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戦う委員長と6人の…1

共学生活二日目。

千葉ちゃんへの報告に向かった、あたしの足取りは重かった。


「あたし……。自信がありません」


昨日はがんばろうって思った。

でも、何をがんばればいいかわからない。

うつむいたまま、千葉ちゃんとはなすのがやっとだった。


「木村。そんな事はないぞ。お前だから任せたんだ」


あたしの目を見ながら、熱心に話す千葉ちゃん。


「そんな……。自信ないです、あたし」

「お前もっと軽く考えていいんだぞ。活動の報告だって、毎日しなくてもいいから。お前達は自由登校だろ?先生の顔色を伺うことはないぞ。自分達のやりたいようにやりなさい。」


肩を落としたままのあたし。

先生はどうしてこんなに、あたしを励ますのだろう。

あたしはただ、地味で真面目にやってるだけ。

自由、自由って……そっちの方が難しいよ。


ふと、昨日の先生の事を思い出した。

強引だけど、説得力のある言葉。


『主人公になって頑張りなさい。』

主人公??

こういう時、主人公ならどうする??


「わかりました。」


あたしの一言に驚いたのか、千葉ちゃんは目を見開いた。


「自由でいいんですよね。だったら、仲良しクラブみたいなノリでもいいんですか?」

「ん?」

「悪い事はしませんが、為になる事もできませんよ。」

「あ、ああ。それでもいいぞ……」

「わかりました。では、失礼します。」


千葉ちゃんに一礼して職員室を後にする。

為にならなくてもいい。

仲良しクラブでいい。

それなら、気負わなくていい。


あたしは、茶道教室に向かって歩き出した。


「……これでよかったのか?でも、本当の目的なんて知ってても言える訳ないだろ……。」


あたしの後姿を見つめながら、千葉ちゃんが呟いた。

この時のあたしには何も聞こえていなかったし、それが何の事かなんて知らなかった……。


*********************


「さぁて。何から始めようかしら…。」


すっかり、主人公気取りのあたし。

期待をこめて、教室のドアを開けた。

なのに……中にはただひとり、リーゼントだけが正座して待っていた。


「おはよ~。」

「お、おはよう。」


沈黙。


「きょうは……。」


話し始めて気が付いた。

彼の名前なんだっけ?

リーゼントとしか、記憶してない……。


「何ですか?」


いや、だからリーゼント君。

きみの名前忘れちゃったなんて、失礼かしら??


「あのね、リーゼン……」


言いかけて、口を手で覆った。やっぱ、リーゼントなんて呼んじゃ……やばいよ、ね。


「え?後藤ですけど。リーゼントって言いました?」


あ、そうそう。思い出した、後藤英二。


「え。いやぁ……。何でもないよ……。後藤くん。今日は他の人来てないの?」


白々しく、教室を見渡す。何度見ても、結果は同じなんだけど。


「佐伯はいつも遅いから、まだ来ないと思うっス。残念ながら、あとは誰の事も知りません」


そうだ、柴田。サボったな!

リーゼントはピンと背筋を伸ばし、はきはきとあたしの話に答えていた。

なんて、好青年。親が厳しいって本当かも…。


高音の笑い声と共に、ドアが開いた。

あの声はマナかな?


「ゆ~い。遅れてごめんね~。ペコも連れてきたよ。朝の電車で一緒になったから、そのまま捕獲しちゃった。」

「みゃ~」


ペコがマナに連れられてやってきた。捕獲の言葉が気に入ったのか、ペコは謎の鳴き声をあげていた。

これで、残りは6人。


「ウララは?」


彼女は、遅刻と早退の常連。

でも、このクラスには来てくれそうな気がしていたんだけど。

マナもペコも知らないのか、首を振るだけ。

ウララは相変わらずマイペースってことか。

しょうがない。

今日はこのメンバーで始めようか。


あたしは、軽く座りなおして姿勢を正す。

一応、代表って事で話を始めた。


「今日は、みんなに提案があるの。このクラスの事なんだけど……。せっかくだから、仲良しクラブみたいなものにしない?なんていうか、せっかく出会ったんだし。終わりにするのもったいないじゃない?」


憧れの共学生活。

女子校生活で、何度か思ってたはず。

共学だったらよかったのになって。


「でも、恋愛は禁止。そういう目で見るとダメになると思うから……。昨日、山崎君の話を聞いていてそう思ったの。そういう目で見るから、嫌な思いをする人がいるんだって。いいじゃない。色んなキャラの人がいて。だって、10人の仲良しグループなんてすごくない?絶対、楽しいって」


友達は何人もいても、本当の友達なんてほんの少しだ。

まして、人数多い時はすぐバラバラになってしまう。

10人で仲良しである事は、絶対楽しいはず。


「OK!わかった。マナもゆいに賛成。恋愛は大学まで我慢する。それか、他でみつける!」


手を振るマナ、ペコも笑顔だ。


「ペコもさんせー。女子校も楽しかったけど、退屈だったもん。」


恋愛禁止の仲良しクラブ。

あ、リーゼントに悪かったかしら??

恋愛禁止なんて。


「お、俺も……。」


賛成してくれた、リーゼントに横で呟いた。


「恋愛禁止は卒業までだから。」


後はあなた次第だよって。

リーゼントはあっという間に真っ赤になってしまった。


「いいんちょーに恋でもしちゃったの?」


ひとり気付いていないペコが言った。

何だか可笑しくて、みんなで笑った。


「じゃあ、あたし。他のメンバー説得してくるね。」


全員揃わなきゃ意味がない。

揃わなきゃテンション下がっちゃう。


「後藤くん。山崎くんの行きそうな所教えて。」


キモイとか、もう思いたくない。

きっと話せば、仲良くなれるはずだ。

あたしが最初に、山崎くんの魅力を見つける。


絶対、全員集めてやるんだから!!



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