リョウ。ゴメンネ、重いでしょ?」
「ん~?お前、小柄だし気にするほどねーよ。そんなことより…。」
「なあに?」
「多分、1時間はかからないと思うけど…。」
1時間?何の話??
「ここから30分以上はかかるから。バス停まで。」
「はあ??」
嘘でしょ。
嘘でしょう??
あと30分以上も、こんな恋人みたいな状態でいなきゃいけないの??
「嘘でしょ?嘘でしょ?嘘だーーー!!!」
「…お前乗ってるだけなんだから、文句言うなよ。」
イケメンは真っ直ぐ前を見たまま、ずっとペダルをこいでいる。
「…ゴメンナサイ。」
「気にするなって。こっちも気にならないから。」
気にならない?何が?
「お前、ぜんぜん胸ないだろ。女を感じないから、運転に集中できる。」
胸?それって背中に当たらないって事?
「バカー!!リョウのエローース!!」
最低、最悪野郎!!
さっきのあたしのセンチメンタル。…返しやがれ!!
まだまだ、続きます。
登場人物が多いので、出てきて欲しいキャラクターなど要望があったら感想に書いて下さい。
先のストーリーはまだ決まっていないので、参考にさせて頂きます。
よろしくお願いします。




