白い歯と黒い腹3
恋愛禁止。
それが、このクラスの決まり事。
だったけど…。
「木村さん。アレ。」
イッキの指差す先には…。
どんよ~り暗いオーラ。
あ、リーゼント。
彼は今、本人に知られないまま失恋しちゃったんだろ~な~??
カワイソウだけど…今回は相手が悪かったってことで。
そういえば、イッキは知らないんだったっけ?
小声で、イッキにこれまでの話をする。
「あら~。」
イッキは目をまんまるにして、気の毒そうにしていた。
「ねぇ。イッキはもう大丈夫なの?男子と一緒で。」
イッキは男嫌いだったんじゃ…。
「全然平気。だって、ここには意地悪な男子はいないから。」
「…良い男もいないけどね~。」
「ははっ。」
2人で笑った。
楽しくなってきた、あたし達のクラス。
でも、あたしには気になる事がある…。
冷たい…彼の笑い顔。
「ねぇ。ウララの荷物、あたしが保健室に届けてくるよ。帰る時、ここまで来るのかわいそうだし…。で…。中野君。手伝ってくれない?一緒に保健室に行かない??」
あたしと中野君。
みんなが不思議そうな顔をしていた。
マナはこっそりガンバレってポーズをしてくれたけど、そういうんじゃない。
中野君と話がしたかった。
ウララの荷物を持って、強引に中野君を連れ出した。
「お前ひとりで持てるんじゃねーの?」
柴田がそういうけど、この際聞こえないフリをした。
教室を出て、中野くんの腕を掴む。
ここから少し離れよう。
みんなには、知られたくないから。
「中野くん。ちょっとだけ付き合ってくれない?」
2人で話せる場所。
階段を上る。
ここの屋上は立ち入り禁止。
だからこっちの階段を上る人はいない。
屋上へ続く階段。
中野君と、そこに腰掛けた。
中野君はさっきから、相槌だけで何も話さない。
最初から、今日までずっとそうだ。
「あ、あのさぁ。なんか話しにくいっていうか、聞き難い事聞いてもいいかなぁ?」
頷く、中野君。
「違ってたら、ゴメンナサイなんだけど…。」
相槌。
「さっきウララが倒れた時にね…。」
表情も変わらない。
「もしかして、笑ったりした?」
相槌。
「?」
うんって言った?今?
「えっ。中野君はウララが倒れた時、笑ったの?」
「うん…。」
そう言って深く俯いた。
「…何で?」
中野君は顔をあげない。
「わからない。」
「わからないって言われても…。」
こっちがわからなくなる…。
あいかわらず、中野君は静かな顔で小声。
酷い事を言われたら、どうしようって思ってた。
でも、中野君は静かで悪意も感じない。
困った。
会話が続かない。
理由も聞き出せない。
何か、何か話さないと逃げられる…。
「…中野君はどういう人が好き?」
「えっ?」
しまった。質問が唐突過ぎた??
「えっと…。いや~。あっ。さ、さっきさぁ。ペコが歯医者が良いとか言うから。なんとな~く、中野君はどうかな~みたいな。」
「…。」
やばい。答えてくれなくなった。
「いや。あの。ちょっと変な質問だったよね!ていうか、恋愛禁止だったしねぇ。」
「…。」
「あのね。中野君…。」
どうしよう、どうしよう。
もう、最悪だぁ~。
「…僕が何故笑ったか。」
中野君は階段から立ち上がりながら、そう言った。
「実は僕にもわからないんですよ。本当に。」
上から声が降ってくる。中野君はこちらを見下ろしている。
「感情を抑えているうちに。体がどうすればいいのか、忘れてしまったのかもしれない。」
「抑えているって、どうして?」
中野君が急にしゃべり始めた。
「家庭環境でしょうかね。で、どうするんですか?」
「…何が?」
「人の不幸を笑うような男、気味が悪いでしょ。あのクラスから、出て行きましょうか?」
気味の悪い男…。
そうだろうか?
あたしは騙されているのだろうか?
「あのね。待っている間、ウララの事心配だった??」
貧血とは言っても、あの時のウララはとっても具合が悪そうだった。
体が、感情の表現を間違えていたとしても心は…。
「そう…ですね。彼女はすごく顔色が悪かったし。」
「大丈夫って聞いた時、ほっとした?」
中野君は、立ち上がったまま動かない。
考えているのだろうか…。
「木村さん。僕は、ほっとはしませんでした。」
「…どうして?」
「貧血だけで、あんなふうに倒れるでしょうか?」
「え?」
「僕は、まだほっとしていません。木村さんに言われて気付きました。」
それって…。
「木村さん。保健室に行きましょうか。顔を見るまで、安心できませんよ。」
「うん。」
荷物は、中野君が持ってくれた。
顔は、あいかわらず無表情だったけど。
階段を下り、保健室を目指す。
「ねぇ。中野君。共学クラスにいてくれる?」
中野君は、少し上を向いた。
「そうですね。あのクラスは、感情の起伏が激しいですから。」
「それってどういう…。」
「リハビリですよ。」
そう言って、また歩き出した。
無表情で、小声のまま。
中野君。
あたしには中野君が、どういう人なのかはわからない。
でも、悪い人には思えない。
あと少しの共学クラス。
こういうキャラがいたっていいじゃない?
「木村さん。僕。声が小さいでしょ?実は耳がいいんです。」
「ん??」
「残念ながら、木村さんは僕のタイプではありません。」
「!!」
嘘。うっそー!!
何それ!ってあたし別に好きとか言ってないし。思ってもないし。
「えぇ!!」
思わず、頭を抱える。
何それ。
なにそれーーー!!!
「僕は、マナさんみたいなわかりやすい人がタイプです。」
「わかりやすい??」
「はい。色々。」
「性格の事?」
中野君はあたしの方を見て、少し視線を下げた。
「胸とか。」
「!!!!」
あぁ。もう。嫌だ…。
こんなクラス…。
やっぱ。恋愛は断固禁止にしよう…。




