オトナの思惑コドモの憂鬱2
足が重い…。
先生に脅迫まがいの相談され、あたしは疲れきってしまった。
「しゃべったら合格取り消しって…。」
普通に考えたらありえないけど。
あいつはやる。
きっとやる。
誰か偉い人を誘惑してでも、やる。
「怒らせると、超コワそうだもん。」
ああいう人は敵にまわすと恐ろしい…。
「はぁ…。」
階段の手すりをしっかり握る。
そうでもしないと、上れない…。
『浦沢の彼氏』
どんな人なんだろう。
車に乗っているから、年上なんだろうけど。
『浦沢の悩み事』
そんなの、あたしがどうにかできるわけないじゃん…。
「あああ~。もう。無理…。」
「お前は、ババァか!」
「ん?」
上から声がする。
「階段のぼるくらいに、どんだけ時間かかってるんだよ!」
見上げると、イケメン。
どうも、階段とか廊下にいるとイケメンが出てくるような気がする…。
何をしているんだか?
「うるさ~い!のんきなイケメンと違って、あたしは悩みが多いのよ…。」
「お前。名前で呼べって言ってるだろ。イケメンとか言うな。カッコイイのはしょうがないだろ。」
自分で言うな。
でも、悔しい事にイケメンは下から見てもやっぱりカッコイイ。
あたしの下を向いた顔なんて、鏡で見たらびっくりするほどヤバかったのに。
コイツにブサイクな瞬間は、ないのか??
「違います~。あたしの言ってるイケメンは、いちいちケンカを売ってくる、面倒臭い男の事です!それを略したイケメンです。」
「…お前も、結構面倒くさいぞ。小学生の女子か?」
なんて失礼な!
文句を言うべく、階段を駆け上る。
「あたしは、ババァでも小学生でもありません!」
「はいはい。」
「もう!先に行くからね!」
イケメンに背を向けて歩き出す。
「おい。」
「な、何?」
腕を掴まれた。
「俺の事は、リョウって呼べって言ってるだろ。」
そう言われれば前もそんな事を…言われたような?
「何で?」
「お前、イケメンとか恥ずかしげもなく言うし。それに、他の奴みたいに苗字で呼びそうだから…。」
それが、何か?イケメンは確か、苗字が佐伯。
「何で?苗字ダメなの?」
「お前が呼ぶと、絶対間違うから。」
「はぁ?」
「さえきくん。さえきくんって呼んでるうちに、おかしくなってさいきくんになりそうじゃん。」
佐伯、さえき、さえき、さいき…。
「う~ん?なるかぁ~??」
なりそうな気もするけど…。
「とにかく、そう呼べ。次にイケメンって言ったら、お前の恥ずかしい写真をバラまくぞ。」
「ちょっと。何それ?憶えないんだけど??」
イケメンがニヤッと笑い、ポケットから何か取り出した。
「携帯じゃん。」
イケメンの携帯。
「ほれ。」
そこに写っていたのは…。
「イヤー!!」
見るのも恐ろしい…。
山崎くん説得大作戦の時の…。
中途半端なコスプレ!!
「もう!イケ。違う。リョウの大バカやろー!!」
あたしは、その場から走って逃げた。
どうせ、行き先は同じなんだけど…。
教室まで走って逃げる。
あんな写真。
見ている方が恥ずかしくてたまらない。
教室につくと、何だかおかしな事になっていた。
さっきと同じで、何かが違う。
「ん??」
これは、間違い探しですか?
「!!」
それとも…。
「あのさぁ。何してるの?ペコ。」
「んん~?何が~?」
今日も愛らしいお顔のペコさん。
でも、さっきと違いますよねぇ。
「これは、誰の?まさか、山崎君。」
山崎くんの方を見ると、思いっきり目をそらされた。
事情を知っている、イッキはこっそり笑っている…。
「どうしたの?ゆい。あ~これ?山崎君の。かわいいよね~。ペコ超、似合ってるし♪」
ああ、そう。やっぱり。
山崎君にやんわりお断りされたネコミミ。
本当は、自分で持っているくらい好きだったのね…。
でも、なんでペコはつけるのOKしたんだろ??
あ。
山崎君。家が歯医者。
「もしかして山崎君。歯大に行くの??」
「はい。僕の家、代々開業医なんで。」
やっぱり。
こっそりペコに耳打ちする。
「腹黒いネコちゃんだねぇ。」
ペコはクスっと笑って、
「にゃーあ。」
って返事をした。
今日は金曜日。
今週は色々あって疲れちゃった。
もう、何もしないで今日はこのままダラダラしていようかなぁ…。
ふとカレンダーに目をやる。
あれ?
学校って何日までだっけ?
来週はクリスマスが…。
「ねぇ!もしかして、すぐ冬休みになっちゃうの??」
忘れてた…。
こんなんじゃ、すぐに卒業だ!!
「クリスマス!!ねぇ、クリスマスの計画立てようよ!」
残されたイベントはわずかだ。
「クリスマスパーティをしましょう!!」
教室がざわめく。
クリスマス!これこそ、思い出作りにぴったり!!
「なんだ、その小学生のお楽しみ会みたいなノリは・・・。」
後からやって来たイケメンが、面倒くさそうに言った。
「ま。小学生レベルの委員長じゃしょうがないか。」
「何??」
「しょうがないから付き合ってやるよ。俺がサンタでもやろうか?その時はお前が、トナカイだけど。」
「もー!!」
本当に、本当にイケメンは…嫌なヤツ!!
まだまだ続きます。
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