戦う委員長と6人の…2
「申し訳ない。」
深く頭を下げたリーゼント。
せっかくやる気を出したのに!
リーゼントは山崎君の居場所どころか、携帯番号すら知らなかった。
ただ、テーブルに届きそうで届かないリーゼントの先端がもどかしい。
なんて、こんな事考えている暇なんかない。
あたし達には時間がないのだから。
「いいんちょ~。イッキは?まだココ、来た事ないよ」
褐色の細長いモノを口にくわえたまま、ペコが言う。
そんなにいつも食べてて、あごは疲れないのか?
「じゃあ……イッキを探して、連れてくる!」
みんなに手を振って、飛び出すように教室を出た。
きっと、イッキは美術部の教室にいるはずだ。
美術部の教室は、茶道教室の下の階。
少人数で、静かな部。
「待ってなさいよ~。イッキ。」
早足で廊下を渡り、誰もいない階段を走りぬける。
パタパタと、あたしの足音だけが響く。
……イッキは来ているだろうか?
でも、きっといると思う。
だってイッキもあたしと同じ、真面目な匂いがするから。
「おい!お前!」
「ん?」
後ろから声を掛けられた。
男の声…・・・。
「あ、イケメン。じゃなかった。」
名前・・・…。なんだっけ??
突然現れたイケメンに驚いて、イケメンなんて呼んじゃった……。
「お前……。それはどういう意味だ。人違いなのか、イケメンを否定しているのかどっちだよ」
それは……。
イケメンだと思うけど、イケメンだと認めたくないし……。
イケメンと呼ぶつもりじゃなかった……みたいな……。
あぁ面倒臭い。
「印象薄くて名前忘れちゃって……。」
イケメンの顔が歪む。
「お前は俺をバカにしてるのか?俺にあんな事まで言わせておいて、印象薄いって……。」
あ、怒ってる。
イケメンの印象は濃かったけど、そのせいで名前の印象が薄かったんだけど・・・…。
まぁいいや。……じゃなかった。彼にも話をしないといけなかったんだ。
「あのね。あたし思うんだけど……。」
イケメンに、これまでの経緯を話す。
彼はずっと顔を歪めたままだった。
相槌を打つでもなく、腕を組んだままじっと聞いている。
彼はイケメンだし、きっと人気者。わざわざ、あたし達と仲良くするメリットなんかないよね……。
これは、説得できないかも……。
「あたし達ずっと女子だけだったから……居心地は良くて、なんか平和な毎日だったんだけど……。一生懸命にやった事ってなかったから。こんな事でも、一生懸命やれば……。なんかわかんないけど、見つかるかもしれないって思って。制服脱いだら、もうこんなにはしゃいでいられないと思うの……。」
所かまわず、どこでもはしゃぐ。
それって高校生だったからアリだったんだと思う。
大学生になったらすぐ大人になっちゃうし……。
イケメンはどう思ったかなぁ……。
「……5時までだぞ。」
ボソッとイケメンが呟いた。
5時まで……ってどういう事??
「俺はお前達と違って色々あるからな。夕方の5時までしか付き合えねーぞ。」
それって……。
「いいの??」
思わず大きな声でイケメンに尋ねた。
「だって、お前。全員でやりてーんだろ。」
予想外の答えにうれしくって、ウンウンって何度も頷く。
「けど、忘れるなよ。俺はお前に勝つ。わかるか?お前が俺の事を好きになったら、お前の負け。昨日の発言、忘れたとは言わせねー。」
昨日の……。
すっかり忘れてた。
やっぱイケメン、あたしの中で影薄いのかなぁ……。
「お、憶えているわよ……。大丈夫よ。あ、でも。恋愛禁止だからね。」
「なんだよ、それ。面倒くせー。まあ、いいや。委員長さん、ところでどこ行ってんの?教室は上だろ?」
あ。
そうそう。
イケメンよりイッキよ!
「昨日来なかったメンバーを迎えに行くのよ!多分、美術部の教室にいるハズだから。イケメンは、先に上の教室に行ってて!」
じゃあね。って歩き出した。
「おい!俺はイケメンじゃねぇ。」
イケメンがあたしの背中に向かって、話しかける。
「知ってるよ~。」
バイバイって後ろ姿のまま手を振る。
「リョウ。お前リョウって呼べよ!俺の事。」
イケメンがまだしゃべっていた。
あたしはイッキのところに急いで行きたいのに。
「はいはい。リョウね。リョー、バイバイ。」
それだけ答えて、美術部に急いだ。
これで、5人揃った。残りは5人だ。がんばれ、あたし。