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オトナの思惑コドモの憂鬱5

「あ…。雪。」


いつの間にか、窓の外には小さな雪が降っていた。

触れるとすぐに解けてしまう、積もらない雪。

小さくて、儚い。


しばらく、2人で窓の外を眺めていた。景色を見るでもなく。きっとお互い、頭の中は違うことを考えていたんだろう。


「…あたしは、ウララが羨ましい。」


自由で、余裕で、少し大人。あたしとは全く正反対だ。


「昔のあたしはね、恋愛どころじゃなかったんだ。なんか、いっぱい我慢しなきゃいけない事があってね。今みたいに、明るくしゃべったりする事なかったんだ。柴田だって、幼馴染とか言っちゃってるけど、その頃はあたしの傍にはいなかったし。」


ひとりぼっちだった、あたし。


「うそ…。そんなふうに、見えないのに…。」


ウララが意外だと言う様な顔でこっちを見ている。あたしは気まずいから、ずっと窓の外の雪に集中していた。この話をするのは苦手だから。うっかり、泣いてしまうのは嫌だから。


「よく、あるじゃない。高校デビューっていうかさ。だからあたしなるべく知ってる人のいない高校に来たの。そこで、マナと友達になって…。」


明るいマナ。入学当時、彼女はなぜかあたしに近づいてきた。理由はマナらしく、恋愛絡み。いきなり、『マナの好きな先輩は、木村さんの好きな先輩の友達なの。』なんて話しかけてきた。マナはびっくりしたあたしに『だから、あたし達仲良くなれると思うの。今日から一緒に帰ろうね。ゆいって呼んでいい??』なんて、勝手に決めてしまったんだ。強引だったけど。確かにその日の帰り、立ち寄ったファストフード店であたし達はずっと仲良しの友達みたいに大笑いして話をした。久しぶりに笑った。マナはあたしの恩人だ。お互いその後、失恋してしまったけど…。


「マナのおかげなの。なんて…。あたしの話はいいの。どうでも。あたしが言いたいのは…。」


ウララの悩みは…ないものねだりだ。


「ウララはあたしがくら~い中学校生活を送っている時に、彼氏がいて…。なんだかピンク色の生活を送っていたのよ!大人はズルイって…そうかもしれないけど…。ウララの彼氏はウララの事が好きなの?ウララは彼氏が好きじゃないの?好きじゃないのに、結婚話って出来るの?好きじゃない人と旅行できるの?」


今度はウララの方を見て話した。あたしは付き合った事がない。だから、正直に言おう。だって、本当に何を悩んでいるのかわからない。


「まだ、結婚したくないならそう言ったらいいじゃん。今まで、大人に合わせてきたんだったら今度は子供に合わせてよって。」


ウララは何も言わない。


「ウララは卒業したらどうするの?進学しないの?何か夢があるんじゃないの?」

「…びよう。美容師の専門学校に行くの。あたし、美容師になりたい。」


ひざを抱えて、下を向いたままウララは呟いた。


「あたし、これ以上…。何も捨てたくない…。」


何も捨てたくない。なんて…。恋愛って、何かを捨てていくものなの?なにか与えたり、与えられるものかと思っていたのに…。今のウララは、いつものウララじゃなくって…。余裕もなにもなくて。わがまま言って、ゴネている子供だ。


「ねぇ。ウララ。彼氏の事キライ?」

「…そうじゃない。」


だから、悩んでいるんだろうなぁ。


「あたし、思うんだけど。ウララ。そんなのキャラじゃない。」

「えっ。」


キャラじゃない。ウララはそんなんじゃない。


「捨てなきゃいいじゃん。ぜ~んぶ。欲しいものは全部手にいれちゃえばいいじゃん。」

「…。」

「結婚したいなら、したらいいし。結婚したって、専門学校にはいけるんだよ!わからないなら、1年だって2年だって保留にしちゃえばいいじゃん。あたし達。まだ若いんだよ。高校卒業したら、浪人する人だっているんだから。ウララは、欲しいものだけ選べばいいじゃん。」


わがまま、かもしれない。でも、責任とか考えるのはもうちょっと先でも…いいんじゃない?だって、体調壊すくらい悩むなんて…。そんなの良くない!


「むちゃくちゃね…。委員長。」


ウララは、まだうつむいたまま。

窓の外には、小さな雪。風が弱いのか、静かに、まっすぐ落ちていく。


カチャリ。


窓を開けて、手を伸ばす。手のひら上に向けると、小さな雪がそっと落ちてくる。まっすぐに落ちてきて、触れると消える。まるで、あたしの手のひらに与えられたような雪。


すっと横から手が出て来た。ウララがあたしの真似をして、手のひらを上に向けた。与えられる雪を待つ、二人。


「ねぇ、ウララ。本当にキスしても、何も感じないの?馴れちゃうと、そうなるの?」

「…。確かめてみれば。リョウ君で。彼は色々ベテランなんじゃないの?」

「絶対ヤダ。」


ゆっくり雪が落ちてくる。雪に触れた手のひらより、指先の方が寒くて痛い。


「嘘よ。」

「なにが?」


ウララはこっちを見て笑った。例のスマイルというより、ちょっと含んだ悪い笑顔。


「馴れちゃうと言うより、上手くなるのよ。ずっと…。」

「いやー!!」


なんだか、下ネタになりそうなウララの話。あたしは急に恥ずかしくなってしまった。

伸ばしていた手を引っ込めて、窓に背を向けた。


「あ!!」


教室の中に、侵入者。いつの間に…。ツリーの向こうに人影が…。


「よう!」


噂をすれば…イケメン。悪い顔のウララ。


「委員長。ちょうどいいじゃない。リョウ君にお願いしたら??」


プイっと顔を背ける。きっと、今のあたし顔が…熱い。


「もう!知らない!!」


イケメンは悪くないけど、タイミングが悪い。

あたしは、とりあえずイケメンから一番離れた所に座った。


「どうしたんだよ~?」


まるで、鬼ごっこ。イケメンが近寄るたびに、離れるあたし。

ウララがポツリと呟いた。


「あたし、委員長がうらやましいわ~。」

「何それ!」


その後。

あたしがウララにタッチしたのをきっかけに、本気で鬼ごっこを始めた。

みんなが帰ってくると、やめるどころかヒートアップ。暖房の効いた部屋の窓を開けて、鬼ごっこ。途中で3回ツリーを倒しちゃったけど、なんだかバカみたいに楽しかった。


あたし達はやっぱり、まだ子供なのかしら??終わらない鬼ごっこをしながら、そんな事を思っていた。


まだまだ、続きます。

登場人物が多いので、出てきて欲しいキャラクターなど要望があったら感想に書いて下さい。

先のストーリーはまだ決まっていないので、参考にさせて頂きます。

よろしくお願いします。

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