戦う委員長と6人の…6
ターゲット発見。
すかさず、後ろから回り込む。
「うわぁ!!」
驚く、山崎君。
そう。驚くわよね。
でも、それじゃ済まないのよ…。
「山崎君!あたしに協力しなさい!あたし、あなたを迎えにきたのよ!」
ビシッと腕を伸ばし、山崎君の顔の前に人差し指を突きつけた。
こんな感じかしら??
イッキの方をチラっと伺うと、人差し指と親指で丸を作り何度も頷いている。
「あなたの為に、こんな格好までしてきたのよ!」
そう。
こんな格好…。
あたしは今、某人気キャラのコスプレ中だ。
といっても、髪型だけ。リボンをつけただけだ。
有名らしいけど、あたしは知らなかったから全てイッキの受け売りだ。
命令口調で強気で行け!って。
山崎くんは床に座り込んで、目をどこまでも見開いていた。
口はポカンとあけたままで、微動だにしなかった。
あたしは座り込んだままの山崎君に、右手を差し出した。
「ゴメンネ。急に。びっくりさせちゃったよね…。あたし。アニメの事、本当はよく知らないのよ。でもね、共学クラスのメンバー。ホラ、そこに。その娘に教えてもらったの。あたし、何もできないけど…。せっかく集められたから、みんなと仲良くしたくて…。」
山崎君は、まだ動かない。
あたしの手も取ってくれない。
「友達になりたいのよ…。アニメみたいにみんなが仲良しの…。そんなクラス、本当にあったらスゴイじゃない??あたしだって、見た目は良くないわ。スタイルも良くないし、ニキビだってよくできちゃうし…。」
そっと、山崎くんの手を取った。
イケメンがやったように、両手で山崎君の手を包んだ。
「ネコ耳くらいなら、たまには付けてあげてもいいわよ!でも、恋愛禁止だからね!」
「ね、ネコ耳なんて…。あなたのキャラにはちょっと…。」
違うのか…??
山崎君、それ失礼じゃないかい??
「で、でも…。僕、何もできないし…。」
「誰も何も、そんなにできないわよ!コンプレックスなら、きっとみんな山ほど抱えてるわよ。…このまま終わりたくないじゃない…。キャラとか言うなら、山崎君。青春アニメには冴えない男子は必須だと思うわよ!」
あたしの言ってることはめちゃくちゃだ。
でも、仲間はずれはキライなんだ。
「そ、そんな事言われたら…。」
「断らないで。お願い。」
山崎君は、すごく動揺していたのか汗をかいていた。
「わ、わかったよ。だから…。もう少し離れてくれないか?」
「言ったわね!明日から来るのよ、約束。」
「…そのかわり、部屋の隅で本を読んでてもいい?その方が落ち着く。僕はあまりしゃべらないけど…それでいい?」
「わかった。無理はしなくていいから、来るだけ来て。」
任務完了。
気が付けば、本棚の影から視線が…。
カシャッ。
写メ?
「ゴメン。記念に一枚欲しくて…。」
山崎君。今日だけだからね。こんなの。
「じゃあ、またあした!」
山崎君に別れを告げて、歩き出す。
エスカレーターが4階につく前に、頭のリボンをのけて。
イッキが思い出したように笑う。
「木村さん。人が変わったかと思っちゃった。」
あたしもなんだか可笑しかった。
2人で大きな声で笑う。
変な一日。
あたし、多分やりすぎているよね。
ま、いっか。
残りは3人。
「ねぇ。なんだかお腹空いちゃった。みんなも呼んで、あそこで食べて行こうよ。」
指差す先はいつものファストフード。
高校生の憩いの場。
マナに電話。
「どこ行ってたのー!せっかく、ウララに電話して来てもらったのに。柴田君も、ゆいの事待ってるんだよ。」
ゴメンゴメン。
あたしはマナに謝って、みんなを呼び出した。
マナにペコにウララにイッキ。
リーゼントに柴田。
ファストフードの店内。
動く机を繋げて、7人で話す。
恥ずかしがりやだったイッキも、あたしの武勇伝?を話す時はテンション高かった。
他のお客から見ると、うるさい集団だっただろうけど。
残り1人。
やればできるかも、あたし。
「明日はさぁ。山崎捕まえて、写メ送ってもらおうぜ。」
柴田が、含んだようなニヤケ顔で言う。
「なんで…?」
まさか…。
「その写真。俺たちの待ち受けにしよ~ぜ~!」
「!!」
やめてくれぇ。
「しーばーたー!!」
明日の目標が増えました。
再び山崎君を捕まえて、消去させていただきます。
絶対に!!